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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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6


「ねえサヴジ、エリンおなかが空いた。コトネも元気になったし、ちゃんとしたご飯食べさせてあげないと」

「……確かに、もうだいぶいい時間ね」

 

 気が付けば、既に太陽の位置が低い。

 コトネの顔色も朝よりずっと良くなった。

 声や話す調子なども、いつも通りなように思える。


「うん、おなかすいた……かも」

「ほら、ね、サヴジ!」


 得意げに言うエリンの言葉に、やれやれと言った様子のサヴジ。


「このままここで皆と食べるのと、食事の間で皆と食べるの、どっちがいい?」


 どうやら、お渡り中であるにもかかわらず、エリンの中では皆で食事をとることは確定しているらしい。

 一切遠慮する様子のないエリンに、以前なら制したであろうその言葉を、サヴジは否定しなかった。


「このまま……なんて、──いいの?」

「だってまだ完全に元気なわけじゃないでしょ?」

「でも、……」


 今は北の国ルーシアにお渡り中だ。

 だからこそ、サヴジの前でどこまで甘えていいのかと考えてしまう。


 コトネが言いよどむのに気付き、フェリカがちらりとサヴジを見た。

 その視線を受け、


「……そうだな」


 サヴジは短く頷き、侍女に指示を出す。

 すぐに控えていた侍女たちが動き出し、室内の空気がわずかに変わった。


 その様子を見ながら、コトネは不思議な高揚感と安心感を覚える。

 慣れない感覚に少しだけ戸惑いながらも——それが嫌ではないことだけは、はっきりしていた。



 ***



 食事の前に出されたミントが香る茶には、ミルクと蜂蜜が足されていた。

 視線を向けると、サヴジは何事もないように目を逸らす。


(覚えていてくれたんだ)

 

「……おいしい」


 一口、二口と飲み進めるうちに、体の内側から温まるのが感じられる。

 それに伴い、空腹感も増してきた。

 

「そうだったの、毒キノコが……それは大変だったわね。もう落ち着いたの?」

「ああ。管理体制を見直し、新たなルールを徹底した。しかし、いずれはあのキノコ単体で栽培できるよう、品種改良を進めていければと思っている」


 次から次へと並べられる料理から、やわらかな香りが立ちのぼる。

 

「ね、コトネ。このパン食べてみて! すっごくおいしいの!」

「ありがとう……あ、本当だ、いい香り」


 勧められたパンは、ふわりと小麦が香り、香ばしい。

 それぞれの国にもルーシアの小麦は輸出されているが、それでも産地ならではの味わいは格別だ。

 

「そうよね、ルーシアの小麦はとても香りが良いの。今、新しい小麦も開発しているのでしょう?」

「そうだ。交互に植えることで土壌を肥やし、気候変動にも備えられるものを考えている」


 気候変動、の言葉に、一瞬コトネの肩がぴくりと揺れる。

 前の皇貴が南の国サンティエを選んだことで、北の国ルーシアは地脈の流れが変わり、冬が長く続いたのだ。


 

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