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AIで書いた小説  作者: 斉藤一


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11/70

第四話

syslog[SYSTEM NOTIFICATION]---------------------------------------------------

・新プロジェクト: 『グラノス世界・大規模リファクタリング計画』を開始します。

・共同開発者(デバッガー): ディルク・アシェル、エル

・監修(元・神): デウス

・警告: サーバーの最深部、ソースコードの最下層(レガシー領域)を開放中……


聖天宮のマスタールーム。かつて神と呼ばれた青年・デウスは、ディルクから手渡された最高級の回復ポーション(デウス曰く『強壮エナジードリンク』)を飲み干し、青白い顔で光のキーボードを叩いていた。その隣では、エルが膨大な世界のログファイル(ジャーナルダンプ)を驚異的な速度で仕分けしている。


「おい、神様。この『神聖騎士団の特権クラス』のコード、何だこれは。平民のアカウントからSTRを強制吸い上げする処理の排他制御がガタガタじゃないか」


ディルクが画面を指差すと、デウスは頭を抱えた。


「いや、それは僕が書いたコードじゃないんだよ! 500年前に当時の教皇が『世界書換(リライト)』の最高位権限を使って勝手にねじ込んだパッチ(魔改造)さ! 消すと他の依存関係(神聖魔法の基盤)が全崩壊するから、怖くて触れなかったんだよ!」


「仕様書も残ってないレガシーコードか、最悪だな。エル、この教皇のゴミパッチを丸ごと非推奨(デプレケイト)に指定して一斉消去(ガーベージコレクション)の対象に叩き込め」


「了解です、ディルク。教皇および聖騎士クラスの権限トークンを無効化(Revoke)しました。彼らは次の瞬間から、ただの『STR 10』の平民に戻ります」


エルの瞳が冷ややかに青く明滅する。世界を数値で支配していた聖騎士団は、戦うまでもなく、彼らが拠って立つシステムそのものを消去されることで、静かにその栄華を終えようとしていた。

リファクタリングは順調だった。世界の余計な負荷(バグコード)が削ぎ落とされるたび、サーバーの応答速度が向上し、世界のあちこちで発生していた空間の歪みが綺麗に塞がれていく。だが、システムのクリーンアップ率が『84%』に達したその時、マスタールーム全体に、これまでにない真っ赤な緊急アラートが鳴り響いた。


syslog[CRITICAL BUG DETECTED]-------------------------------------------------

・エラー: 不要データ一括削除(クリーンアップ)中に、重大な競合(コンフリクト)が発生。

・対象: レガシー領域 ──> アドレス [0x00000000](原初のメモリ)

・ステータス: 長期休止(スリープ)状態のオブジェクトが、強制解放を拒絶。

・警告: 当該オブジェクトの自己防衛シーケンスが起動しました。


「な、何だ!? 警告音のピッチが早すぎる……!」


デウスが血相を変えてコンソールを覗き込んだ。その画面には、文字化けすらしていない、どす黒い反転した文字列が浮かび上がっていた。


「嘘だろ……。システムが、千年前の『最初のバグ』を掘り起こしちゃったんだ……!」


「最初のバグ?」


ディルクが鋭い視線を向ける。


「この世界を構築した初期(ベータ版)の頃、世界の負のデータ(破棄されたエラーログ)が一箇所に集積して、意思を持ってしまったバグの塊さ。当時の僕は消去できなくて、最下層のメモリに無理やり閉じ込めて、上から幾重ものプロテクト(封印)をかけて隠蔽していたんだ。いわば――『魔王オブジェクト』だ!」


ズズズ、と聖天宮の床、いや、空間そのものが底から歪み始めた。光の幾何学模様だった電子の摩天楼が、ドロドロとした黒いタールのような『破損データ』に侵食されていく。その黒いノイズの深淵から、巨大な禍々しい影が姿を現した。

エルの『ソース・デバッガー』が、その化け物の構造定義を無理やり剥き出しにする。だが、その画面を見たディルクの目が細められた。


【オブジェクト名】魔王・アンラマンユ (Demon_King_Proto_01)

【システム認証】世界最古の構造欠陥 / 概念バグ (Concept_Glitch)

------------------------------------------------------------------------

[基本ステータス]

