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AIで書いた小説  作者: 斉藤一


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六話目

 運営からの警告文──『同一の手段は二度と通用しません』──は、一樹たちのスマートフォンにいつまでも冷酷に表示されていた。

 郊外の廃工場跡地。朝の冷たい風が、鉄骨の隙間を吹き抜けていく。気絶していたタカシとミサキがようやく目を覚まし、自分たちが生き延びたこと、そして何より、あの最強のプレイヤーであるレイが「仲間」としてそこに立っていることに驚愕していた。


「嘘だろ……あの女、本当に俺たちの仲間になるのかよ」


 タカシがまだ身体能力強化の余韻が残る手を握り締めながら、信じられないといった様子で呟く。


「ええ、そうよ。文句でもある?」


 レイはスマートフォンの画面から目を離さずに、冷淡に言い放った。


「勘違いしないで。私はあなたたちと仲良しごっこをするつもりはないわ。カズキがシステムの脆弱性(バグ)を見抜く目を持っているから、その利用価値を買っただけ。この狂ったゲームのサーバーを物理的に突き止めて破壊する。その目的のために、あなたたちの力が必要なの」


 彼女の言葉は相変わらず辛辣だったが、一樹には分かっていた。彼女の冷徹さの裏には、最初のステージでシステムに消去されたという妹への、引き裂かれそうなほどの喪失感と復讐心が隠されている。


「目的は一致している」


 一樹は二人の肩をそっと叩き、レイに向き直った。


「次のマッチングまで、あと23時間。運営は僕たちのクラッシュ戦術に対策(パッチ)を打ってきた。次はもっと過激で、逃げ道のないルールを提示してくるはずだ。この猶予時間を使って、徹底的に『準備』をしよう」


 ミサキが制服の袖をぎゅっと握りしめながら、一樹を見上げた。


「カズキさん……私、何をすればいいですか? もう、誰かが目の前で消えるのは見たくないです……」


「ミサキの【危険察知】はさっきの戦いでも僕たちを救ってくれた。次はもっと精度を上げるために、スキルを強化しよう。それと、現実世界での活動拠点と、物資の調達が必要だ」


 一樹たちは、レイが手配した臨時のセーフハウスへと移動することになった。

 それは、街の中心部から少し離れた、一見すると何の変哲もない古びたワンルームマンションの一室だった。レイがこれまでのデスゲームで得た生存ポイント(SP)を使い、ショップ機能経由で「現実世界のダミー名義」として借り上げた、運営の検閲をかいくぐるための隠れ家(セーフハウス)だ。


 マンションの室内には、必要最低限の家具と、数台のノートパソコンが置かれていた。

 カーテンを閉め切り、薄暗い照明の中で、四人は再びスマートフォンをテーブルに並べた。


「現在の私たちの戦力を確認するわよ」


 レイが画面を操作し、全員のステータスを同期させた。

【カズキ】ランク:E / 440 SP

【タカシ】ランク:F / 200 SP

【ミサキ】ランク:F / 450 SP

【レイ】ランク:D / 3500 SP


 前回のクエストが「不成立」となったため、一樹たち三人にはポイントの追加はなかった。しかし、レイの保有する3500 SPという数字は、圧倒的な存在感を放っていた。


「私のポイントの一部を、あなたたちに再度分配(シェア)するわ。手数料で10%引かれるのは癪だけど、次のステージが『純粋な戦力』を要求してきた場合、ランクFのままじゃ足手まといにしかならないからね」


 レイは冷酷に言いながらも、タカシとミサキにそれぞれ1000 SPずつを転送した。手数料を含め、彼女の口座から2200 SPが差し引かれる。


「これで全員、次のステップの装備とスキルを整えなさい」


 ポイントを受け取ったタカシの目が、ギラリと輝いた。


「へっ、ありがたく使わせてもらうぜ、お姉さん! 俺はもっとスピードとパワーが欲しい。前回の戦いで、アイツのナイフがギリギリ見えたんだ。なら、もっと速くなれば、俺がアイツを圧倒できる!」


 タカシはショップ画面から【身体能力強化(中級):800 SP】を選択し、アップデートを実行した。

 彼の身体を激しい電光のようなノイズが駆け抜ける。タカシの筋肉が不自然に膨らみ、骨格がきしむ音が室内に響いた。彼は苦痛に歯を食いしばったが、数秒後、その瞳には肉食獣のような鋭い光が宿っていた。

 さらに残りのポイントで、ショップに新しくラインナップされた『高周波振動タクティカルバット(400 SP)』を購入。空間が歪み、漆黒の金属製のバットが現れる。スイッチを入れると、超微細な振動があらゆる物質を容易く打ち砕く、一級品の近接兵器だった。


「ミサキ、君は索敵の要だ」


 一樹の言葉に、ミサキは深く頷いた。

 彼女は手に入れたポイントで【危険察知(中級):600 SP】へ昇格させ、さらに周囲のプレイヤーのバイタルや大まかな位置をスマートフォンのマップ上に可視化する【動体レーダー(初級):500 SP】を取得した。

