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AIで書いた小説  作者: 斉藤一


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二話目

 コボルト3匹を相手にした乱戦を、アイアンスライムへと進化したポチは圧倒的な硬度と【不意打ち】のスキルで見事に制した。


 その劇的な勝利からわずか数週間。カナタ・エルフレアの運営するダンジョン配信チャンネル『万魔の調技場チャンネル』は、ネット上で爆発的な話題を呼んでいた。


「よし、ポチ。今日の基礎トレーニングはここまでだ」


「プルン!」


 現在のポチは、度重なるバトルを経て、すでにDランク上位の『ヘビィ・アイアンスライム』へと進化を遂げていた。サイズは軽自動車ほどもあり、その体躯は美しい黒曜石のような輝きを放っている。

 カナタが声をかけると、巨体に似合わず嬉しそうにプルプルと身を震わせた。

 カナタの配信スタイルは、ただモンスターを戦わせるだけではない。モンスターの長所を見抜き、的確な指示を出す「トレーナー」としての手腕。そして何より、モンスターたちが戦いを通じて絆を深め、限界を超えて進化していく「ドラマ性」が、多くのリスナーの心を掴んでいた。

 現在のチャンネル登録者数は、ド底辺だった3桁から、なんと一気に8万人を突破。同接数も常に5千人を超える、中堅上位の配信者へと駆け上がっていた。


「マスター、そろそろ軍資金も溜まってきましたし、ダンジョンの階層を拡張して『第二の看板』を探すべきではありませんか? スライム一筋もニッチで良いですが、そろそろ配信の絵面(えづら)に新しい刺激が欲しいとリスナーたちも騒いでいますわ!」


 ナビゲーターのルリが、宙に浮かぶタブレット端末の画面をタップしながら提案する。画面には、新しいモンスターの召喚可能なリストがずらりと並んでいた。


「そうだね。ポチも強くなりすぎて、同ランクの相手じゃ物足りなくなってきたし……よし、思い切って『獣系』のフロアを解放しよう」


 カナタは配信のカメラを起動した。一瞬にして画面に数千人のリスナーが流れ込み、コメント欄が超高速でスクロールを始める。


『きたあああああ! 待ってたぞカナタ!』

『今日のポチも黒光りしてて最高だな』

『おい、タイトルに【新モンスター召喚&初陣】ってあるぞ!?』

『マジ!? ついにポチ以外のモンスターが見られるのか!』

『どんなやつだろ。またスライム系か?』


「皆さんこんばんは、カナタです! いつも応援ありがとうございます。今日はタイトル通り、我がダンジョンに新たな仲間を迎え入れようと思います。ポチに続く、第二の看板モンスターです!」


 カナタが【万魔の調教盤】を操作し、なけなしのダンジョンポイントを消費して新フロア『孤狼の檻』をアクティベートする。

 中央の巨大な魔法陣が青白い炎を上げ、そこから一匹のモンスターが姿を現した。それは、美しい銀色の毛並みを持った、一匹の狼だった。

 名前は――シルバーウルフ。ランクはD。

 しかし、その目は死んだように濁っており、体中に無数の傷跡が刻まれていた。


『うおお、正統派にカッコいいウルフ系だ!』

『でも、なんか元気なくない?』

『あー、これ野生で群れから追い出された「はぐれ狼」の個体データだな』

『ダンジョン召喚って、たまにこういうワケありのハズレ個体が混ざるんだよな……』


 リスナーの指摘通りだった。召喚されたシルバーウルフは、カナタを一瞥したものの、フンと鼻を鳴らして闘技場の隅に寝そべってしまった。完全に心を閉ざし、戦う意欲を失っている。


「……ルリ、この子のステータスは?」


【ええと、個体名は『ハヤテ』。元は群れのボスだったようですが、より強大な魔獣に敗れて群れを追われ、プライドを粉砕されたようですね。戦う意志が全く感じられませんわ。ポイントの無駄でしたね、ハズレですわ】


