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……どれくらいそうしていたのだろうか。
コトネは、扉が閉じたあとも、しばらく動けなかった。
ただぼんやりとどこかを見つめ、未だ熱の残る頭で、繰り返しさっきのことを反芻する。
(額に触れられた感触が、まだ残っている気がする。それから……)
——北の国としても。
その言葉が、胸の奥に小さく引っかかっていた。
***
そして、翌日。
昨夜よりは熱も引き、頭の重さもいくらか軽くなっていた。
それでも、頭の奥に残る鈍さは消えない。
侍女に勧められるまま軽く食事を取り、薬を飲んでベッドに腰を下ろす。
「サヴジは、どうしてる?」
「サヴジ様は、昨夜遅くお戻りになり、今朝早く再び薬草園へと向かわれました」
「そっか……」
「コトネ様におかれましては、しっかりと休養を取られるようにとのことです」
それでは、と侍女が去る。
静かな室内に、時折、外から風の音だけが届いていた。
(……北の国としても)
ふと、昨日の言葉が脳裏をよぎる。
あのときのサヴジの表情も、声も、まだはっきりと思い出せる。
優しさと、何かを押し留めるような気配が、混ざり合っていた。
(あの後、何か言いかけたような気がしたけど、……気のせいだったのかな。サヴジのあんな表情は初めて見たし、それに──)
思考が、次々と重なっていく。
せっかく下がってきた熱がまたぶり返しそうになり、コトネは小さくため息をつき、視線を落とす。
北の国としての立場もあるのだろうが、サヴジは、あの熱を自分のせいだと感じているようだった。
実際のところ、考え過ぎて熱を出すことはよくある。
だが、せいぜい一晩眠れば元通りということがほとんど。
こうも熱が続いたのは初めてだ。
そう思うと、原因のひとつではあるのかもしれない。
ただ、コトネとしては、これ以上サヴジに気に病ませたくはなかった。
──トン、トン。
小さくドアをノックする音が聞こえ、はっと顔を上げる。
「コトネ様。フェリカ様がお見えです」
「フェリカ!?」
「ええ。……入ってもいいかしら?」
もちろん、と答えると、静かにドアが開く。
数日前に離れたばかりだというのに、なんだかもう懐かしいような気がしてしまう。
「フェリカ! 帰ったんじゃなかったの?」
「帰ったわ。でも、国についてすぐ、あなたが倒れたと聞いて」
「あ……」
思わず漏れた声に、遅れて罪悪感が込み上げる。
「ごめん……」
フェリカは優し気な笑みを浮かべ、首を振る。
「謝ることではないわ」
「フェリカ……」
「……でも、心配したのは事実よ」
心配、というフェリカの言葉が、胸に優しく響く。
ただ、そこでふと思い出すことがあった。
「心配、したのは──」




