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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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2

 

 ……どれくらいそうしていたのだろうか。

 コトネは、扉が閉じたあとも、しばらく動けなかった。


 ただぼんやりとどこかを見つめ、未だ熱の残る頭で、繰り返しさっきのことを反芻する。

 

 (額に触れられた感触が、まだ残っている気がする。それから……)


 ——北の国としても。


 その言葉が、胸の奥に小さく引っかかっていた。


 ***


 そして、翌日。

 昨夜よりは熱も引き、頭の重さもいくらか軽くなっていた。

 それでも、頭の奥に残る鈍さは消えない。


 侍女に勧められるまま軽く食事を取り、薬を飲んでベッドに腰を下ろす。


「サヴジは、どうしてる?」

「サヴジ様は、昨夜遅くお戻りになり、今朝早く再び薬草園へと向かわれました」

「そっか……」

「コトネ様におかれましては、しっかりと休養を取られるようにとのことです」


 それでは、と侍女が去る。

 静かな室内に、時折、外から風の音だけが届いていた。


 (……北の国としても)


 ふと、昨日の言葉が脳裏をよぎる。


 あのときのサヴジの表情も、声も、まだはっきりと思い出せる。

 優しさと、何かを押し留めるような気配が、混ざり合っていた。


 (あの後、何か言いかけたような気がしたけど、……気のせいだったのかな。サヴジのあんな表情は初めて見たし、それに──)


 思考が、次々と重なっていく。

 せっかく下がってきた熱がまたぶり返しそうになり、コトネは小さくため息をつき、視線を落とす。


 北の国としての立場もあるのだろうが、サヴジは、あの熱を自分のせいだと感じているようだった。


 実際のところ、考え過ぎて熱を出すことはよくある。

 だが、せいぜい一晩眠れば元通りということがほとんど。

 こうも熱が続いたのは初めてだ。

 そう思うと、原因のひとつではあるのかもしれない。


 ただ、コトネとしては、これ以上サヴジに気に病ませたくはなかった。


 ──トン、トン。


 小さくドアをノックする音が聞こえ、はっと顔を上げる。


「コトネ様。フェリカ様がお見えです」

「フェリカ!?」

「ええ。……入ってもいいかしら?」


 もちろん、と答えると、静かにドアが開く。

 数日前に離れたばかりだというのに、なんだかもう懐かしいような気がしてしまう。


「フェリカ! 帰ったんじゃなかったの?」

「帰ったわ。でも、国についてすぐ、あなたが倒れたと聞いて」

「あ……」


 思わず漏れた声に、遅れて罪悪感が込み上げる。

 

 「ごめん……」


 フェリカは優し気な笑みを浮かべ、首を振る。


「謝ることではないわ」

「フェリカ……」

「……でも、心配したのは事実よ」


 心配、というフェリカの言葉が、胸に優しく響く。

 ただ、そこでふと思い出すことがあった。


「心配、したのは──」

 

 

 

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