 辛辣なルリの言葉に、ウルフ――ハヤテはピクリと耳を動かしたが、悲しげに目を伏せるだけだった。


『ハズレかー、かわいそうに』

『プライド折れた獣はもう戦えないよ。処分してポイントに戻した方がいい』

『配信的にも、動かないモンスター映しててもつまらんしな』


 コメント欄にも諦めのムードが漂う。

 だが、カナタは違った。彼はハヤテの前に歩み寄り、その前に膝をついた。


「ハヤテ。お前、このまま終わりたいのか?」


 ハヤテが薄く目を開け、カナタを睨みつける。グルル、と小さな威嚇の唸り声。


「一度負けたからって、すべてを諦めて檻の隅で腐っていくのか? だったら、お前を倒したあの魔獣は、一生お前より上のままだ。……悔しくないのかよ!」


 カナタの熱い声が、静かな地下室に響く。ハヤテの濁った瞳の奥に、小さな、しかし激しい怒りの炎が灯るのをカナタは見逃さなかった。


「僕も同じだった。才能がないって笑われて、底辺で燻ってた。でも、ここで諦めたら本当に終わりなんだ。お前のプライド、もう一度ここで、僕と一緒に戦って、進化して、取り戻してみせないか?」


 ハヤテがゆっくりと立ち上がった。その四肢はまだ震えていたが、鋭い眼光がカナタを、そして闘技場の対面にいるポチを見据えた。


『おお……? ウルフが立ったぞ?』

『カナタ、お前引きこもりのくせに熱血主人公みたいなこと言うじゃん』

『ちょっと感動した。がんばれウルフ!』

『でも、戦う意志が戻っても、中身はただのDランクだぞ?』


「ルリ、ハヤテの『再生の初陣』だ。対戦相手を召喚してくれ。……ハヤテを絶望に叩き落とした因縁の相手、Cランクモンスター『シャドウベア』のダミースペックを!」


【ええっ!? 復帰戦でいきなり格上のCランク、しかもトラウマの相手ですか!? 狂ってますわマスター!】


『正気か!?』

『鬼畜トレーナーすぎワロタwwww』

『せめてリハビリから始めろよww死ぬぞウルフ!』


 激しく流れるコメント欄を無視し、カナタはハヤテの目を見た。


「ハヤテ、お前を縛る鎖を、今ここで噛み千切れ!」


 ガァァァァン!! と重々しい鉄格子が開き、闇の中から漆黒の巨躯を持つ大熊、シャドウベアが現れた。その鋭い爪は岩をも引き裂く。

 ハヤテにかつて敗北の恐怖を植え付けた、圧倒的な捕食者だ。

 シャドウベアが咆哮を上げた瞬間、ハヤテの体が恐怖で一瞬、硬直した。


「ハヤテ、怖気付くな! お前は一人じゃない、僕の指示を聞け!」


 カナタの【万魔の調教盤】が輝く。ハヤテの視界に、シャドウベアの攻撃予測ラインが赤い光となって表示された。


「左へ跳べ!」


 ハヤテは本能的にカナタの指示に従い、左へ跳躍した。直後、ハヤテがいた地面を、シャドウベアの巨大な爪が爆音と共に粉砕する。


『避けた!?』

『すげえ反応速度!』

『でも、避けてるだけじゃ勝てないぞ! 攻撃が通るのか!?』


「ハヤテ、奴の巨体は旋回性能が低い! 影に潜む隙を与えず、右後ろ足の腱を狙え! スキル【神速・微】を発動!」


 ハヤテの銀色の毛並みが、一瞬だけ電撃を帯びたように輝いた。これこそが、カナタが調教盤を通じて一時的に付与したブーストスキルだ。ハヤテは目にも留まらぬ速度でシャドウベアの背後に回り込み、その鋭い牙で右後ろ足の関節を深く噛みちぎった。

 グガァァァッ!? とシャドウベアが悲鳴を上げ、バランスを崩して膝をつく。


『入ったアアアアア!!』

『ウルフすげえええええ!!』

『カナタのバフと指示が神がかってる!!』

『これ、マジで格上食いあるぞ!!』


 コメント欄の熱狂は最高潮に達していた。同接数はついに1万人を突破。しかし、Cランクの魔獣は伊達ではなかった。シャドウベアは痛みに激昂し、周囲の影を鋭い棘に変えて全方位に放つ固有魔法【影棘(シャドウスパイク)】を発動したのだ。

