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Voyage:02 霧の向こうに立つ灯台

はじめまして、ご覧いただきありがとうございます!


本作は、不思議な「造船図書館」を舞台に、心に悩みを抱えた人々が自分の「時の書」と向き合い、人生を新しく整えていく連作短編(オムニバス形式)の物語です。


1話ごとに読み切りのように楽しめる構成になっていますので、ぜひ気軽にお楽しみください!

最寄りの駅に着き

「……全然、調和(バランス)なんて取れてないじゃん。

どうして私を選ぶかなぁ~」溜息をつきながら

家まで歩いているとイヤホン越しに聞きなれない電子音が響いた。

スマホを取り出すと、未読通知の赤い丸が……動いた?

メールアプリのアイコンから、封筒が浮き上がる。

それは画面の中で生き物のように

3回クルリと回ると、吸い込まれるように消えた。

画面の奥で鈍く光るオレンジ色のシーリングスタンプ。

そこには、見たこともない太陽の紋章が刻まれていた。

「今の、なに……?」

誰もいない夜道で、つい声が漏れる。

幻覚が見えるまで疲れているのかと不安になり、

マンションのエントランスの自動ドアのロックを解除し、

エレベーターが上の階に行ったタイミングだったので

待つのが惜しいと思い、階段で上がることにした。

部屋の鍵を開けたはずだった。けれど、

足元に広がるのは見慣れないフローリングではなく。

湿った土の臭いとぼんやりとした霧だった。

前方に灯台のような建物が見えた。

「……うそ、幻覚?私、そこまで末期なの?」

不安と疲れを一層感じたがなぜか

吸い込まれるかのように灯台へと足を進めた。

灯台の扉を前に幻覚っぽいしどうにでもなっちゃえと

疲れていることもあり、やけくそになって扉を開けた。

中に入ると受付らしき人物が二人見えた。

(こんな夜遅くに受付に二人もいらないでしょ)と内心思いながらも、

沙耶は受付へと足を進めた。

黒髪のロングストレートで前髪はパッツン、

シルバーのスクエア型の眼鏡をかけており、

いかにも真面目そうで少し近寄りがたい雰囲気の女性と

サクラ色のベリーショートの女性が何か話しながら仕事をしていた。

サクラ色のベリーショートの女性は遠目から見てもハキハキとした

雰囲気で話しかけやすそうに見えた。

沙耶はサクラ色のベリーショートの女性に話しかけようと

受付へ近づいたが……

「ようこそ!魂の造船図書館へ」

先に話しかけてきたのは、

銀縁メガネの奥で理知的な瞳を光らせる女性だった。

その隙のない立ち振る舞いは会社のオーナーを思わせる。

少し不意をつかれたような挙動になってしまった。

「ケイちゃん、暗い暗い!もっと明るくしないと、強張っちゃうよぉ」

続いて割って入ってきたのは、

桜色のベリーショートが似合う、いかにも「愛されキャラ」な女性。

「ようこそ!魂の造船図書館・クロノス・ライブラリーへ、怖かったよね?

隣の真面目な黒髪の子は冬の女神・ケイモン。

そして私は春の女神・エイアーって言いまーす。

早速なんだけどぉ、

あなたのスマホに届いた不思議なメール(ステラ・パス)を

見せていただけますか?」

沙耶は慌てて先ほど届いた不思議なメールを見せた。

するとメールはまた立体的に浮かび上がり先ほどは開かなかったのだが、

オレンジ色のシーリングスタンプが外れて中から紙切れが現れた。

沙耶は脳の思考が追いつかず呆然と見ることしかできなかった。

冬の女神・ケイモンが中身を確認し後ろの棚から

厚めの本を取り出し

「若林沙耶さんですね?

この本を持って2階にあるラウンジへと向かってください。

あとラウンジへ着くまでこの本は絶対に開かないでくださいね」

と念を押され、螺旋階段に案内されたので沙耶は

2階ラウンジへと言われるがまま従った。

渡された本は、

使い込まれた鞄を思わせる茶色の革に包まれていた。

ずっしりとした重みが、不思議と心地よい。

螺旋階段を上がりながら、階下から二人の言い合いが聞こえてくる。

「もぉ!エイアー、人前で暗いとか言わないでよぉ。」

ケイモンが暗いと言われたことに不服だったらしく、

エイアーに怒っているのが聞こえた。

「ごめんごめん…つい言っちゃって…」

ケイモンは間髪入れずに

「……まだ春分の日まで5日あるんだから、案内は私がするの!

引き継ぎが終わるまでは、私が責任者なんだから」

「ごめんごめん。ケイちゃん、責任感強いもんねぇ……」

私は思わずクスッと小さな笑いを漏らした。

二人を横目で見ながら螺旋階段を上がった。

(女神とか名乗っちゃって、設定が濃いなぁ……。

でも、引き継ぎのピリピリした感じは、どこの世界も同じなんだ)

26歳の現実は、異世界に来てまで

「仕事の理屈」で納得しようとしていた。

どこか親近感を覚えながら、

私は「2階ラウンジ」と書かれた古めかしい標識に従って歩き出した。

「それにしてもたくさん本があるなぁ」と独り言を漏らした、

たしか受付の女神達が

『魂の造船図書館・クロノス・ライブラリー』って言ってたっけ?

図書館なら本がたくさんあって当たり前か

でも、

魂の造船ってどういう意味なんだろ?

なんか怖いなと思っていると館内アナウンスが流れてきた。

「クロノス館長、カイロス様、至急!2階ラウンジへとお越しください。」

先ほどの真面目な冬の女神・ケイモンの声だと認識できた。

沙耶は(クロノスやカイロスってアニメっぽい名前って思いながら)

最後までお読みいただきありがとうございます!


もし「世界観が好き」「続きが気になる」「星読みや図書館の雰囲気に癒やされた」と感じていただけましたら、ページ下部の【ブックマーク追加】や【評価(★★★★★)】をいただけますと、執筆の大きな励みになります!


次回も更新をお楽しみに!

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