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シルベ=テルミチのチートナシ異世界ライフの物語  作者: なめなめ
第九章 脱出
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続、華麗なる脱出劇

 月明かりが照らす黒いフードの屋敷から脱出しようと屋根に上がったが……何とそこには、まさかの人物が待ち構えていた!


「お、お姉さん!?」

「シルベ……なの?」


 あまりにも唐突な再会にオ驚き固まるオレ達……その時だ!


導 輝道(しるべ てるみち)が逃げ出したぞーーーー!!』

『探せ!探せ! まだ遠くにはいってないはずだーーーー!!』

『何としても連れ戻すんだぁぁぁーーーー!!』


 どうやらオレがいなくなった事実が早々に広まってるらしく、本格的な大騒ぎになり始める!


「ま、まずいことになったぞ、これは……」


 再会の喜びに浸る間もなく追い込まれる状況を確認していたら、目の前にいるネイさんが強い口調で訊ねる。


「ちょっとシルベ! 何でアナタがこんなところにいるの!?」

「え? 何で……って、今その話をするんですか?」

「今って……まぁいいわ。まずはここから脱出することが先決みたいだから」


 彼女は一度追及しようとするも、さすがに状況が状況なので一旦引いて屋敷の周りを見回す。


「一、二、三……うろついているのは、だいたい五、六人といったところかしら?」

「ええ。ですが、時間が経つ程に増える可能性はあると思います」

「同感ね。それに、ここ(屋根)にいるのだってそろそろバレても……」


『いたぞーーーー!! 屋根の上だーーーー!!』


 屋敷の周囲を気にしてると、何とそれとは別に男達がオレがやって来た天井の抜け道から次々に現れる!


「ま、まずいですよお姉さん!どうします!?」

「どうするって……こんな屋根の上じゃどうにもこうにも……」


 こちらの懸念する通り、こんな見晴らしのいい屋根の上では逃げる場所も隠れる場所も皆無。それに飛び降りるにしても当然高さはあるし、例え上手く降りられたとしても下の連中にあっさり捕まるのが目に見えてる。


「くそ……ここまで来て万事休すかよ!」


 徐々に近づく追手に絶望してると、ここでネイさんが突然何かを閃いて声をあげる。


「そうだ! シルベ、こっちに背中を向けてくれる?」

「背中? 一体何をするつもりですか!?」

「合体よ!」

「合体!?」


 響きだけで判断すると、非常にいかがわしくも聞こえなくもないが……


「いいから!今は姉の言うことを黙って聞きなさいよ!!」

「わ、わかりました!」


 あまりの真剣な剣幕に、オレは指示に従って背中を向ける。


「こうですか?」

「そのまま動かないで!」

「動かないで……って、何を……おわっ!?」

「合体!」


 次の瞬間、ネイさんはオレの背中に思い切りしがみつていた!


「ちょ、お姉さん!?」

「走って!」

「へ?」

「いいから走って! 屋根から落ちてもいいから走って!!」

「そんな無茶な……」

「無茶でも無人島でもいいから早く!!」

「……もう、どうなっても知りませんからね!」


 本当にどうなるか知らないオレは、とにかく走り出す!!


「うおおおおおーーーー!! こうなったら、どうにでもなれだぁぁぁーーーー!!」


 破れかぶれの勢いままに屋根を突き進むとやがては足の裏に感じる感触が失くなり、ついには地面に……あれ?


 とっくに落下してるはずなのに、オレは未だに……


「う、嘘だろ……!?」


 意を決して眼下を見下ろせば、さっきまで走っていた屋根は既になくなり、代わりに何もない空の上を……


「オ、オレ……空を飛んでるのかぁ!?」

「いえ、正確には紙飛行機みたいに滑空してるだけよ。だからその証拠に高度が……落ちてるわよシルベ!!」

「え、うわああああーーーー!!」


 視界の景色が徐々に下がるなか、オレは咄嗟にあるものを視界に捉える!


「み、右です!お姉さん! 右にあるあの青い屋根へ向かってください!!」

「え、青い屋根……そうか!やるわねシルベ!」


 意図を理解するネイさんは、すかさず身体を右に傾けて方向を変える!


「よし今だ!」


 オレは高度が落ちて屋根に着地すると、そのまま全力で爆走!!


「おおおお! 空の一つや二つくらい……鳥になっていくらでも飛んでやるぜ!!」


 言葉通りに屋根から飛ぶ……いや翔ぶと、新たな推進力が加わり、オレ達は勢いよく空に舞う!


「やったわ、シルベ! 持ち直したわよ!」


 そう……オレは最初に屋敷の屋根でやったように、別の屋根を滑走路に見立てたのだ!


「ええ、やってやりましたよお姉さん! あとはこれを繰り返していけば、かなり遠くまでいけるはずです!!」

「うん!それならいっそのこと、世界の果てまでいっちゃおうか!?」

「アハハハ、いいですねそれ! じゃあ、今度はあの屋根を使って思い切りいっちゃいましょう!!」


 みたび別の屋根を滑走路にすると、今度はより一層に高く翔ぶ!


「「いっ、けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!」」


 どこまでも遠く、どこまでも彼方を目指して……オレは彼女と一緒になって夜の闇を飛んでいくのであった。

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