♥ 【 女の子らしく 】 シュケルハン侯爵邸 / ベアリーチェの自室 3
──*──*──*── 2階・ベアリーチェの自室
食堂で夕食を終えたオレは、真っ直ぐ部屋へ向かった。
部屋へ入ったら、ソファーに腰を下ろして刺繍の続きに取り掛かる。
途中で止めた刺繍は妖精さんが預かっていてくれた。
頑張って6枚分の刺繍を仕上げるぞ!!
ふぅ──、何とか6枚分の刺繍が終わった。
オレは本気で頑張った!
刺繍が終わったら、ティーパックを入れる袋状にする為に、裏返しにしたままはぎれを手縫いしていく。
サシェを吊るす為の紐も忘れずに縫い付けないとだ。
チクチク,チクチク,チクチク──とひたすら針を動かして縫う。
まるで何かに取り憑かれたみたいにオレは必死にはぎれを縫いまくって、漸く小袋が完成した。
小袋の中にティーパックを入れたら、渡す相手の瞳の色と同じリボンを使って、蝶々結びをしてキュッと締めた。
良かれと思ってキュッと締めたのにセフィから駄目出しを食らった。
セフィが綺麗に結べる正しいリボンの結び方を教えてくれる。
リボンを結び終えたら、サシェの完成だ!
吊るす用の紐も縫い付けたから、このまま部屋の壁に吊るす事が出来る仕様だ。
達成感あるなぁ。
サシェに付いている紐を利用して、麦わら帽子の紐に絡ませた。
セフィ:セフィロート
「 後は土台を麦わら帽子に嵌め込めば────麦わら帽子のリースの完成です 」
ベアリーチェ
「 やったぁ!!
1つ完成だな!
よ〜し、残りの5個も完成させるぞ!! 」
完成した1つ目と同じ様に残りの5つも取り掛かった。
出来たぁ〜〜〜〜!!
サシェ付きの麦わら帽子のリースが完成した。
長かった。
オレは最後まで頑張れた!
一休みしたい。
セフィが淹れてくれた紅茶を飲みながら、オレは達成感に浸っていた。
ベアリーチェ
「 ライエルにはさ、どのポプリを渡したらいいかな?
6種類もあるけどさ悩んじゃうよ 」
今、テーブルの上に出ているのはハート型の瓶に入っているピンク,イエロー,ブルー,グリーン,パープル,レッド,オレンジのポプリだ。
ベアリーチェ
「 ライエルはさ、男だからブルー,グリーン,パープル,オレンジ辺りが合うんじゃないかって思うんだけど、どうかな? 」
セフィ:セフィロート
「 ドライハーブとドライフルーツのポプリで良いと思います 」
ベアリーチェ
「 グリーンとオレンジか。
確かにオレンジは黄金色に似てるよな。
“ ライエルを想って作った ” って勘違いされても困るんだけど、オレンジにした方が無難かな?
じゃあ、グリーンは何でだ? 」
セフィ:セフィロート
「 ハーブは薬剤として使われますけど、リラックス効果もあります。
寝る前に香りを嗅げば、寝付きも良くなるでしょう。
毎晩、悪夢に魘されるのも不憫ですし 」
ベアリーチェ
「 …………それもそうだな…。
ガッツリ見ちゃったわけだから、悪夢を見る可能性だってあるんだよな…。
よし、じゃあ──、ライエルに渡すのはオレンジとグリーンのポプリに決まりだな!
手紙は寝る前に書いちゃおうかな 」
セフィ:セフィロート
「 ベリィ、ポプリを入れる箱を用意しました。
確りフタをしているので、香りが混ざる事はないです。
箱の中に手紙と転送陣を同封してステインに託しましょう 」
ベアリーチェ
「 そうだな。
これで一段落だな。
なぁ、セフィ…。
今回の未遂事件の事ってさ、じぃさんは知ってたのか? 」
セフィ:セフィロート
「 ワタシが教えましたから知ってましたね。
シュケンハン邸でライムエント殺害を防ぐ為、エンディミン邸へ行く事を提案しました。
今は亡きナイロートとステインに面識があったのは幸いでした 」
ベアリーチェ
「 お父様とお母様も今回の事は知ってたのか? 」
セフィ:セフィロート
「 ディアストのみ知ってました。
レナフォード,子供達,使用人達には伝えないように口止めしてました。
何処で漏れて、ナイロートの耳に入るか分かりませんし 」
ベアリーチェ
「 そっか…。
今回の事を知ってたのは、じぃさん,お父様,セフィ,妖精さんだけなんだな… 」
セフィ:セフィロート
「 出来る限り内密に進める必要がありましたからね 」
ベアリーチェ
「 内密に進めたの?
何で?? 」
セフィ:セフィロート
「 現在の国王に身内を厳しく裁く程の力は無いからです 」
ベアリーチェ
「 えっ……。
国王が罪人を裁く力が無いの?
何で?? 」
セフィ:セフィロート
「 国王も人の子です。
どうしても身内には甘い処罰を下してしまうものです 」
ベアリーチェ
「 そうなのか? 」
セフィ:セフィロート
「 罪人を正当に裁けない相手に任せる事は出来ません。
下手をすれば、隠蔽されたり揉み消される可能性もありますし。
無かった事にされても困るでしょう 」
ベアリーチェ
「 当たり前だよ!
無罪放免なんか駄目に決まってるよ! 」
セフィ:セフィロート
「 ワタシも首謀者が罰せられずにのうのうと生きるのは許せません。
国王,側近達,皇子殿下,王子殿下達も真実を知りません。
ワタシが制裁を与えた者達が、何故ベッド生活を送る事になったのか真相を知りません。
彼等が真っ黒黒な汚職と悪事に手を出していた事は、資料,報告書,証拠品の存在があるので、無かった事には出来ません。
国王ですら、厳しい処罰を下さないわけにはいかない程の真っ黒黒ぶりです 」
ベアリーチェ
「 汚職や悪事に対しては厳しく罰せれるんだ? 」
セフィ:セフィロート
「 残念ですけど、その中には身内は居ませんからね 」
ベアリーチェ
「 罪を償うって言ってもさ、刑務所みたいな所に入れられて数年過ごすぐらいなんだろ、どうせさ。
それにさ保釈金が払われたら、罪を償わないで釈放されるわけだし…。
人間の罰し方ってさ、温いよな 」
セフィ:セフィロート
「 ワタシが制裁を加えて良かったでしょう? 」
ベアリーチェ
「 そうだよな。
両腕と両脚を失って、犯罪奴隷に落とされて──、十分な罰を受けてると思うよ。
一寸だけ清々したかもな 」