 逃げ場のない闘技場。空中へと回避したハヤテの体に、影の棘が突き刺さる。


「ハヤテ!!」


 ドサリ、と地面に叩きつけられ、鮮血を流すハヤテ。シャドウベアがトドメを刺さんと、傷ついた足を引きずりながら、巨大な顎を開いて迫ってくる。


『あああ、ここまでか……』

『やっぱり格上は無理だったんだ』

『ハヤテ、逃げてくれ……!』


 万事休す。誰もがそう思ったその時、闘技場の外から重低音の地響きが鳴り響いた。


 ドゴォォォン!!


「プルルルルルッ!!」


 ハヤテの前に立ちはだかったのは、待機していたポチだった。ポチは【ヘビィ・アイアンスライム】の巨体をさらに硬質化させ、シャドウベアの放った追撃の爪をガキィィン!と火花を散らして完璧に弾き返したのだ。


『ポチキタアアアアアアア!!』

『相棒のピンチに駆けつけるスライム、熱すぎるだろ!!』

『泣いた。これがモンスターたちの絆かよ……!』


「ハヤテ、聞こえるか! ポチがお前の盾になる! だから、お前のその牙で、過去の絶望を噛み砕け!!」


 カナタの咆哮。ポチの背後で、血を流しながらも、ハヤテは三度(みたび)立ち上がった。その瞳から濁りは完全に消え去り、底知れぬ野生の王のプライドが、青い炎となって全身から噴き出していた。

 ハヤテはポチの体を踏み台にして、高く、高く跳躍した。シャドウベアの頭上。満月の輝きを模したような美しい銀色の軌跡を描きながら、ハヤテは全魔力をその牙に込める。


「いけぇぇぇ、ハヤテ! 【絶咬(ぜっこう)】!!」


 ドシュッ!!!


 ハヤテの牙が、シャドウベアの首元へと深く突き刺さり、そのまま一気に駆け抜けた。

 一瞬の静寂の後、シャドウベアの巨大な首が斜めにズレ、光の粒子となって霧散した。


 ――告知:『ハヤテ』が勝利しました。経験値を完全吸収します

 ――――固有スキル【影潜み】を奪取しました

 ――――限界突破:ハヤテが『シャドウ・シルバーウルフ』へと進化します

 ――着地したハヤテの毛並みが、銀色の中に美しい漆黒の文様を交えたグラデーションへと変化していく。


 その姿は、気高く、圧倒的に美しかった。ハヤテは天を仰ぎ、勝利の遠吠えを轟かせた。


「ワオォォォォォォォン!!」


『うおおおおおおおおお!!!』

『進化したあああ!!【シャドウ・シルバーウルフ】って、新種じゃねえか!?』

『鳥肌たった、マジで神回すぎる』

『ポチとの連携も最高だった。最高のコンビ誕生じゃん!!』

『投げ銭(スパチャ)失礼します! カナタ、お前は天才だ!!』


 画面全体を埋め尽くす赤や黄色のスパチャ(投げ銭)の嵐。同接数は驚異の2万5千人に達し、トレンドワードには「#万魔の調技場」「#ハヤテ復活」が急上昇していた。

 ハヤテはゆっくりとカナタの元へ歩み寄ると、その大きな頭を、カナタの胸元へ優しく擦り付けた。


「よく頑張ったな、ハヤテ。……これからよろしく」


 カナタがその銀髪を撫でると、ハヤテは満足そうに目を細めた。


【や、やりましたわマスター! 瞬間最高収益が過去最高を記録しました! これでダンジョンの大改装も、さらなる高ランクモンスターの召喚も思いのままですわ!】


 ルリが狂喜乱舞しながら飛び回る。

 最高の盾(ポチ)と、最強の矛(ハヤテ)。二匹の看板モンスターを手に入れたカナタのダンジョン配信は、ここからさらに、世界の常識をひっくり返す大渦へと発展していくのだった。

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