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Voyage:04 錆びついた舵、新しい帆

はじめまして、ご覧いただきありがとうございます!


本作は、不思議な「造船図書館」を舞台に、心に悩みを抱えた人々が自分の「時の書」と向き合い、人生を新しく整えていく連作短編(オムニバス形式)の物語です。


1話ごとに読み切りのように楽しめる構成になっていますので、ぜひ気軽にお楽しみください!

アフロディーテは

「いい返事。……でもね、覚悟だけじゃ荒波は越えられないわ。

そのボロボロになった帆と、錆びついた舵を直さないと。」

アフロディーテが言い終えるタイミングで

二人の神が螺旋階段を上がってきた。

アフロディーテは沙耶に二人を紹介した。

「眼鏡をかけて賢そうに見える女性が知恵・工芸の女神アテナ。

そして、その隣を歩いている男性が私の夫。

鍛冶・炎の神・ヘパイストスよ。

二人があなたの“心の船“を修繕してくれるわ」

アテナはアフロディーテに向かって

「賢そうに見えるではなく賢いのよ!」

と紹介する言葉を変えなさいと言わんばかりに話しかけた。

「あら。聞こえたのね。」

アフロディーテも文句でもあるのとばかりに対立した。

ヘパイストスが慌てて

「ほらほら、そこまでにせい。お嬢ちゃんが怖がっているではないか。」

沙耶を引き立てて二人のいがみ合いは落ち着いた。

ヘパイストスは沙耶からクロノスに視線を変えて

「クロノスや。

“時の書”からお嬢ちゃんの“心の船”(ボトルシップ)を出してくれんか。」

クロノスは頷いて

“時の書”をめくると本の中に船の絵が描かれたページから

ボトルシップが飛び出してきた。

それは沙耶が思っていたよりもずっと小さく、

けれどその帆は今にも破れそうなほど薄くなっており、

舵は今にも崩れ落ちそうなほどガタガタと揺れていた、

するとヘパイストスは

沙耶が不思議そうに見ていると思い

「この“時の書”はなわしが作った“糸断ペン“(いとたちペン)で

運命の3女神(モイライ)達が運命の糸を紡ぎ、

長さを調整し断った糸を本に変え、

ホーライ達がお嬢ちゃんがいままで感じたことや選択してきたことを記し、

アテナがお嬢ちゃんが生まれた時にこの“心の船”を設計して、

わしが作ったのが“心の船”(ボトルシップ)。

そしてこれらを“時の書“に封じて管理しておるのがクロノスなんじゃよ」と説明してくれた。

沙耶はここに来てからというもの不思議なことが次から次へと

起こるので驚かずに理解しようとしていた。

「さぁ、とっと始めるとするかの!

アテナよさっき出来た設計図を見せてくれんか。」

アテナは手に持っていった筒から一枚の設計図を

アフロディーテが座っていた席に広げた。

ヘパイストスはその設計図を見ながら手に持っていた工具箱から

いくつか道具を取り出し作業を始めた。

沙耶はヘパイストスは大柄な体つきなので

細かい作業ができるのかと疑ったが、

ヘパイストスはあっという間に細かい作業を次々とこなしていく。

沙耶は(この人もすごい職人だ)と心の中で悟った。

アテナは

「今回改良するのは帆と舵を新しくするのよ。

天秤座のあなたに合うように帆はターコイズ色にピンク色の天秤の紋章を

そして舵にはライトブルー色の舵板を使用しシルバーの接続部品を使うことにしたの。そして、あなたはそこし早いけれど最初の大人への

分岐点・サターンリターンを体験したので、

船全体をグレードアップした設計図をしたためたの。」

ヘパイストスが

「少し時間がかかるからお茶でも楽しんでいてくれんか?」

集中して作業を本格化した。

スポンデは人数分の温かいサクラ紅茶を出してくれた。

アクテーは一口サイズのケーキ2種類出してくれて

みなで暫し会話を楽しんだ。

ヘパイストスはものの10分ほど経過し

太い指先で、最後の一刺しを終えた。

「できたぞ。お嬢ちゃんの新しい『心の船』じゃ」とみなを呼んだ。

差し出されたボトルシップを見て、

私は思わず息を呑んだ。

破れそうだった帆は、夜明け前の空のようなターコイズブルーに染まり

そこには誇らしげにピンク色の天秤が描かれている。

ガタついていた舵は、銀色の部品でしっかりと固定され、

どんな荒波でも跳ね返してくれそうな強さを宿していた。

クロノス、アフロディーテ、アテナ、ヘパイストス、スポンデ、アクテーは

「さぁ!いってらっしゃい。」とラウンジで見送ってくれた。

沙耶はみなに深いお辞儀をして

「ありがとうございました。

私、いままでどおりみんなの話しを聞いて

今度は自分の意見もしっかりと伝えてみます」と元気よく応えた。

カイロスとアポロンは玄関まで送り届けてくれることになり、

いっしょに螺旋階段を降りていく途中でアポロンが

「不安はもうないかい?」太陽の光のような雰囲気で心配してくれた。

沙耶は

「はい!アポロン様。私をこの場所に招待してくださって

ありがとうございました。」

お礼を述べた。

アポロンは

「僕は太陽星座を司っているから若林さんが迷った時は“人生の海路”を

明るく照らしだすことが仕事だから。

癖の強い神々に合わせる必要があると判断したんだ。

若林さんは来た時に比べたら明るい表情になっているから。

安心して今は送り出せるよ。」

玄関にたどり着くとカイロスが

「早速だけど、沙耶ちゃんには明日一番にチャンスの風を用意したから、

しっかりと前を向いてチャンスを受け取ってね。

逃したらダメだよ。

チャンスは前からしか来ないから、

横を向いていたり下を向いてたりすると。

チャンスは掴めないからね!

まぁ今の沙耶ちゃんなら掴めるはずだから。」

二人は「いってらっしゃい!」と玄関を開けてくれた。

沙耶は「ありがとうございました!」

深々とお辞儀をして来た道を戻った。

沙耶はふと私どうやって戻るんだろうと思い

周囲を見回すと来た時は霧が立ち込めていたのに、

今は霧が晴れていた。

そしてハッキリと

『魂の造船図書館(クロノス・ライブラリー)』を確認できた。

灯台の形をしていることを改めて認識すると、

灯台の最上階が温かい光を放ち、

次第にその光は沙耶を飲み込んだ。

「さぁ、汝の次の島への海路はすでに汝の中にある。

己を信じ突き進むが良い。我らはいつでも汝を見守っておる。」

脳に直接響く声は、

この世のすべての時間を包み込むような、深く、静かな響きだった。

(……アイオーン様)

確信した。これが永久を司る、始まりにして終わりの神。

視界が真っ白な光に包まれ、私は意識を手放した。


最後までお読みいただきありがとうございます!


もし「世界観が好き」「続きが気になる」「星読みや図書館の雰囲気に癒やされた」と感じていただけましたら、ページ下部の【ブックマーク追加】や【評価(★★★★★)】をいただけますと、執筆の大きな励みになります!


次回も更新をお楽しみに!

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