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AIで書いた小説  作者: 斉藤一


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9/67

第二話

[CRITICAL SYSTEM ERROR]-------------------------------------------------

・エラー: 対象エリア [Sanctuary_01] のセキュリティ制限によりアクセスが拒絶されました。

・現在の認証トークン: [Role_Guest] ──> 必要権限: [Role_Administrator]

・例外(Exception)が発生。処理を中断(アボート)


頭上から振り下ろされる、すべてを消滅させるレベル99の光の刃。ディルクの『概念編集(エディット)』は、守護騎士のパッシブスキル『絶対拒絶(Anti_Malware)』によって完全にロックされていた。

思考フレームを極限まで加速させたディルクの網膜に、冷酷なカウントダウンが表示される。


【衝突(コリジョン)判定まで、残り 0.03秒】


STR 5、VIT 4のディルクがこれを受ければ、肉体オブジェクトは一瞬で塵(データ藻屑)になる。だが、ディルクの目は諦めていなかった。彼は守護騎士の「詳細ステータス」と、先ほど屠った魔獣たちのデータ構造の『差』を、超高速で比較していた。


(なぜ魔獣にはSTRとAGIしかない? なぜこの守護騎士には、人間と同じ詳細パラメータ(VIT、DEX、INT、MND)が存在している?)


答えは一つ。魔獣は世界の負荷を減らすための「簡易オブジェクト」だが、この守護騎士は神が直々に設計した「高度な自律プログラム」だからだ。だからこそ、人間と同じ変数(器)を持っている。


(……なら、まだセキュリティの『外側』に、触れる領域が残されているはずだ)


ディルクはロックされた『概念編集』のメインウィンドウではなく、システムの最下層にある、誰もアクセスしない『一時ゴミ箱(テンポラリ・バッファ)』のログ領域を強制的にこじ開けた。そこは、守護騎士が毎フレーム実行している「ターゲットへの視線・距離計算」のゴミデータが、一時的に書き込まれては消える排気口(ポート)だった。


「命令(インジェクション):守護騎士の『MND(精神干渉耐性):999』の参照先アドレスを、今この瞬間に生成された空のバッファ(Null)へ一時的にリダイレクト(偽装)する!」


【要求を受理。一時的なシンボリックリンクの書き換えを実行します】


ピキィン、とディルクの脳裏で、何かのプロテクトが外れる官能的な音が響いた。守護騎士の完璧な防御壁(ファイアウォール)に、ほんの一瞬、わずか1フレーム(60分の1秒)だけ、精神演算の防壁がゼロになる『セキュリティホール』が穿たれたのだ。ディルクはその一瞬を逃さなかった。


「概念編集――実行! 守護騎士のターゲット識別子(Target_UUID)を、ディルク・アシェルから、守護騎士自身(Sanctuary_Guardian_01)へ書き換える!」


text[LOCAL_LOG_STREAM: 0x00FF88A2 (MODIFIED)]

Line 001: EXECUTE_SKILL -> Source: Sanctuary_Guardian_01

Line 002: TARGET_SET -> Target: Sanctuary_Guardian_01 // 標的を自身に改ざん

Line 003: CALC_DAMAGE -> Value: 999999 (PHYSICAL_HOLY)


直後、世界が動き出す。


「駆除(デリート)、を、実……行……?」


守護騎士の無機質な音声ノイズが歪んだ。振り下ろされるはずだった光の巨剣が、不自然なシステム慣性によって強引に軌道を捻じ曲げられる。光の刃はディルクの鼻先をかすめ、そのまま守護騎士自身の胸のコアへと、凄まじい大質量で突き刺さった。


ズドォォォォォン!!!


自身の攻撃力「999」とスキル倍率が適用された一撃は、自身の耐久力「999」を完全に貫通した。


自傷ダメージ「999999」


「エラー……致命的なシステム例外(自己破壊)を検出……私は、何を……」


巨躯から光の粒子が激しく吹き零れる。レベル99の絶対的な存在が、自身のバグによって自壊していく。


syslog[SYSTEM NOTIFICATION]---------------------------------------------------

・管理者直轄オブジェクト [Sanctuary_Guardian_01] の消滅を確認。

・経験値(EXP)獲得: 99,999

・ディルク・アシェルのレベルアップ・シーケンスを実行。

・Level: 32 -> 99 (カンスト)

・システム認証が更新されました: [Role_Guest] ──> [Role_Administrator (仮)]


「は、はは……あははは!」


ディルクは崩れ落ちる守護騎士の破片の中で、狂ったように笑った。レベルは上限の99に達した。しかし、彼の詳細ステータスを開くと、相変わらずSTRやVITは「5」や「4」のまま。

だが、そんなことはもうどうでもよかった。仮にも『管理者(Administrator)』の権限を手に入れたのだ。これで世界のあらゆるデータが、彼の指先一つで視えるようになり、弄れるようになったのだから。

守護騎士が完全に光の塵となって消え去った後、遺跡の最奥へと続く扉が静かに開いた。ディルクは息を整え、錆びた剣を血まみれの手で握り直し、その奥へと足を踏み入れた。そこは、世界のすべての「記述」が保存されているはずの、原初のデータ格納庫(リポジトリ)だった。

しかし、ディルクの目に飛び込んできたのは、神聖な空間などではなかった。空間のあちこちが、紫色のデジタルノイズで激しく点滅している。壁や床のテキストは文字化けし、世界の裏側のコードが、破れた内臓のように剥き出しになってドロドロと溢れ出ていた。


「これが……世界の中心? まるで、ただのゴミ溜めじゃないか」


神が作った完璧な世界などというものは幻想だった。ここは、千年以上も放置され、パッチを当てられ続けた結果、崩壊寸前になっている『スパゲティ・システム』の末期症状だった。そのノイズの海の中心、古びた石碑の前に、「それ」はいた。


