↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIで書いた小説  作者: 斉藤一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/69

二話目

 アビス・ガーディアンを消し去り、レベルが一気に15まで跳ね上がった私は、まず自身の猛烈な違和感と戦っていた。


「……歩きにくい。っていうか、重心が違いすぎるだろ、これ」


 一歩踏み出すたびに、胸のあたりがタプン、と妙な揺れ方をする。

 男の骨格だった頃の感覚で大股で歩こうとすると、骨盤の形が変わっているせいか、どうにもバランスが悪い。内股気味に、少し歩幅を狭めて歩くと、驚くほどスムーズに進めることに気づいた。


「いや、なんで私、こんな女の子っぽい歩き方を自然にマスターしようとしてるんだよ」


 思わず口に出した声は、鈴を転がすような美声だ。

 一人称が「私」に固定されつつあるのも恐ろしい。脳の構造まで女性に書き換えられているのか、あるいはこの身体の持つ「聖女」としての本能が、私の泥臭い男の精神をじわじわと侵食しているのか。

 嫌悪感があるかと言われれば、不思議とそれほどでもない。むしろ、絹のように滑らかな自分の肌に触れると、どこか心地よさすら感じてしまう自分がいた。


「……落ち着け。心が完全に女になっちまったら、それこそ元に戻れなくなる」


 パン、と自分の両頬を叩く。柔らかく、もちもちとした感触が手のひらに伝わり、それだけでまた少し顔が熱くなった。

 とにかく、今の最優先事項はこのブカブカの装備をどうにかすることだ。

 男物の、しかも安物の革鎧(レザーアーマー)は、今の私の華奢な身体には大きすぎる。肩紐はズリ落ち、胸元は今にも中身が丸見えになりそうなほど開いている。歩くたびに太ももに擦れるボロ布も、落ち着かないことこの上ない。


 私は固有スキル『迷宮の寵愛』を発動した。

 頭の中に、周囲の立体的な構造図が浮かび上がる。斥候(スカウト)時代には、神経をすり減らしてようやく数メートル先の罠を察知できる程度だったが、今の精度は桁違いだ。壁の裏側、さらには床の二重構造までが、まるで光る線で描かれたように脳裏に焼き付く。


「……あった。この壁の向こう、隠し部屋(シークレット・ルーム)だ」


 アビス・ガーディアンが守っていた部屋のすぐ脇。崩れた石壁の奥に、魔力の反応を見つけた。

 私は元斥候の指先を使い、壁の特定のレンガを押し込む。カチリ、と小気味いい音が響き、石壁がズズズと横にスライドした。

 部屋の中央には、埃を被った豪奢な宝箱が一つ。

『迷宮の寵愛』の視界によれば、宝箱の底に【毒針の罠】が仕掛けられているのが見えた。


「ふん、この手の罠は何度も解除してきた。この身体なら――」


 指先を宝箱の隙間に滑り込ませる。

 驚いた。男の時よりも指が細く、感覚が極めて繊細になっている。AGI(敏捷)が150を超えている影響か、私の指先はまるで生き物のように滑らかに動き、わずか数秒で罠のバネを無力化してしまった。


「よし、解除成功。……なんか、前の身体より手先が器用になってない?」


 くすんだ微笑を浮かべながら、宝箱の蓋を開ける。

 中に収められていたのは、一振りの美しい短剣と、畳まれた漆黒の衣服だった。

【鑑定:『深淵の聖衣(アビス・クローク)』】

 • 効果: 装備者のサイズに自動調整。物理・魔法耐性(大)。隠密効果上昇。魔力回復速度上昇。

【鑑定:『ミゼリコルディア(憐れみの聖痕)』】

 • 効果: 聖属性を帯びたミスリル製の短剣。即死確率上昇。不意打ち時のダメージ5倍。


「これ……聖女の装備っていうか、どう見ても暗殺者(アサシン)用だろ」


 苦笑しつつも、私は『深淵の聖衣』を手に取った。衣服に触れた瞬間、それは生き物のように形を変え、私の身体を包み込んだ。

 姿鏡がないので水たまりで確認すると、そこには見違えるような姿の私がいた。

 黒を基調とした、ボディラインにぴったりとフィットする軽装のインナー。その上から、銀の刺繍が施された漆黒のフード付きローブを羽織っている。胸元は適度に引き締まり、動きやすさは抜群だ。それでいて、ローライズのボトムスからは白い太ももが大胆に露出しており、自分で言うのも何だが、ひどく扇情的(せんじょうてき)だった。


