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「どうして、今までそんな話をしなかったの?」
「わざわざ言うことではないと思っていたからだな」
「でも──」
大事なことじゃない? そう言いかけて、やめる。
確かに大切なことだが、実際のところコトネからもこういった話をしたことはない。
男であるサヴジを選べば自分は女になり、女であるエリンやフェリカを選べば、男になるものだとばかり思っていた。
それが当然だと思っていたから、わざわざ話すことだとは思わなかったのだ。
「……確かに、そう、……だね」
「だろう? それに、まだお前はこういった話までは、したくないのだろうと思っていたんだ」
「それも、……うん、そうだと思う」
考えなくてはいけないし、決めなくてはいけない。
それは良くわかっているが、交流会を純粋に楽しみたかった。
三人が将来のパートナー候補だということはわかっている。
それでも、親しくなって、友人として向き合う今の関係が好きだったし、そのバランスを崩すのも怖かったのだと思う。
(だから、サヴジにこういうことを言われたら、きっと私は戸惑っただろうな)
婚姻の儀まで残り11カ月。
だからこそ、自分が選ぶべき道や、性別についてもやっと意識が向くようになった。
「気になるのなら、エリンや、フェリカにも聞いてみるといい」
「……うん、そうする」
サヴジは自分に女を望んでいるのだと思っていたように、エリンやフェリカは自分に男を望んでいるのだとばかり思っていた。
でも、そうではないかもしれないと知り、再び考え込んでしまう。
「呼吸は整ったようだな。ならば薬草園を見に行くぞ」
もう立てるか、と差し出された手を、コトネは素直に受け止めた。
***
最初にふたりが向かったのは、色とりどりの花が咲き誇る屋外薬草園だった。
足を踏み入れた瞬間、ふわりと花の香りが広がる。
「わあ……」
見渡す限りの花々は、ただ美しいだけではない。
薬効を持つものや、染料として使われるものなど、この国にとって大切な植物ばかりだという。
「好きなものを摘むといい。ポプリにする」
「ポプリ?」
「枕元に置く。眠りを助けるものだ」
きょとんとしたコトネをじっと見つめると、サヴジはとんとんと軽く自分の目元を叩いて見せる。
「昨日は寝付くまでに少し時間がかかると言っていただろう」
「あ、うん……ありがとう」
「ここと、そこの紫の花は、高ぶった神経を沈めてくれる」
「へえ……あ、すごくいい香り。これ、好き」
「その白い花も、併せると良い。呼吸を深めてくれるからな」
「そうなんだ、じゃあこれも入れよう」
勧められた花に手を伸ばし、摘み取る。
数本ずつ小さなブーケのように束ねれば、その愛らしさに思わず頬がゆるむ。
「本当だ、いい香りだし、もっと嗅ぎたくて深呼吸しちゃうね」
くるりと振り返ると、サヴジがふっと目を細めるのが見えた。