 ミサキの目が、一瞬だけ青く発光する。


「……すごい。壁の向こうを歩いているマンションの住人の心音が、光の粒になって頭の中に浮かんできます……」


 彼女の能力は、チームの「目」として完全に覚醒しつつあった。


 一樹は、自身の残高440 SPを見つめていた。

 レイから「あなたも使いなさい」と500 SPが転送され、一樹のポイントは940 SPとなった。

 彼は攻撃能力をさらに高めるか、あるいは防御を固めるかで迷った。しかし、前回のクラッシュの瞬間に感じた、システムそのものの「悪意」が頭から離れなかった。あのシステムは、プレイヤーの心理を弄び、裏切りを誘発するように設計されている。


(必要なのは、どんな状況でも騙されない『眼』と、敵の能力を無効化する手段だ……)


 一樹はショップの深い階層を探り、一つの特殊なスキルを見つけた。


【解析の眼(初級)】:600 SP。


 接触したオブジェクトや、敵プレイヤーが発動しているスキルの「属性や弱点」を、スマートフォンの画面越しに限定的に視認できる。


「これだ……」


 一樹は【解析の眼】を購入。さらに、残りのポイントで自身の【精神耐性】をさらに強固にするため、一時的にあらゆる精神干渉や恐怖を無効化する消費型アイテム『マインド・スタビライザー(200 SP)』を2本購入した。


 これで、チームの役割は完全に固定された。

• 前衛・重火力:タカシ(圧倒的なパワーと近接打撃)

• 前衛・遊撃:レイ(神速のナイフ捌きと戦術指揮)

• 中衛・解析:一樹(システムのバグ発見と戦況分析)

• 後衛・索敵:ミサキ(レーダーによる危険予測と医療)


 準備を終えた頃には、外はすっかり暗くなっていた。

 明日の今頃には、また誰かの命を奪わなければならないかもしれないゲームが始まる。四人は狭い部屋の中で、それぞれの武器を磨き、あるいは静かに目を閉じて精神を研ぎ澄ましていた。

 一樹は窓の隙間から、夜の街を見つめていた。

 一千万人以上が登録しているはずのデスゲーム。この街のどこかで、今も怯え、あるいは狂気に駆られてナイフを研いでいるプレイヤーが数え切れないほどいるのだろう。


「カズキ」


 背後から、レイが静かに近づいてきた。彼女の手には、ハッキング用のコードが表示されたスマートフォンが握られている。


「次のステージの予測コードを走らせてみたわ。……確定ではないけれど、キーワードがいくつか抽出できた」


「キーワード?」


「──『信頼』『裏切り』『天秤』。どうやら運営は、私たちが前回見せた『強固な協力体制』を、一番最悪な形で粉砕するつもりのようね」


 レイの言葉は、これから始まる第四のゲームが、肉体的な強さだけでは決して突破できない、精神の拠り所を破壊する「心理戦」であることを予感させた。


 ついに、運命のカウントダウンが終わりを迎える。

『次のクエスト開始まで:00:00:03』

『00:00:02』

『00:00:01』

『00:00:00』

 ピコン──。


 セーフハウスの狭い空間が、一瞬にして激しい紫色の光に飲み込まれた。

 今回は、お互いの手を繋いではいない。それぞれが強化された能力と、購入した武器をしっかりと握り締め、胸を張って転送の波へと飛び込んでいった。

 強烈な目眩の後に、一樹が着地したのは──どこまでも続く、真っ白な大理石の床の上だった。

 壁も天井もなく、ただどこまでも広がる白い空間。その中央に、巨大な「天秤」の形をした、黄金に輝く電子オブジェクトが鎮座していた。

 そして、一樹の周囲には、タカシ、ミサキ、レイの三人が確かに揃っていた。


「全員、いるな!?」


 一樹が叫ぶ。


「ああ、バッチリだぜ!」


 タカシが振動バットを構える。

 しかし、彼らの生還の喜びを打ち消すように、空間の四方から、見覚えのある別の「光の粒子」が集まり始めた。

 転送されてきたのは、一樹たちだけではなかった。彼らとは別のエリアを生き残ってきたであろう、見知らぬプレイヤーたちが次々と姿を現す。

 その数、総勢十二名。

 ピコン。


 すべてのスマートフォンが、これまでで最も禍々しい重低音の警告音を鳴り響かせた。


『フォース・クエスト:【裏切りの対価(ライアーズ・スケール)】を開始します』

『ルール:これより皆様には、4人ずつの「3つのチーム」に分かれていただきます』

『目の前にある【天秤】は、各チームの「総生存ポイント(SP)」および「裏切り度」を測定します。10分ごとに投票を行い、最も『価値が低い』と判定されたチームのメンバーから、1名ずつを【バグ消去】します』


 画面に表示されたルールを読んだ瞬間、一樹の全細胞が危険信号を発した。

 さらに、画面には最悪の追加条件がポップアップする。


『ただし、チームの編成はシステムによって「ランダム」にシャッフルされます。既存の信頼関係は、このステージでは一切考慮されません』


「な……ッ!?」


 一樹が声を上げるよりも早く、四人の足元の床が激しく発光した。

 一樹、レイ、タカシ、ミサキの身体が、不可視の力によって別々の方向へと強制的に引き離されていく。


『チーム編成、確定』

『プレイヤー:カズキは【チームB】に配属されました。同じチームのメンバーを確認してください』


 一樹の目の前に並んだのは、彼が全く知らない、目つきの鋭い三人の見知らぬプレイヤーたちだった。

 そして、遠く離れた【チームA】にはレイとミサキが、【チームC】にはタカシが、それぞれ完全に孤立した状態で配置されていた。

 絆を引き裂かれた四人の、本当の地獄が今、始まった。

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