「う、露出度高すぎないか……? いや、アサシンウェアだと思えば普通、か?」


 そわそわしながら、腰のベルトに『ミゼリコルディア』を装着する。

 これで準備は整った。


「さて、レベルも上がったことだし、ここから脱出するルートを探さないと」


 私は『迷宮の寵愛』を頼りに、奈落のさらに奥へと続く隠し通路へと足を踏み入れた。

 目指すは地上。しかし、ただ帰るわけじゃない。私を裏切った『烈火の牙』の連中に、極上の恐怖を味わわせてやるための力を、ここで完全にものにする。


 ――数時間後。

 私は【黒鉄の奈落】第25層、通称『飢餓の回廊』を静かに進んでいた。

 本来、Dランクの斥候が一人で歩いていい場所ではない。周囲には、人間を一口で噛み砕く『シャドウ・ウルフ』の群れや、音もなく天井から這い寄る『ブレード・スパイダー』がひしめき合っている。

 だが、今の私は彼らにとって「存在しない」も同然だった。

『深淵の聖衣』の隠密効果と、元斥候としての歩法。そして、新しく手に入れた魔力の制御。

 足音は一切しない。気配も、呼吸の音すらも、周囲の闇に完全に溶け込んでいる。


「グルル……」


 前方に、体長3メートルを超える『シャドウ・ウルフ・リーダー』を発見した。Cランクの冒険者が数人がかりで挑む強敵だ。

 以前の私なら、見つからないように祈りながら遠回りするしかなかった相手。


(でも、今の私なら――)


 私はフードの奥で、静かに翡翠色の瞳を光らせた。

 心の中に、冷徹な男としての計算と、どこか残酷な愉悦を感じる女としての感性が混ざり合う。

「死ね」と、声に出さずに唇を動かした。

 ト、と音もなく地面を蹴り、ウルフの死角へと回り込む。

 ウルフは完全に私の接近に気づいていない。

 腰から『ミゼリコルディア』を抜き放ち、逆手に持ち替える。

 その刃に、私はあえて『神聖魔導』の魔力を乗せた。


(光を、闇で包む――)


 ただの聖属性魔法なら、派手な光で周囲の魔物を引き寄せてしまう。だから私は、聖女の魔力を極限まで圧縮し、短剣の刃の表面わずか数ミリの領域に押し留めた。

 眩い光は一切漏れない。しかし、刃は超高温のレーザーメスのように、凄まじい破壊力を秘めて白く明滅している。


「『聖痕刺突(ホーリー・スタブ)』」


 ウルフの項(うなじ)に向けて、無音の突きを放つ。

 サクッ、と。

 まるで豆腐に熱いナイフを突き立てるかのような、手応えのない感触。

『ミゼリコルディア』の不意打ち5倍ダメージと、極限まで圧縮された聖属性魔力が、ウルフの肉体を内側からドロドロに融解させた。


「ガ、……ッ?」


 悲鳴を上げる暇さえ与えない。

 ウルフ・リーダーは、自分が攻撃されたことすら理解できないまま、光の粒子となって消滅した。

 その場に残されたのは、綺麗な魔石だけだ。


「……すごい。派手な魔法を使わなくても、これなら確実に、静かに仕留められる」


 自分の生み出した戦闘スタイルに、ゾクゾクとした高揚感が背筋を駆け抜ける。

 聖女の超魔力と、斥候の隠密技術の融合。

 これぞ、誰にも真似できない私だけの力――『暗殺聖女』だ。


【ピコン――独自の戦闘スタイルを確立しました。スキル『隠密魔導』を習得しました】

【レベルが上昇しました。レベル15→22】


「ふふ、あはは……!」


 思わず、可憐な笑い声が口から漏れた。

 かつて無能と蔑まれ、奴隷のように扱われていた男が、今や迷宮の生態系の頂点に立とうとしている。その事実が、たまらなく心地よかった。


「あ、いけない。また女の子みたいな笑い方しちゃった」


 慌てて口元を押さえるが、心の中に湧き上がる万能感は抑えきれない。

 身体が女になったことで、感情の起伏が以前よりも少し激しくなっている気がする。男だった頃の、どこか冷めた現実主義的な部分と、新しく芽生えた、少し感傷的で、それでいて残忍な女の部分が、私の中で不思議なマーブル模様を描いていた。


「……ま、悪くない。この身体も、この力も、全部使ってやる」


 私はドロップした魔石を拾い上げると、再び闇へと溶け込んだ。

 地上へ続く階段は、もうすぐそこだ。

 待っていろ、『烈火の牙』。お前たちが持ち帰った「偽りの栄光」を、私のこの手で、最悪の絶望へと変えてやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。