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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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7

 

 だからこそ、北の国としてはこの代こそ、なんとしても皇貴を迎えたいという思いがあるのかもしれない。

 

(サヴジが優しくしてくれるのは、……だから、なのかな)


 自分が男になっても、女になっても、別に構わないと言ってくれた。

 前例がないわけではない、と。


(──でも、急激な気候変動に備えて、品種改良をしてるって言ったよね)


 それは、北の国の事情を踏まえずに、選べるようにという気遣いなのだろうか。

 だとしても、地脈の流れは様々な面で影響を及ぼす。


(それなら……)


「コトネ、スープが冷めてしまうわ」

「あ……」


 考え始めて、手が止まってしまっていたようだ。

 フェリカに促され、コトネは慌ててスプーンを手に取る。

 けれど、胸の奥に残った思考は、完全には消えなかった。


 

 ***

 


 食事を終えた後、部屋が整えられ、サヴジたちが退出する。

 扉が閉じられると、室内はしんと静まり返った。

 

 つい先ほどまでの賑やかさが、まだどこかに残っているような気がする。

 

 それを懐かしむ気持ちと同時に、ぽつりと取り残されたような感覚があった。

 誰かと食卓を囲むことには、どうしても慣れない。


 それは——ヤコクでの暮らしのせいだった。



 コトネは、交流会を除けば、誰かと食事をともにすることがほとんどない。

 

 皇貴という立場は、ヤコクでも特別なもの。

 王族に迎えられはしたものの、王宮の離れに立てられた一角に一人で住まわされている。

 

 理由はひとつ。

 第三者からの影響を、できる限り遠ざけるため。

 

 どの国を選ぶか、誰を選ぶか、どうあるべきか。

 こういった部分において、誰かの思惑が加われば、それは争いの火種にもなりかねない。

 ゆえに、王宮の奥深い離れに一人隔てられ、交流会でのみ外の世界に触れる。

 

 そうして、時を待つ。


 皇貴とは、地脈を動かすために在る存在。

 これまでの歴史において、例外なくそう扱われてきた。

 

 だからこそ過去の皇貴について、歴史に記録はほとんど残されていない。

 どのような人物だったのかも、詳しく語られることもない。


 何年に生まれ、どの国を選び、何年に没したか──記されているのはそれだけだ。

 

 皇貴は、重要で貴重な存在として、崇められ、大切にされている。

 けれどその中に、“コトネ”という個人は含まれていない。

 

 王族に迎えられ不自由のない暮らしをすることはできるが、元の家族とは二度と会うこともなく、私的な会話をする者もいない。


 ──それが、皇貴というものだった。



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