第三章:王としての責務
「コトネ」
かけられた声に目を開くと、そこにはサヴジがいた。
起き上がろうとして、体が重いことに気が付く。
「……無理をしなくていい、そのまま横になっていろ」
「サヴジ──」
何があったのかと記憶をさらう内に、少しずつ昨日のことが思い出されてくる。
いつサヴジが戻るかもわからず、一人部屋で様々なことを考えている内に、身体が、頭が重くなってきてしまった。
ほんの少し休もうとソファで目を閉じたはずが、気が付けば深夜で、ベッドに寝かされていた。
(……そうだ、熱が出たんだ)
恐らく、毒に当たってしまったのではないかということで、薬湯を処方され再び眠りについたことを思い出す。
「薬草園のことは、もう大丈夫?」
「ああ」
「サヴジは、いつ戻ってきたの?」
「つい先ほどだ。湯あみを済ませて、それからここへ来た」
心配そうに自分を見つめるサヴジだが、その眼の下には、おそらく昨夜一晩中対処に追われたのだろう、疲れが見える。
「お疲れ様、大変だったね」
「……いや、それより」
不意にサヴジの眉根が下がる。
初めて見る表情に、何事かと目を瞬かせると、
「──悪かった」
「え」
突然の謝罪に驚き、思わず体を起こそう──として、眩暈がする。
ずるりと手が滑ったところを、支えられ、再び横たえられた。
「あそこはすべて、俺が管理をしている。それなのに不手際でお前を苦しめた」
「そんな……途中で中止になったのは残念だけど、楽しかったよ」
「いや、それだけではない。戻って早々、お前は熱を出しただろう?」
サヴジは全園点検と原因究明、対策をしている途中で、コトネが熱を出したと聞かされたらしい。
確かに、状況が状況だ。毒に当てられた可能性も、あるだろう。
(……でも、きっとそれだけじゃない)
「未性別で体が定まっていないお前が、毒にやられたとなれば、──どれほど苦しいものだったか」
心配そうに頬に触れられ、胸が苦しくなる。
「ううん、違うよ。きっと、いろんなことを考え過ぎたから。前にも、こんなふうに考え過ぎて熱が出たことがあるんだ」
「だが、あそこにあのキノコが落ちていたのは事実だ。それがお前の体に影響を及ぼした可能性はある」
「そうだとしても、サヴジが悪いわけじゃない」
頬に添えられたサヴジの手に、自分の手を重ね、とん、とん、と安心させるように指先に力をこめる。
「しかし、俺は薬草園の管理者だ」
「そうだけど、サヴジだけのせいじゃないよ」
「いや、もっとしっかり管理をし、確認をしてからお前を誘うべきだった」
きっぱりと言い切られ、思わず苦笑してしまう。




