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シルベ=テルミチのチートナシ異世界ライフの物語  作者: なめなめ
第十章 転移者達
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緊急事態!

 森での逃亡生活……もとい、サバイバル生活が始まってから一ヶ月が過ぎた頃。“習うより慣れろ”とはよくいったもので、初日の猪とまではいかなくても子兎や鳥くらいなら問題なく一人で処置が出来るようになっていた。


 ちなみに今のオレは、木を削って食事に使うための(はし)作りに挑戦中だ。


「よ~し、あとはこの持ち手の長さを揃えれば……」


 もう少しで仕上がる。そう思っていたら?


「お待たせーーー! 水汲んできたわよ!」


 ネイさんが両手にバケツを抱えて戻って来る。


「お疲れ様です、お姉さん。それじゃあ隠れ家(小屋)の中に運んでおきますね」

「うん、お願いね」


 ――――その夜。小屋でオレが仕上げた箸を使って二人で晩食を取っていた時だ。


「それで、いつ頃になったら騎士団へ詫びを入れにいくんですか?」


 この先の展開を考えたく、ネイさんにこう訊ねると?


「う~ん……もう一週間くらいしたらかな?」

「一週間? それ、先週も言ってませんでしたか?」

「そ、そうだったかしら!?」


 先延ばしにしようとしてるところをみると、まだ踏ん切りがついてないらしいな。


「あの、いいですか?」

「な、何かな?」

「言わせてもらいますが、オレ達は既に一ヶ月もこんな生活を続けているんですよ? さすがに、いつまでもこのままという訳には……」

「ま、待ってよ! シルベの言いたいことはわかるけどさ、アタシにも事情というものがあって……」

「一ヶ月も人里から離れて事情もへったくれもないでしょ!」

「うっ、そ、それはそうかもだけどさぁ~」

「とにかく! 明日になったらここを出て騎士団へ詫びを入れにいく。いいですね!?」

「う、うう……わかったわよ」


 やれやれ。渋々に納得した感は否めないけど、これ以上この人にこんな生活をさせるにはいかないからな。


 ――――翌朝。朝食を片付けてから出発の準備へ取りかかろうとしてた時に事件は起きた。


「お姉さん!?」


 いきなりのことだった。ネイさんは何の前触れもなくいきなり倒れてしまったのだ!


「お姉さん、しっかりしてください! おねぇ……熱っ!」


 必死に呼びかけるも返事はなく、それどころか呼吸も荒くて熱もある!


「こ、これはまずいぞ!」


 しかし、医者に診せたくてもこんな森の中に病院なんてあるわけがない。ならばと、オレはすぐに行動へ移すことに。


「待っててください。すぐに病院へ連れていきますからね!」


 急ぎ二人分の身支度を整え、彼女を背中に担ぎ上げる。


「え~と、黒いフードのアジトから飛んで来た時は、だいたいあの方向からだったから...…」


 曖昧な記憶を頼りにするのは心ともないが、途方に暮れていてもネイさんの具合が良くはならない。よって思い切って街への帰還を決断する!


「お姉さん。必ず助けますからね!」


 彼女にそう誓うオレは、森の中を一歩一歩と進んでいく……やがて草木を掻き分き続けて一時間程度が過ぎた頃にたどり着いたのは?


「ここって、確か……」


 辺りを見回すと、そこは紛れもなくネイさんと初めて出会った川のほとりだった。


「そうだ。あの時は彼女はここで行き倒れになっていて……いや、思い出に浸っている暇はない。とにかく先を急がないと!」


 幸いにも、ここから街までの道のりは頭に入っているのでその点は何とかなる。ただ懸念されるのは“時間”だ。

 以前にここから街までの移動した際、休憩や休息を挟んで丸一日以上かかっていた。よってそのことを鑑みれば……


「っくそ! これじゃ彼女の身体への負担が大き過ぎる!」


 だが途方にくれていても仕方ない。ここは少しでも早く彼女を人里にまで運んで医者に診せるしかないのだから!


 そう決断して一歩踏み出そうとした時だ。


「導くん?」


 突如として聞き覚えがある声に反応して振り向くと、そこには……!?


「春野さん!?」


 モニカ劇団での騒動以来の再会に、オレは素直に驚いた。


「ど、どうしてキミがここに?」

「え? どうしてって……私達のアジトがこの近くにあるから、たまたま水汲みを……」

「アジト?」


 アジトって何のアジトだ? 彼女がどこかの組織に従事てるとでも……いや、それよりも今は!


「ねぇ春野のさん。そのアジトというところに医者はいるかい?」

「医者? もしかして、その人の具合が悪いの?」


 状況を察する春野さんは、オレの背中へ視線を移す。


「そうなんだ。だから頼む、医者……もしくは薬でも何でもいいからこの人を助けてくれ!オレの大事な人なんだ!!」

「大事な……人?」


 勢いに押される春野さんは少し考えてから……


「わかったわ。アジトへ案内するわ」

「あ、ありがとう!」

「だけど、その前に言っておきたいことがあるの」

「言っておきたいこと? 何だい?」

「じつは、私とアナタ達がここで出会ったのは“たまたま”じゃないの」

「え?」


 意味深なことを言われて困惑していると、彼女の背後にある茂みからはさらなる人の気配が!?


『わるいな輝道(てるみち)。オレ達はずっとお前等を見張っていたんだ』


 間違いなく聞き覚えがある声と共に現れたのは……


「父さん!?」


 まさかの連続する再会に思わず歓喜。しかし同時に、父さんが口にした『見張っていた』というセリフに対しては警戒をせずにはいられなかった。

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