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乗馬は割と得意だと思っていたコトネだが、ここ最近は婚姻の儀について学ぶことが多くなり、あまり長時間馬に乗ることはなかった。
そのせいか、薬草園につく頃にはすっかり息が上がって汗だくになり、馬から降りるのにもサヴジの手を借り、降りるや否や草むらに座り込んでしまう。
「前はこのくらいの距離、なんともなかったのにな」
「しばらく乗っていなかったんだろう? それなら無理もない」
「でも、サヴジだって忙しくてあまり乗れてないって言ってたじゃない」
少し不貞腐れたように言うコトネ。
王族としての責務も増えたサヴジは、付き従う者も多くなり、移動の際も馬車に乗ることが増えた。
それなら自分と条件は同じではないかとわずかに口を尖らせる。
「それは、まだお前の身体が定まっていないからだろうな」
「──そんなに、変わるかな」
「少なくとも、俺は男だ。男としての立場でしかものを言えんが、子供の頃より体力はついた。力も増した」
コトネに水袋を渡すと、二人が乗ってきた馬にも水をやり、馬装を解くサヴジ。
手伝おうとコトネが立ち上がるが、座って休んでいろと制され、素直に甘える。
「じゃあ、私が男になったら、サヴジと同じくらい強くなれるかな」
「そうだな」
「そうしたら、もっと馬にも乗れるし、自分でもっとお世話もできるよね」
「その通りだ」
一通り馬の世話を済ませたところで、サヴジも水袋からぐいっと水を飲む。
「お前が女になれば、男になるよりは体力も力も落ちるだろう」
「……サヴジを選んだら、私は女になるんだよね」
【皇貴は齢15で婚姻の誓いを交わし、生涯の伴侶と契ることで性別が芽生える】
それは、四国に住む誰もが知っている事実だ。
「俺はお前が男を選ぼうと、女を選ぼうと、どちらでも構わん」
「え!?」
思いもかけない返答に、口に含んだ水を吹き出しそうになり、コトネは反射的にむせてしまう。
そんな様子に苦笑しながら、サヴジはコトネの背中を軽くとん、とん、と叩く。
「前例がないわけではないしな」
言われてみれば、どこかでちらりとそんな話を聞いたことがあった気がする。
だが、子を成し跡継ぎを作ることを考えれば、異性になるのが当たり前だと思っていたし、コトネに教育を施した誰もがそういった方向性で話をしていた。
「お前がお前であれば、それで良い。お前に足りないものは、俺が補う」
その言葉に、胸の奥がわずかに揺れる。
「私、サヴジは──私に女になってほしいんだと思ってた」




