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AIで書いた小説  作者: 斉藤一


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13/67

第六話

syslog[SYSTEM NOTIFICATION]---------------------------------------------------

・現在の世界ステータス: 安定(エラー発生率: 0.00%)

・アクティブ・タスク: なし(完全なる平和)

・ディルクおよびエルの状態: 【リラックス】【有給休暇消化中】


世界の大規模リファクタリング計画が完了してから数ヶ月。かつて人々を縛り付けていた、網膜に浮かぶ冷酷な『構造定義情報(ステータス・ウィンドウ)』は完全に姿を消した。

今のグラノス世界は、走れば走るほど足が速くなり、学べば学ぶほど知識が増える、努力がそのまま成果になる『当たり前の世界』へと再構成されている。


「――というわけで、デウス。俺たちは今日から一週間の『有給休暇』に入る。サーバーの監視(見守り)は任せたぞ」


聖天宮のマスターコンソールの前で、ディルクは動きやすいリゾート風のシャツに身を包み、元・神のデウスにそう告げた。デウスは相変わらず目の下に隈を作っていたが、以前のような過労死寸前の青白さはなく、どこか生き生きとした表情で光のキーボードを叩いている。


「了解だよ、ディルク。世界全体の自動デバッグ・スクリプト(エルのバグ取りプログラム)が優秀すぎるから、今の僕はただ座って、たまに上がってくるログを眺めるだけでいいんだ。200年ぶりのホワイト職場だよ……。二人とも、思いっきりバケーションを楽しんできてね!」


「ああ、頼んだ」


ディルクが隣に視線を向けると、そこにはいつもと違う装いのエルがいた。世界のソースコードで編まれていたノイズまみれの衣服は消え、今はお店で買った仕立ての良い白いワンピースと大きな麦わら帽子を身につけている。

身体の半分を侵食していた紫色のキューブノイズも完全にクリーンアップされ、今はただの、透き通るように美しい銀髪の少女だった。


「ディルク、エクスポート(出発)の準備はいつでも完了しています」


エルは、感情が希薄だった頃からは想像もつかないほど、柔らかく微笑んだ。


「よし、行こうか。今回は『保守点検』という名目の、ただの旅行だからな。前世の俺が一度も行けなかった、本物のリゾートだ」


二人は聖天宮の転送ゲートをくぐり、下界へと向かった。二人がやってきたのは、神聖国の遥か南方に位置する、常夏の島『サザン・アーカイブ』。どこまでも続くエメラルドグリーンの海と、真っ白な砂浜が広がる、世界最高峰の保養地だ。

前世では40時間連続勤務の末にオフィスで倒れ、海といえばディスプレイの背景画像(デフォルトの壁紙)でしか見たことがなかったディルクにとって、肌を焦がす本物の太陽と、潮の香りは新鮮そのものだった。


「……これが海か。解像度が無限大だな」


ディルクが砂浜に腰を下ろすと、エルがその隣にトコトコと歩み寄り、不思議そうに波打ち際を見つめた。


「はい。物理演算エンジンが非常に滑らかに動作しています。水の粘性(流体シミュレーション)のバリュー設定が完璧です」


「エル、今はリファクタリングのことは忘れて、ただの『綺麗な海』として楽しむんだよ」


ディルクが苦笑しながら言うと、エルは「そうでした」と少し頬を染めて、麦わら帽子を押さえた。


「では、ディルク。私も『プライベート・モード』に移行します。……まずは、この『冷たい甘味オブジェクト(アイスクリーム)』を解析……いえ、実食してみたいです」


エルが指差したのは、砂浜の露店で売られている、色鮮やかなフルーツのアイスだった。ディルクは笑って、二つのアイスを購入した。エルに手渡すと、彼女は小さな口をパカッと開けて、おそるおそるアイスの先端をペロリとなめた。その瞬間、エルの瞳がパッと輝いた。


「――! ディルク、これは非常に高度な味覚データです。糖度と酸度の比率が、私の内部データベースの予測値を大きく上回っています。美味しい、です」


「そうか。お前がただの『バグデータ』として消されずに、こうして美味いものを美味いと感じてくれるだけで、俺がこの世界をデバッグした甲斐があったよ」


ディルクがそう言ってエルの銀髪を優しく撫でると、エルは嬉しそうに目を細め、アイスを大事そうに食べ進めた。

昼下がり、二人は砂浜にパラソルを立ててのんびりと寝そべっていた。ディルクは冷たい果実水を飲みながら、本当に何もしない贅沢を噛み締めていた。前世の社畜時代なら、10分に一度はスマホの通知を気にして震えていたはずだが、今の端末にはシステム障害(バグ)の通知は一切来ない。


「平和だな……」


「はい、ディルク。世界のCPU負荷は現在0.05%以下です。皆、自分の意志で、自分の人生を楽しんでいます」


エルの膝の上に頭を預け、ディルクは静かに目を閉じた。波の音が、心地よいBGMのように耳の奥に響く。かつて『無能』と蔑まれ、世界から弾き出されたディルク・アシェル。そして『不具合』として、世界から消去されかけていたエラーコード・ゼロ――エル。二人の出会いは世界の『致命的なエラー』だったかもしれない。

だが、そのエラーを自分たちの手で書き換えたからこそ、この最高にクリーンで、最高にほのぼのとした今日(ログ)へと辿り着いたのだ。


「ディルク、寝てしまいましたか?」


エルの、どこか愛おしそうな声が聞こえる。


「いや、起きてるよ。……少し、前世の夢を思い出していただけさ」


「前世の、デスマーチですか?」


「ああ。だけど、もうあのオフィスには戻らない。俺の新しいホーム(世界)は、ここだからな」


ディルクが目を開けると、すぐ目の前に、世界で一番美しいエルの笑顔があった。彼女はそっと手を伸ばし、ディルクの手指と自分の指を、しっかりと、エラーの起きない完璧な排他制御(ロック)で結びつけた。


「はい。これからもずっと、私をあなたの隣のメモリ(場所)に置いておいてくださいね、ディルク」


「ああ、永久に常駐(タスクマネージャーに登録)させてやるよ」


元・過労死エンジニアの、世界で一番甘くてのんびりとしたデバッグライフ(有給休暇)。二人の刻む新しい人生のソースコードは、これからもバグ一つなく、幸せな文字列をどこまでも紡ぎ続けていくのだった。

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