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シルベ=テルミチのチートナシ異世界ライフの物語  作者: なめなめ
第九章 脱出
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バーバラとの対峙

「でやぁ! おりゃあーーーー!!」


 父さんから部屋に閉じ込められてから三十分程。オレは何とかこの状況を打破したく、必死になって脱出を試みているのだが……


「とぉ! そりゃあーーーー!!」


 唯一の出入口である扉は、いくら叩こうが蹴飛ばそうが固く閉ざされたままで一向に開く気配はなかった。


「はぁ、はぁ……こりゃもう、言われた通りに大人しく待つしないかな?」


 散々暴れて疲れたオレは、部屋にあった椅子にだらしなく座って息を整える。


「はぁ、はぁ……それにしても、こんなところに閉じ込めどうする気なんだよ?」


 考えても出てこない答えを諦め、仕方なく別の思考に頭を切り替える。


「そういえば父さんから教えられた転移者……だったな。オレと同様にこの世界へやって来た人達だとは何となく理解したつもりだけど、この世界へやって来た時期が違うのはどういう訳だ?」


 彼等がやって来たのは二年前。だけど、オレがやって来たのは一ヶ月前……どう考えても辻褄が合わない話だ。


「でもまぁ、それが個人差だと言ってしまえばそこまでの話なんだけど……」


 そんな都合のいい結論で納得しようしてるとそこへ……コンコン! 何者かが部屋の扉を叩く。


「父さんが戻って来たかな?」


 そう思ってかまえていたら……


「テルミチ、いいかしら?」

「バーバラさん……ですか?」


 予想と違う人物の登場に、少なからず驚く。


「部屋……入るけどいい?」

「あ、ハイ……じゃあ、どうぞそちらに……」


 言われるがままに中へ招き入れ、テーブルを挟んだ向かい側の椅子に座るように促す。


「ありがとう。じゃあ座らせてもらうわ」


 着席したのを見届けた後、彼女と対峙するオレはそれとなく探りを入れる。


「え~と、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……いいですかね?」

「かまわないわよ」

「……では単刀直入に訊きます。以前、ネイさんが黒いフードに拐われたという件……あれは嘘だったんですよね?」


 この質問に、バーバラさんは軽く息を吐いて答える。


「それ……リュウイチに聞いた?」

「ハイ」

「……あれはアナタを信用してなかったからよ」

「信用? で、でも、オレは前の晩に暴れ馬で自分で名乗ってましたよね?」

「確かに。ネイも認めていたわね……」

「じゃあ、何故“拐われた”なんて嘘を?」

「ネイが認めても、()が認めなかったからよ」

「……どういうことです?」

「あの地点で、アナタが本当にシルベ=テルミチだという確証なかったの。何せ、あれだけ探しても見つからなかった人間が急に現れたからね」


 急に……そうか! やって来た時期が違うからそんな弊害(へいがい)があったんだ。


「……よってアナタを本物かを見極めるため、ネイが拐われたという状況を作り、私がアナタの正体を確認する時間が必要になったの」

「なるほど。一応の筋は通りますね……けど、ネイさんはそれに反対しなかったんですか?」

「もちろんしたわ。でも、より一層の確認が重要になるということで納得してもらったわ」


 ネイさんが反対したから確認が重要だって?


「あの一つわからないんですけど、どうしてそこまでにオレにこだわるんですか? オレなんてただの……」

「アナタがシルベ=テルミチだからよ!」

「え?」

「あの件の後、私はアナタを観察し続けて結果に確信した。アナタが本物のシルベ=テルミチであり、同時にネイの……」


 バーバラさんが最後まで話し終えようとした時だ。


「入るわよ」


 話に夢中になってノックに気づいてなかったか、はたまた相手が無作法者だったのか知らないが、とにかく新たなる人物が部屋の扉を開く。


「バーバラ。勧誘は上手く進んでるの?」

「え? 勧誘って……えっ、お前は!?」


 現れたのは、つい最近にひどい目に合わせられたあの女だった!


「何が偉そうに『お前』よ。人の着替えを覗く変態男が!」

「へ、変態男って……いくら何でもそれはひどくない? その、え~と……」

成河 梓(なるかわ あずさ)よ。別に覚えなくて欲しくもないけど、覚えておくといいわ変態男!」

「なっ……変態、変態って……言っておくが、オレには愛する両親がつけてくれた“輝道”という立派な名前があって……!」

「どんなに立派な名前があろうと、人の着替えを覗くヤツは無条件で変態決定よ!」

「ぬがっ!」


 悪辣な文句であるが、正論なだけに心に刺さる。


「ぐぐっ……ま、まぁいいさ……変態と言いたけりゃ好きに呼べばいい。それよりも成河だっけ? お前は何をしにここへやって来たんだ?」

「フン。何をしにも何も、私はバーバラがちゃんと勧誘してるかを見届けにきただけよ」

「勧誘? バーバラさんが新聞の勧誘でもやるとでも?」


 オレが首を傾げて訊くと、成河は呆れたタメ息を吐く。


「はぁ~あんまりバカなことを言わないで。勧誘と言ったら黒いフードへの勧誘に決まってるでしょ?」

「へっ?」

「だ・か・ら・! バーバラがアンタを黒いフードへの勧誘しようとしてるってことよ!!」

「な、なんだってぇーーーー!?」


 思いもしない想定外な展開に、オレの頭はひたすらに困惑する!

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