両親との会話
バーバラさんから「両親に会わせる」と言われやって来た黒いフードのアジト。ひょんなトラブルに捲き込まれはしたが、結果的には両親との再会にこぎ着けられていた。
「――――それにしても……再びこうして家族みんなが揃える日が来るとは、嬉しい限りだな」
「ええ、まさに夢のようですね隆一さん!」
応接室らしき部屋にて、テーブルを挟んで真向かいのソファーに揃って座る父さんと母さん。感慨深く話すその姿からは、記憶よりも若干の歳を重ねた印象を受ける。
「なぁ輝道。こうやって親子の再会を果たしたばかりで訊くのもアレだが……お前、この二年間はどこで何をして過ごしていたんだ?」
「え、二年間?」
妙な話の切り出し方に困惑してると、そこに母さんが……
「ちょっと隆一さん。そんな話はあとでもいいでしょ!」
「あ、ああ……悪かった。つい気になったものでな」
「もう! とにかく今は純粋に家族での一時を楽しみましょ……ね?」
「そうだな……うん、そうだよな」
照れ臭そうに頷いて納得する父さん。しばらく会っていなかったせいなのか、どこか緊張している感じがする。
「え、え~と、じゃあ……輝道。何か食べたいものはないか?」
「食べたいもの?」
唐突に振られても、正直何も思い浮かばない……というより、晩御飯なら既に“暴れ馬”で済ませていので……
「いや、大丈夫だよ」
「そ、そうか……なら、飲み物は……」
「ハイ、ストップ! 隆一さん。いくら我が子と再会が二年ぶりだとしても、さすがに緊張し過ぎです!」
あーやっぱり父さんは緊張して……ん、二年ぶり!?
「待って、父さん母さん。二年ぶりの再会ってどういうことなの?」
「ん? どうって……お前とこうして再会したのが……」
「そうじゃなくて! どうしてオレとの再会が二年ぶりなのかを聞いてるんだよ」
「はぁ? 聞くも何も……オレ達はあの入学式以来からずっと……」
「ずっと? もしや、父さん達は二年前にこの世界へやって来ていたの!?」
この疑問に、父さん母さんは顔を見合わせて答える。
「ああそうだぞ。オレと母さん……そして、他のみんなも二年前にこの世界へやって来ている。当然だろ?」
他のみんな?当然? つまりは両親以外の人達も二年前にこの世界へ!?
「あ、あのね父さん。この際だから言っておくけど、オレはこの世界にやって来てから、まだ一ヶ月しか経っていないんだよ!」
「何だと!?」
「何ですって!?」
時期の違いに、両親は目を丸くして驚く。
「あと、オレがどこで何をして過ごしていたかについての質問だけど……じつは錬金術師のネイ=サンって人にお世話になっていて、今は訳あって騎士団で生活してるんだ」
「ネイ=サンに騎士団だと? それは間違いないのか!?」
「う、うん」
話を聞いて考え込む父さんは、しばらくした後に隣の母さんへ耳打ちをする。
「――――フンフン……了解したわ隆一さん。みんなには私から伝えておきます」
「頼む。それと……」
「わかってます。私達の事情で計画を頓挫させられません」
「……すまない」
「では、私はいきますね」
何かの伝言を頼まれたのか、母さんは部屋から立ち去る。そして、残ったのはオレと父さんの二人だけになった。
「……ねぇ父さん。母さんには何を?」
目の前で見せられた意味深な行動の意味を知りたくて質問するが、父さんは険しい顔をして黙り込む。
「と、父さ……」
「輝道。ここから先は黒いフードの一員である導 隆一として尋問をさせてもらう」
「え、黒いフード?」
突然の通告に戸惑うも、話は間を置かずに進む。
「まずは改めてだが……お前はいつこの世界へやって来たんだ?」
「それ、さっきも話して……」
「いいから訊かれたことに答えろ!」
「だ、だいたい一ヶ月くらい前だよ」
「一ヶ月……二ヶ月や三ヶ月前ではないんだな?」
「ないよ。間違いなく一ヶ月前だよ。まぁ……正確な日にちまではその……わからないけどさ」
「そうか……では次だ。ネイ=サンとはどのようにして出会った?」
「どのようにって……彼女とは、オレが森の中をさ迷っている時に偶然……」
「偶然?」
「そっ、そう偶然だよ! 行き倒れ……というか、気を失って倒れていたところを偶然発見したんだよ!!」
「そうか……」
いちいち突っ込まれるのも面倒で声を荒げてしまうが、父さんに気にする素振りはない。
「ならば、お前が言う“偶然”の根拠とは何だ?」
「根拠?」
「そうだ。お前は実際に彼女が倒れる瞬間を見たのか?」
「そ、それは……見てないけど……」
「……では、彼女が気を失っていたのかはどうやって確認した?」
「か、確認って……そんなのは本人の証言でしか……」
「本人の証言以外の根拠はないってことか?」
「ぐっ……あ、ああ、そうだよ!」
確かに、当時の彼女が確実に気を失っていた判断はできない。しかし……
「しかし……しかしだよ、父さん!? ネイさんが気を失おうが、失うまいが出会った事実には何の関係もないじゃないだろ!?」
このもっともな返答に、父さんはタメ息を吐いて言う。
「輝道、お前は気づかないのか?」
「気づかない? 何を!?」
「彼女が気を失ってないということは、彼女はお前に嘘をついたことになるんだぞ?」
「!?」
嘘……それを聞いた時、オレはネイさんと交わしていたあるやり取りを思い出していた。