「――警告。未定義のオブジェクトが接近しています。システムスキャンを実行中」


声が聞こえた。それは、透き通るような、しかし感情の起伏が完全に欠落した少女の声だった。ノイズの塊の中から形作られたのは、透き通るような銀色の髪をした、10代半ばほどの少女だった。彼女の身体の半分は、常に不規則に変色するキューブ状のノイズに侵食されており、衣服の裾は世界のソースコード(文字列)そのもので編まれているかのように、絶えず流動している。ディルクが視線を向けると、管理者権限によって、彼女の詳細な構造定義が完全に暴露された。


【オブジェクト名】エラーコード・ゼロ (Error_Code_000)

【識別コード】Null_Pointer_Exception

【システム認証】システム廃棄データ(幽霊オブジェクト)

------------------------------------------------------------------------

[基本ステータス]

・Level : ??? ・Current_HP : NaN / NaN (計算不能)

・Current_MP : 99999 / 99999 ・Current_SP : 0 / 0


[隠蔽パラメータ / 破損状態]

・STR: 0 ・VIT: 0

・AGI: 0 ・DEX: 0

・INT: 999 (観測不能) ・MND: -999 (精神崩壊状態)


[固有プロパティ]

・『存在不確定(Unstable_Data)』:

- 効果: 世界の定期同期(Update)が実行されるたび、存在確率が50%減少する。


彼女は人間ではなかった。この世界が千年間の運用の中で生み出し、処理しきれずに放置してきた「バグの塊」、「神に消去されかけたシステムエラーの擬人化」だった。


「お前は……?」


「私は……エラーコード000」


少女は、感情のない瞳でディルクを見つめた。


「私は不必要なデータです。間もなく、世界の管理者によって『メモリ解放(消去)』されます。 intruder(侵入者)よ、私に触れないでください。あなたのアカウントデータまで汚染(クラッシュ)します」


彼女の足元の床が、ノイズによってドロドロと消滅していく。彼女のHP欄にある『NaN(Not a Number)』は、システムが彼女を「存在しないもの」として処理している証拠だった。

次の瞬間、世界のシステム時計が秒針を刻むと、彼女の左腕がノイズとともにふっと消え去った。ガーベージコレクション。世界の自動掃除機能が、彼女というバグを世界から完全に消し去ろうとしていた。


「消去プロセス、残り120。私の存在の定義(ソース)が消失します……」


少女は寂しそうに、いや、それすらもプログラムされた出力であるかのように、静かに目を閉じた。ディルクは、その姿にかつての自分を重ね合わせていた。『無能』と呼ばれ、ステータスの数値が低いというだけで、世界からゴミデータのように弾き出された自分。神の設計ミスとして、生きる権利すら否定された自分。


「……勝手に消えるなよ」


ディルクは一歩、ノイズの海へと踏み込んだ。


「お前をゴミだと決めたのは誰だ? 神のシステムか?」


「システムは絶対です。エラーは、排除されなければなりません」


「なら、そのシステムが間違ってるんだ」


ディルクは管理者権限のウィンドウを展開した。彼女の『存在不確定(Unstable_Data)』という、消去を待つだけのプログラムコードに手を伸ばす。

強烈なエラーの負荷がディルクの腕を襲い、彼の右腕が激しく文字化けを始めた。激痛が走る。だが、ディルクの指は止まらない。


「お前が神のバグだって言うなら、俺は世界の不具合(グリッチ)だ。命令(リファクタリング):『Error_Code_000』のオブジェクト定義を、システム廃棄領域から、ディルク・アシェルの【固有加護(パッシブ・スキル)】のメモリ領域へ強制的にインポート(移設)する!」


text[SYSTEM_ADMIN_COMMAND]--------------------------------------------------

・命令: オブジェクト [Error_Code_000] のメモリ番地を書き換え。

・変更前: /System/Trash/Error_000

・変更後: /User/Dirk_Ashel/Skill/Unique_Companion

・警告: この操作は世界の構造規約を著しく逸脱しています。実行しますか?

──> [YES] を選択。


「な……何を、して……」


少女の瞳に、初めてプログラムにはない『動揺』の光が走った。ガガガガガガ、と遺跡全体が激しい処理落ちの悲鳴を上げる。世界の掃除機能(ガーベージコレクション)が、彼女を消去しようとした瞬間、彼女のデータはすでに「ディルクの所有物(スキル)」として保護領域に移されていた。世界のシステムは、彼女を消去することを諦め、正常なデータとして再認識せざるを得なくなった。

ノイズが収まり、少女の身体の崩壊が止まる。消えていた左腕が、ディルクの魔力を吸い上げるようにして、美しい白磁の肌として再構成されていく。


syslog[SYSTEM NOTIFICATION]---------------------------------------------------

・処理が正常に完了しました。

・ディルク・アシェルは固有スキル【エラーコード:零(エル)】を獲得しました。

・世界定義の書き換え成功率: 100%


少女は、自分の新しく紡がれた両手を何度も握り締め、それからディルクを見上げた。その瞳には、もはや無機質なシステムログは流れていない。ただの、一人の不器用な少女の視線があった。


「私は……消えなかった? あなたが、私のバグを……書き換えたのですか?」


「ああ。これからはお前を『エル』と呼ぶ。俺の、世界に対する最初の『反逆のコード』だ」


ディルクはエルに向かって手を差し伸べた。レベル99の無能と、世界から捨てられたバグの少女。二人のエラーオブジェクトが手を取り合った瞬間、グラノス聖統世界のシステムは、後戻りのつかない致命的な破滅へと加速を始めた。

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