再びの黒いフードへ
ネイさんを救うためには、春野さんが言っている“アジト”で治療を施してもらうしかない。だがそれを望むには、どうしても彼女に続いて登場した黒いフードである父さんの存在が気になる訳で……
「ねぇ春野さん。二つ確認したいんだけど……いいかな?」
「かまわないわよ」
「じゃあ、キミがオレの父さんと一緒なのは何故なんだ? それからアジトというのは一体?」
この質問に彼女は淡々と答える。
「そうね……まず、アナタのお父さんと私が一緒にいるのは同じ黒いフードの一員だからで、アジトというのは私達……黒いフードのアジトのことを言ってるわ」
「はぁ!?黒いフードのアジトだって!? オレ達はそこから逃げ出して来たんだぞ!!」
また状況が逆戻りするのかと、憤っていると父さんが……
「なぁ輝道。悔しい気持ちはわかるが、今はそれどころじゃないだろ?」
「そ、それは……わかってる」
冷静になって考えると、確かにこのままだとネイさんが危険なのは事実。
「あと言っておくが、香くんが言ってるアジトと、お前が脱走したアジトは別物だからな?」
「別物? アジトは複数あるってことなの?」
「そうなるな」
「じゃあ、オレとネイさんを見張っていた理由は何なのさ?」
「ああ、それはな……いや、まずは彼女を運ぶ方が先決だ。話はそれをやりながでもいいだろ?」
「あ、ああ……そうだね。わかったよ」
ということで、やむを得なく第二の黒いフードのアジトとやらへ向かうことになるのだが……?
「わるい、少し待ってくれ」
父さんは急にそう断ると、背負っているネイさんに黒い布の目隠し。その上で両手を後ろに回して親指を針金で縛る。
「ちょ、何やってんだよ!?」
慌ててやめさせようとするも、そこに春野さんが口を挟む。
「彼女なら大丈夫よ導くん。アジトの場所を知られないために視界を塞ぐだけだから」
「知られないっためにって……彼女と黒いフードは仲間同士だろ?」
「仲間? バカを言わないでよ!」
何だ、今の強い言い方は? まるで彼女とネイさんの間に確執があるのか? なんてことを考えていたら、ちょうど作業を終えた父さんがアジトへの先導を始める。
そしてしばらくの間、森の中を進んでいると……
「――――さてと……どうして見張っていたかを聞きたかったんだよな?」
「う、うん」
父さんは、さっきオレがした質問に答えようとしてくる。
「そうだな……その前に確認だが、オレが以前に『黒いフードとはネイ=サンが自らの目的を遂げるために彼女自身が作った組織で、オレ達は手足となって働く存在』と話したのは覚えてるか?」
「覚えてるよ」
「なら、それを踏まえた上で聞いてくれ。お前達を見張っていたのは黒いフードの計画がネイ=サンに察知されてないかを確かめるためだったんだ」
「計画を察知? まさか、父さん達は何か良からぬことを企んでるんじゃ!?」
「その点は安心しろ。ただ、計画を彼女に知られた場合、オレ達の帰還に影響が出る恐れがあるのだけは言っておく」
「オレ達の帰還……むさか、元の世界に帰れるの!?」
「まあな。かなり危険な賭けになるかもだが……」
「き、危険!?」
「ハハハ、そう震えるな。一度は成功してるみたいだから大丈夫さ! まぁオレ達がやろうとしてるのは、それとは逆のパターンであるがな」
「逆って……何の?」
「“何の”って……お前、もしかして何も聞かされてないのか?」
「え?」
「……まあいいさ。それよりも先を急ごう。背中の彼女が思ったよりも辛そうだからな」
その後、オレ達はピッチを上げて移動へ集中。そして……
「着いたぞ。ここがオレ達……黒いフードの第二アジトだ」
そう言われて紹介された建物は、丸太を積み上げて作ったいわゆる……
「でっかい山小屋だね」
「山小屋じゃなくて、ログハウスよ。導くん」
「そ、そうでした……ハイ……」
背後にいる春野さんからの指摘され、オレは愛想笑いで誤魔化す。
「ハハハ。さぁ、まずは中に入って……っと、その前に言い忘れたことがあったな」
「言い忘れ?」
「ネイ=サンの目隠しと針金。あれは許可が降りるまでは絶対に外すな。いいな?」
「わ、わかったよ……」
どうやら、よっぽど彼女にこの場所を知られたくないとみえる。
――――その後、オレ達がアジトの内部へ移動すると……
「ただいま。今、帰ったぞ」
「お帰りなさい。隆一さん!」
「お帰りーーー!」
「お疲れ様です。隆一さん!」
快く父さんを出迎えるのは数人の男女達。どうやら、彼等も黒いフードのメンバーらしい。
「どうだ輝道? みんな人の良さそうな顔をしてるだろ?」
「え、あ、うん……そうだね」
そんなことを言われても、初対面のオレには正直わかる訳がない。
「さて、本来ならばゆっくりと息子のお前を紹介したいところだが……関口さん!」
「おや、どうしたね?」
返事をしたのは、フローリングの床に設置された大きめのテーブルで書類みたいなもの書いていた白衣の女性。年の功はおそらく三十代前半くらい。髪は後に纏め、眼鏡をかけて落ち着いた雰囲気がある人だ。
「すまないが、この女を診てくれないか?」
「ああ、それはかまわないけど……え? まさか、ネイ=サンを連れて来たのかね!?」
彼女がそう発した瞬間、辺りには緊張した空気が張り詰めるが!?
「待て! みんなが言いたいことはわかっている。しかし、今の彼女には治療が必要なんだ。だから……」
この懇願に関口は?
「わかったね。ただし、予備の薬が不足してるから大した治療は期待できないからね?」
「ああ、それでかまわない。輝道もいいよな?」
聞かれたオレは、無言で頷いて了承。
「決まりね。じゃあ、奥の医務室へ運んでね」
彼女の指示を受け、オレは言われるがままに背中のネイさんと一緒に医務室へ向かう……