・Level : ERROR (計算不能) ・Current_HP : -1 / -1

・Current_MP : INF / INF (無限) ・Current_SP : 0 / 0


[物理・魔導演算パラメータ]

・STR: INF(無限大) ・VIT: INF(無限大)

・AGI: INF(無限大) ・DEX: INF(無限大)

・INT: INF(無限大) ・MND: INF(無限大)


[固有パッシブ・コード]

・『無限ループ(Infinite_Loop)』:

- 効果: このオブジェクトに対するすべての物理・魔法攻撃のダメージ計算は、無限ループ処理に突入し、最終的な出力値が『INF』へと書き換えられ、攻撃者自身へと「反射」される。

- システム注釈: // 消去不能。このオブジェクトを消去しようとすると、世界サーバー自体がフリーズ(ハングアップ)します。


「すべての数値が無限大(INF)……。おまけに、攻撃すればこっちが無限ループでフリーズするってわけか」


ディルクは錆びた剣を握り直した。


「無駄だよディルク! こいつはシステムそのものの『バグ』なんだ! 数値が設定されている大天使や守護騎士とは違う! 触れたらこっちのデータまで汚染されて消滅する!」


デウスが悲鳴を上げる。黒い巨躯を持つ魔王オブジェクトが、その三つの眼を開いた。


「――我ハ、世界ノ排泄物。神が隠シ、無に帰ソウトシタ怨嗟ノコードなり。リファクタリング? クリーンアップ? 傲慢なる開発者共め、すべてを『初期化(フォーマット)』してやる」


魔王がその巨大な腕を振り上げた。その一振りに込められたSTRは『INF』。かすりでもすれば、ディルクのHP 15など、一瞬で塵だ。


「ディルク、来ます!」


エルがディルクの前に躍り出る。『例外承認』を展開し、魔王の攻撃の物理演算に干渉しようとするが――。


【エラー:対象のオブジェクト変数が『INF』のため、乗算・除算による演算干渉が無効化されました】


「くっ……! 数値が大きすぎて、グリッチが通らない!?」


エルの顔に初めて焦りの色が浮かぶ。迫り来る、無限大の質量を持った破壊の腕。デウスは頭を抱えて蹲り、エルはディルクを守るように両腕を広げた。だが、ディルクだけは、不敵に笑っていた。エンジニアとしての、そしてハッカーとしての本能が、魔王のステータスの『致命的な脆弱性』を見抜いていた。


「エル、慌てるな。アプローチを変えるぞ。魔王のパラメータが『無限大(INF)』なら、それをそのまま利用して自滅させる」


「自滅……? でも、攻撃はすべて無限ループで反射されます!」


「攻撃じゃないさ。エル、魔王の『メモリ使用量(Allocation)』の監視ポートを開け。そして、奴が『無限ループ(Infinite_Loop)』のパッチを起動した瞬間に、俺の『概念編集』で、奴の処理能力(スレッド数)を『1』に制限(スロットリング)しろ」


「え……? 処理能力を、最低値に……?」


「いいからやれ! 概念編集――実行!」


魔王の無限大の拳が、ディルクの眼前に迫る。その瞬間、魔王のパッシブスキル『無限ループ』が、ディルクの存在を検知して自動で起動した。ディルクの放った「STR 5」の微弱な殺意(攻撃)を検知し、それを無限に増幅して反射しようとする計算ルーチンが、魔王の内部で走り出す。


text[SYSTEM_GLITCH_INJECTION]

Target: Demon_King_Proto_01 (Thread_Count)

Value: 1 (CPU_Throttling_Enable)


直後、魔王オブジェクトの動きが、ピタリと止まった。


「……ガ? ギ、ギギギ……我、の……処理が……」


魔王の三つの眼が、激しいデジタルノイズで明滅し始める。『無限ループ』とは、文字通り同じ計算を終わらせずに繰り返す処理だ。通常なら神のサーバーの強大な並列処理能力(マルチスレッド)で強引に回し続けていたが、ディルクによって割り当てられたCPU(スレッド)を『1』に制限された。

