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修羅場

「な!?あ、貴方は、まさか…」


異能対策課の人が驚いている。


『え!?え!?え~!?わ、私の思い違いでなければ、あのお方って、『黒猫』のギルドマスターの、ダイスケ様ではないでしょうか!?』


「む?うむ。その通りだ。私の名も広まったものだなぁ。」


ギルマスが遠いところを見る。


「な、なぜ貴方がここに!?何をしに来たのですか!」


異能対策課の人が叫ぶ。


「言っただろう?私はこの二人を黒猫に勧誘したいのだ。」


二人は言いあう。


「お、お兄ちゃん。これって、どういうことなの?」


ナギサが混乱して、僕に助けを求める。


「ん?なんか、異能対策課の人と『黒猫』のギルマスが僕達を勧誘しに来たらしいよ?」


「う、いや、そうじゃなくて!なんで『黒猫』のギルマスが来てるの!?あの人って、こんなところに来る人じゃないでしょ!?」


ナギサが両手をばたつかせて僕に迫る。


「それについてですが、私自身からお答えしましょう。」


言い合いが終わったのか、ギルマスがその質問に答える。僕は高濃度の煙で会場を包み込み、外から見えず、聞こえないドームを作った。


「私がここに来た目的は一つだけです。ナギサ様、コウキ様の両名を『黒猫』に勧誘するためです。」


ギルマスの秘書がそれに続ける。


「あなた方が『黒猫』に入っていただけるのなら、最大限の手当て、保証はいたします。依頼は全てあなた方に対しての強制力は無く、断ったとしてもあなた方の評価に何の影響もございません。所属して頂けるのなら月給百万、そこに達成した依頼金が上乗せされます。」


「え!?え?ど、どういうことなの?お兄ちゃん。」


ナギサは、さっきから驚きの連続で頭がパンクしそうになっている。


「えっと、つまり…所属するだけで異能対策課よりも安定して、さらに高い収入を得れるし、そこまで忙しくないらしい。」


「え!?す、すごい待遇…」


ナギサは揺れている。異能対策課と『黒猫』のどちらに行くか。


「で、でも、それでもおかしいよ!?なんでナギ達のためにここまでの事をするの?」


ナギサは疑問に思ったようだ。


「それは、偏に貴方様の兄君が原因です。」


ギルマスがとんでもないことを言う。


「おい、ギルマス。分かっているよな?」


僕は、結構本気でギルマスに殺気を放つ。


「え?え!?」


ナギサはギルマスの言葉と僕の態度の変化で、もう訳が分からないと言った感じだ。


ギルマスの体は一瞬震えたが、こぶしを握り締め、僕を見返した。覚悟を決めた目だ。


…まったく、やってくれたな。態度をわきまえろとは言ったが、自分の命すらも天秤にかけるとは。この年になっても、まだハッスルしたいのかい?


「…ハア、ったく、好きにしろ。」


僕はため息をつき、殺気を止めた。


「え、えっと?お兄ちゃんが原因ってどういうことなんですか?」


ナギサがギルマスに尋ねる。


「それは、コウキ様が、Sランク探索者『死煙』本人だからです。」


あ~あ。ばれちゃったよ。本当はエリクサーを手に入れた時に言いたかったのに。


「え、し、『死煙』!?お、お兄ちゃんが!?え、な、なんで!?何やってるの!?お兄ちゃん」


ナギサは僕の腕を掴み、揺らす揺らす揺らす。


「お、おおう、うおう、落ち着け。一旦落ち着こう、な?」


「う、うん。スーハー、スーフー」


ナギサは深呼吸をする。


「落ち着いたか?」


僕は問う。


「うん。でも、なんでそんな危険なことをしてるの?なんでナギに話してくれなかったの?」


ナギは目に見えて落ち込んでしまった。


「う、ごめん、ごめんな。本当はもっと違う形で驚かせたかったんだ。」


僕は謝る。


「違う形?」


ナギサは僕に聞く。


「あ~、その、なんと言うか…」


「そいつはSランクになってから、ずっとエリクサーを手に入れるために活動していたのだ。」


僕が言い淀んでいると、ギルマスが全部ばらしてしまった。


「え?」


ナギサが首をかしげる。


「コウキはな、世界中のダンジョンに潜ってエリクサーを探し続け、依頼の報酬やアイテムの売却金のほとんどをエリクサー調達の依頼の報酬金としてつぎ込んで、今では国家予算並みの金額に膨れ上がっているほどだ。それらも全部、妹の為だと言い、ずっと、死ぬ物狂いで活動していた。」


ギルマスが補足する。…なんか悪戯がばれたような、こそばゆい気持ちがする。


「え、そう、だったの?…なんで、言ってくれなかったの?」


ナギサが目に涙を浮かべて言う。


…あ~!違う、違うんだ!そんな深刻な話じゃないんだ!


ただ、驚かせたかっただけだという、お兄ちゃんの遊び心なんだ!


「いや、その、驚かせたかったから…(ごにょごにょ)」


僕は小声で言う。


「え?ごめんお兄ちゃん、もう一回言って?聞こえなかった。」


「どうやら驚かせたかっただけらしいぞ?」


ギルマスが呆れたように言う。


「え?それ、だけ?」


ナギサが信じられないと言いたそうな様子だ。


「う、そうだよ。ただのお兄ちゃんの遊び心だよ。」


僕は開き直ってぶっちゃけることにした。


「え、あ、そう、なんだ。…ぷっ、ふふ、あはははは!」


ナギサが急に笑い出した。ど、どうしたんだ!?お兄ちゃんはちょっと心配になってきたぞ?


「は~、もう。ずっと悩んでいたナギが馬鹿みたい。」


「え?」


どういうことだ?


「だって、ナギが目の話になったら、お兄ちゃんって何かを隠そうとしてるから。ずっと不安だったんだよ?でも、それがただの遊び心の為だって知って、それが馬鹿らしく思っちゃった。」


「マジか。」


そんなにわかりやすかったのか。全然知らなかった。


「あ~コホン。えっと、それで、返事を聞かせてもらえるかな?」


ギルマスが言う。


「え?あっ!そうでした。そういうことなら、ナギは『黒猫』に所属します!」


ナギは元気よく宣言した。


「よぉおしゃぁあああああ!」


ギルマスが雄叫びを上げる。


「やりましたね、ギルマス。」


ギルマスの秘書も目に涙を浮かべて喜んでいる。


「ひゃ!…び、びっくりしたぁ。」


ナギサの肩が跳ねる。…まあ、いい年した強面のおっさんが急に叫ぶんだ。びっくりするだろう。


「とりあえず、話はあとにしよう。試合が進まない。」


僕は言い、煙のドームを霧散させる。

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