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トーナメント戦

僕達が会場を出た後も大会は継続された。



…そして、この体育祭の目玉ともいえる、トーナメント戦が始まる。






『さあさあさあ!途中、ハプニングがありましたが、無事にこの競技を行うことができます!選手同士の実戦!血沸き肉躍るトーナメント戦が、今!始まります!』


ワアアアアアアアアア!


観客が盛り上がっている。


『では!早速参りましょう!あの『黒猫』のギルドマスターが直々にスカウトしに来た!?一年のダークホース、コウキ選手~!』


ワアアアアアアアアア!


『それに対するは、この選手!肥満体形に酷い顔!さらには異能を持たない『無能』!ヤスヒロ選手!まさにイケメン対ブサメン!まさに強者vs弱者!』


ぎゃははハハハハハ!


ブーーーーーーーー!


笑い声とブーイングが響き渡る。


僕の目の前には涙目になっているヤスヒロがいる。


「う、なんで、こんなに言われなきゃいけないんだ…」


「弱いからだよ。」


僕は言う。


「え?」


ヤスヒロは僕の方を向く。


「君は弱いから、言い返せない。弱いから、こんなところで悩む。弱いなら、もうここに来るな。目障りだ。」


僕は言う。ナギサを不快な気分にしたんだ。もうこの学園に来てほしくない。


「う、そう、だね。こんなところで悩んだら駄目だ。よし、やるよ。」


あれ~?なんか覚悟決めちゃっているんだけど?棄権しようよ~。勝てるわけないじゃん。


『では始まります!では、初め!』


「うおおおおおお!」


ヤスヒロは僕に突っ込んでくる。フケが舞い、汗や油が地面に落ちる。


…気持ち悪っ!


僕は体を煙にしてヤスヒロから距離を取る。


「なるほど、それが君の異能か。」


僕は言う。


「え?」

『え?』


ヤスヒロと解説の声が被る。


「なんて不快な存在だ。煙で触れたくもない。見ろ、鳥肌が立ったぞ。」


僕は鳥肌の立った腕を擦る。


ぎゃははハハハハハ!


いいぞ~!


観客が大爆笑だ。思ったより受けがいい。


『ぷっ!ひゃははははは!…な、なんと、ヤスヒロ選手、ぷふっ、コウキ選手に卑劣な、くふっ、精神攻撃を仕掛けたようです!あはははは!だめ!お腹痛い!』


(もう、お兄ちゃんったら、ぷっ。だ、だめ…くふふ)


ナギサにも受けているらしい。僕はナギサに纏わせてある煙から音を拾った。あ、ナギサは出場させてないよ。危ないからね。


「な!ど、どこまでも、馬鹿にしてぇ!」


ヤスヒロが僕の方に走る。僕は煙になって逃げまわる。


「やめろ、こっちに来るな!臭い!…しまった!もう、逃げ場が無い!」


僕はリングの端で大袈裟に頭を抱えて見せた。


『おおっと!?コウキ選手、追い詰められた!?まさか、本当のダークホースはヤスヒロ選手だったのか!?』


「くそっ、皆、ぼくを嗤いやがって…」


ヤスヒロが言う。


「そうだね。ほら、あそこ見なよ。君の大好きなスミレも可笑しくて笑ってるよ。やっぱり彼女も君に優しくしていたのは演技だったんだね。」


僕は両手を口元に添えて震えているスミレのいるところを指差す。


まあ、スミレは何処かからやってきた煙に咳き込んでいただけなんだけどね。


「そ、んな…」


ヤスヒロが呆然とする。


「彼女に良いところを見せたかったんだろ?まあ、結果はこの様だけどな。」


僕はあざけるように嗤う。


「こうきいいいいいいい!」


ヤスヒロが鼻水、涙、よだれを垂れ流して僕に向かって走り出す。


『あひゃひゃひゃひゃひゃ!や、ヤスヒロ選手が、ぶふっ!異能を全開にして、くっ、コウキ選手にとどめを刺そうとしています!まさかのコウキ選手、ピーンチ!』


「うわあああああ!」


僕はリングを砕き、その破片をヤスヒロに投げつけた。焦っているふりをして。


「げぱっ!?」


ヤスヒロはそれに直撃し、リングの外まで吹き飛んだ。


『ぶふぅ!も、無理!こらえられ…あひゃひゃひゃひゃひゃ!…』


しばらくして、


『す、すみません。お待たせしました。え~只今の試合、ヤスヒロ選手の、ぶふっ、場外により、コウキ選手の勝利です!』


ワアアアアアアアアア!


良かったぞ~!


面白かった!


『げぱっ!?』って、なんだよ。ぶふっ…


おい、もう誰かが名試合としてネットに挙げてるぞ。


ざわざわ、がやがや…


観客へのサービスも忘れない。まあ、ナギサの為だけどね。


僕はリングから出る。




『では、次の試合…』





「あ、お帰りなさい!お兄ちゃん!めっちゃ面白かったよ!カエデちゃんがあんなに笑ってるの初めて聞いた!」


「え!?何それ!?見てぇ!」


あのカエデが!?『Mr.ビーン』を観てもずっと無表情だったカエデが!?


「あ、カエデちゃんはもうすぐ試合だよ。ほら、アキラ君と。」


僕はリングの方を見る。確かにそこにはカエデと一つのオブジェがある。


アキラの氷像だ。…


「終わってね?」


「うん。今、始まって、終わったところだよ?お兄ちゃん。」


『あれ!?試合開始したらアキラ選手が氷漬けになってしまいました!すごい早業!勝者、カエデ選手~!』


「容赦ねぇな~」


「私が慰めないと!…って、あ!次、私の試合じゃん!」


ナツメがやる気満々でリングに向かう。


しばらくして…


『決着~!すごい攻防でしたが、ナツメ選手、二年生に善戦しましたが、一歩届かず!勝者、アレク選手~!』


この放送を最後にナツメの姿は見なかった。

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