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「……何故、そんな顔をする?」
「だって」
屋外薬草園はもちろんのこと、屋内も実に見事に整えられていた。
サヴジが案内してくれたいずれの場所でも、それぞれの植物が見事に茂り、その姿や香りは十分すぎるほど心を満たしてくれたことに間違いはない。
何より、あれだけの規模の庭園の管理は、決して簡単なことではないだろう。
国の重要な産業であるとはいえ、自然相手だ。
地脈の流れによって植物の生育も変わる分、手入れの方法なども一通りではない。
あれほどの知識をごく当然のものとして持っていることに、驚かされもしたのだ。
「毒にもなるから、管理を厳しくしないといけないのは、すごくわかるよ」
「ああ、他にも様々なものがあるからな。もっと厳格に管理方法を見直さなくてはならん」
「でも、ああいうことはこれまでなかったんでしょう?」
「もちろんだ」
それなら、今回のことくらいは──と言いかけたところで、サヴジが真剣なまなざしを向ける。
「だが、──今回は、お前がいた」
心配そうに見つめられ、頬に添えられていた大きな手が、気遣うように額に触れた。
園内で手をつないだ時とは違い、ほんの少しひんやりとしているように感じられるのは、熱のせいだろうか。
「お前が熱を出したと聞いたとき、……肝が冷えた」
「サヴジ……」
「もし、あの毒でお前に何かあったらと思うと、不安でたまらなかった」
(そんな風に、自分の気持ちを聞かせてくれたのは──初めてかもしれない)
これまでも気遣われたことはあるが、基本的にはいわゆる指示が多かった。
”ああしろ””こうしろ”と言い、必要があれば理由を話してくれるものの、サヴジがどう思っているかについては、あまり聞いたことがなかったように思う。
「心配、してくれたんだね」
そう言った途端、サヴジは僅かに視線を伏せる。
それから、小さく息を吐き、手を戻す。
コトネに傾けていた体を、わずかに引いた。
「……北の国としても、看過できる話ではない」
(北の国としても──)
その言葉が、胸の奥に小さく引っかかる。
「そっか、私は皇貴、……だもんね」
その言葉に、一瞬サヴジの目線が上がる。
何か言いおうとしてか口を開きかけたところで、ドアがノックされた。
「何事だ」
「失礼いたします。調査結果が上がって参りました」
その言葉に、サヴジの目に力が戻る。
「すぐに行く」
短く告げてすっと立ち上がると、
「よく休め」
「……うん、ありがとう」
そのままドアへと向かい、静かに部屋を後にする。
扉が閉じる音だけが、やけに大きく響いた。




