体育祭終了
その後も試合は続き、準決勝まで進んだ。
「こんどこそ、勝つ。」
カエデが言う。
「なあ、それより、さっき笑ってたって本当か?見せてくれよ。」
僕はさっきからそれが気になって仕方がない。
「エッチ。」
「え、なんで?」
マジでなんで?
『では!準決勝、スタートです!』
僕の体は凍った。
『って、ああ!コウキ選手でもやはりこうなってしまうのか!?』
うん。これを防ぐのは難しいんだ。
僕は煙を圧縮し、高速で動かし、振動させ、大量の熱を発生させ、氷を融かす。
融かすと同時に凍っていく。…いたちごっこにしかならん。氷に囲まれているので緊急用の手段以外で外の煙と接続ができない。
僕は地面から穴をあけ、大量の煙を放出。その煙を全て分身にする。僕の異能は正確には煙との一体化が中心だ。僕の支配している煙は僕の体であり、目であり、耳であり、脳でもあるのだ。
つまり、僕は一人なんだけど、脳がいくつもあり、疑似的なマルチタスクができるというわけだ。
今だって、僕はここにいるが、同時にいろんな姿で世界中のダンジョンに潜り、エリクサーを探している。
…まあ、分かりにくかったら、そういう生物なんだって思えばいいよ。
『おおっと~?氷が解けたかと思えば凍り、リングから煙が出てきたかと思えば大量のコウキ選手!?一体、どうなっているんだ~?』
「む、厄介。」
カエデが自分の周囲以外の空気を液化させる。それによって暴風が生まれ、分身たちを蹂躙する。
…だが、それは悪手だ。
実体化させた分身たちにオリハルコン製の鎖を持たせてある。分身たちは鎖でつながり合い、投げ網のように四方八方に飛ばされていく。
そのうちの一つがカエデの腕に掛かり、カエデをリングの外へ連れて行った。
「しまっ、ッ!」
カエデが衝撃に備えて体を縮め、目を閉じる。
カエデの体が壁にぶつかる前に僕は分身をクッションのような煙に変え、衝撃を吸収する。
僕は落ちてくるカエデの体を煙で受け止め、優しく降ろす。
『おお~、相手の体も労わるコウキ選手!まさに紳士です!顔も良いですし、彼女さんとかいるんでしょうか?』
いや、それより言うことがあるだろう!
『あ、あの、勝者宣言言わないと…(こしょこしょ)』
『あ!忘れてました!つい、見とれてしまい、コホン。え~、カエデ選手の場外により、勝者、コウキ選手!…あ、コウキ選手はそのままそこに居てください。決勝が始まりますから。』
しばらくして、
『では!いよいよ決勝戦!まずは一年のダークホース、煙を使う、コウキ選手~!』
ワアアアアアアアアア!
『続きまして、二年生、そして生徒会長でもある、念力使いのアレク選手~!』
ワアアアアアアアアア!
『まさにイケメンvsイケメン!一部の女子にとっては名試合になるのではないでしょうか。かく言う私も興奮して鼻血が出そうです!』
この放送、大丈夫なんだろうな?
『ハアハア、で、では!決勝戦!開始いいいいい!』
なんか気合の入り方が違うな。決勝戦、だからだよな?
「よろしく。共にいい試合にしようじゃないか。」
生徒会長の…誰だっけ?が言う。
「はい、同感です。えっと、エレキ先輩?」
「アレクだ!断じてギターなんかではない!」
エレk…アレク先輩は念力で僕の周囲の地面をもぎ取り、その瓦礫を僕にぶつける。
…何かすっごいキレてるんだけど。ギターに何か恨みでもあるのか?
ギター『なんか』って言ってるし。
僕は体を煙にし、アレク先輩の背後で実体化する。
「能力の相性が悪すぎましたね。先輩。」
僕はアレク先輩の口元に煙を充満させ、窒息させた。
アレク先輩は倒れる。
『き、決まったー!アレク選手、戦闘不能により、勝者、コウキ選手~!…このトーナメント戦、優勝は、コウキ選手です!』
ワアアアアアアアアア!
表彰式が始まる。一位が僕。二位がアレク先輩。三位がカエデだ。
『さて、コウキ選手、今のお気持ちは?』
「そうですね、コホン。ナギサ~!お兄ちゃんは勝ったよ~!優勝だ~!」
僕は全身で喜びを表現する。
『わ、わあ、コウキ選手は妹想いなんですね。え、では、一番危なかったと思ったところは?』
解説の人が少し引いたが、質問を続ける。
「それはもう、決まってるじゃないですか。第一試合の『げぱっ!?』事件ですよ。」
「くふっ」
『ぶふっ!ああ、あれですか~あれは傑作でしたね~』
おお!カエデが笑った!…あれ?ナギサ以外で可愛いと思ったのはこれが初めてだ。
え?いや、だって、でも、ええ!?いや、まさか、そんな…
カエデと目が合う。カエデがはっとしたような顔になり、顔を赤くして俯く。
…え?何その反応。調子が狂うんだけど。
僕は自分の顔が熱を持っているのを自覚した。
そこからの記憶はあまり無い。
いや、覚えていないわけではないのだ。ただ、どこか他人事のように見えて…