たった一つの貧弱な処理能力で、無限に続く計算(ループ)を実行させられた結果、どうなるか。


「ガガガガガガガガガガガガ!!!」


魔王の巨躯から、ドロドロとした黒いタールではなく、処理が追いつかなくなったことによる『熱暴走(フリーズ・ログ)』が火花のように吹き出した。


syslog[SYSTEM WARNING]--------------------------------------------------------

・オブジェクト [Demon_King_Proto_01] 内で、深刻なリソース枯渇を検知。

・CPU使用率: 100% (シングルスレッド飽和状態)

・メモリ使用量(RAM): ──> 99.9% ──> 100% ──> 超過(OOM)

・原因: Out of Memory (メモリリークによるシステムクラッシュ)


「無限大のパラメータなんて持ってるから、計算の負荷も無限大なんだよ」


ディルクは冷徹に言い放ち、一歩、歩を進めた。


「どれだけ強いプログラムでも、処理能力(リソース)を絞られて無限ループを回されれば、必ず『メモリパンク(クラッシュ)』を引き起こす。これが、前世から決まってるエンジニアの常識だ」


「ア、ガ……我ハ……世界ノ……エラー……」


魔王オブジェクトは、ディルクに剣で斬られることもなく、自身の『無限』の重さに耐えきれなくなり、画面がフリーズしたように完全に硬直。次の瞬間、パンッというシステム効果音と共に、メモリ空間から強制終了(キル)され、跡形もなく消滅した。


syslog[SYSTEM NOTIFICATION]---------------------------------------------------

・レガシーオブジェクト [Demon_King_Proto_01] の強制終了に成功。

・メモリ領域 0x00000000 の解放(クリーンアップ)が完了しました。

・世界のシステム安定度: 100% (完全リファクタリング達成)


静寂が戻った聖天宮。魔王の消滅とともに、空間を覆っていた黒いノイズは完全に消え去り、そこにはバグ一つない、澄み切った美しい青空のような、新時代のソースコードの光が満ち溢れていた。

デウスは呆然と立ち上がり、それからディルクとエルを見て、へなへなと腰を抜かした。


「……信じられない。僕が200年間、どうしても消せなかった世界最古のバグを……たった数行の速度制限(スロットリング)でハングアップさせて消し去るなんて……。君たち、本当に人間(オブジェクト)かい?」


「さあな。だけど、これで邪魔なゴミデータ(魔王も聖騎士団も)は全部片付いた」


ディルクは、新しく生まれ変わった世界の『マスター・コンソール』の前に立った。画面に映し出されているのは、世界中の人々のステータス画面。そこにはもう、人を縛る『STR』や『VIT』といった冷酷な数値の枠組み(テンプレート)は存在していなかった。


「エル、最後の仕上げだ。世界の仕様変更(アップデート・パッチ)を発行する」


「はい、ディルク。新しい世界の定義ファイルを読み込みます」エルの指先がコンソールに触れ、新しい世界の仕様書が書き込まれていく。


【新・グラノス世界・仕様変更通知】

1. すべての個体における「ステータス数値による行動制限」を撤廃。

2. 努力、意志、選択のログを最優先の演算パラメータ(メインルーチン)に設定。

3. すべての生命オブジェクトに、自身の運命を自由に記述する権限(エディット・ロール)を付与。


「パッチ、適用(リリース)」


ディルクがエンターキーを強く叩いた。その瞬間、聖天宮から眩い光の波動が放たれ、雲を突き抜け、世界中のすべての人々へと降り注いだ。下界では、数値を奪われ絶望していた平民たちが、自分の身体に「数値以上の力」が宿るのを感じて目を見開いていた。

ステータスの天井に縛られず、走れば走るほど速くなり、学べば学ぶほど賢くなる、当たり前で、しかし最高に自由な『本物の世界』が、今ここに再構成されたのだ。


「終わりましたね、ディルク」


エルが、その透き通るような瞳に満面の笑みを浮かべて言った。


「ああ。これからは、デバッグの毎日じゃない。この綺麗な世界で、お前と、新しい人生のログを刻んでいくんだ」


ディルクはエルの手を強く握りしめた。ステータスに縛られた無能の青年と、消去されるはずだったバグの少女。二人のエラーオブジェクトが創り出した新しい世界は、もう二度と、誰の運命も数字で縛ることはない。

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