1
「今日は王国直轄の薬草園に行く。お前も来い」
「薬草園……って、王家の人間以外は立ち入り禁止だって言ってたところ?」
「そうだ」
北の国ルーシアは、ハーブをはじめ様々な薬草が有名だ。
たとえば心を和ませる、柔らかい香りの精油が取れる植物。
この種子は、肌を柔らかくし髪に艶を与えるなど、美容に効果的な成分を豊富に含む。
あるいは美しい花が咲き、その花が眠りを深めたり、傷の痛みを癒やしたりする効果を持つ植物。
さらには解毒、解熱効果の高いハーブに、胃の調子を整えるものなど実に様々だ。
いずれも国の重要な産業でもあるが、とりわけ貴重なものは王国直轄の薬草園で厳重に管理されている。
「うわぁ……! 見せてくれるの?」
いつだったか、交流会の際エリンが薬草園を見たいと言い出したことがある。
コトネも様々な植物が育てられているという北の国ルーシアの薬草園には興味があったからエリンの「コトネだって見たいでしょ?」の言葉に、素直に頷いた。
──が、そのときのサヴジの返事は「ダメだ」の一言。
いくら交流会とはいえ、王家直轄の薬草園は、王家の人間以外自由には見られないと譲らなかった。
「ああ。見たいと言っていただろう?」
「でも、──王家の人間以外、ダメなんじゃ」
「お前がこの国を選べば、何の問題もない」
「あ……」
サヴジの言葉に一瞬戸惑い、言葉に詰まってしまう。
そんなコトネを見て、サヴジはわずかに口角を上げ、
「……そうだろう?」
「……、……う、うん」
でも、まだ──そう言いかけるコトネの言葉をさえぎるように、手を差し出す。
「今はまだ迷っていても良い。だが──最終的には、俺を選ばせてみせる」
(まだ、迷っていても良い……)
その手をつかんで良いのかと、コトネの指先が僅かに上がる。
それを見逃さず、迎えに行くようにサヴジは一歩踏み込み、コトネの手を取った。
「さあ、行くぞ。馬を用意させてある」
今日は天気も良く、程よく風も吹いている。
遠乗りには最高の日だ。
コトネは王家に迎えられ、様々な教育を受けることになったが、なかなか身につかず苦労をしたものも多かった。
ただ、乗馬だけは別だ。
性に合ったのか、初回から楽しめたし上達も早かった。
交流会では生憎乗馬の機会はなかったが、東の国ヤコクでは、コトネも時々遠乗りを楽しんでいる。
「一緒に乗るか? それとも、別に乗るか?」
「じゃあ、……別でいい? 私も自分で馬に乗りたい」
「かまわん。お前用の鞍も用意させてあるからな」




