両親との再会
深夜、レナトスの街にある人気のない路地にて……
「――――ミチ、テルミチ!」
「ハッ!」
「大丈夫? 何だか、心ここにあらずみたいだけど?」
「え、あ、バーバラさん! だ、大丈夫です。スミマセン」
どうやら、過去の思い出に浸り過ぎて上の空になっていたらしい。
「それじゃあ、今からアナタの両親がいる場所へ向かうわね」
「わかりました……けど」
オレはバーバラさんに敗れて地面に倒れたままになっているワイマンさんをチラリと見る。
「あ、そいつなら気絶してるだけだから放っておいても問題ないわよ」
「問題……ないですか?」
「ないわね」
「そ、そうですか……」
まぁバーバラさんが問題ないといえば問題ないのだろう。っで、その後オレは彼女の案内に従って数十分程かけて目的地にまで走って移動したのだが……
「――――着いたわよ。ここが……って、大丈夫なのテルミチ!?」
「ぜぇ~ぜぇ~ぜぇ~ぜぇ……」
例の如くやっとの思いで彼女へついてきたが、案の定オレは激しく消耗していた。
「え、え~と……一旦休憩する?」
「|ぜぇ、ぜぇ……だ、だじょぶでずがら《大丈夫ですから》……早ぐ行きばしょう」
「な、ならいいけど……キツイ場合はちゃんと言うのよ?」
「ばぁい!」
取り敢えずは前回同様に男の意地で強がってはみせる。しかし、バーバラさんにはそんな見え透いたやせ我慢は通用してなかったらしく、彼女はオレが落ち着くまでその場から動こうとはしなかった。
そして、そのまましばらくの時間が経った頃に――――
「そろそろいいかしら?」
「え、ええ……お待たせしました」
息を整えてようやく顔を上げると、自分がどこかの街外れらしき場所に立って、目の前には古びた屋敷が建っていたことに気づく。
「ここは?」
「アナタの両親がいるところよ」
「!!」
改めて言われると本当にここに両親がいるのかという気持ちはある。だが、それでも他にすがるものがないオレは彼女に連れられて屋敷の玄関へ。
「――――ちょっと待って」
バーバラさんは扉のを三回続けてノックする。
『…………』
「向こうからの反応がありませんね?」
「いいから、少し黙ってなさい」
視線も合わせずぶっきらぼうに言うバーバラさん。今度は四回……そして、一定の間を空けてからもう四回と扉を叩いた。
「あの?」
「こうしないと開けてもらえないのよ」
「え?」
彼女の言葉に首を傾げていたその時だ……ガチャ!
「これで入れるわよ」
鍵が解除され、バーバラさんは扉を押して屋敷の中へ入る。
「ちょ、待ってくださいバーバラさん!」
オレも慌てて中へ。するとそこにあったのは、あまり凝った装飾をしてないシンプル造りをした広いエントランスだった。
「ここに父さんと母さんが?」
周囲を見渡すと左右と奥の壁側には他の部屋へ通じる思われる扉が等間隔で設置されている。また正面に見える二階へ続く階段の先はコの字形の通路となっており、壁側には一階と同じ間隔で扉が設置されてあった。
ただ、オレが注目したのはそんな屋敷の間取りではなくて……
「これはこれは、ようこそ我ら黒いフードのアジトへいらっしゃいました。導 輝道様」
玄関から入って、すぐに出迎えてくれたのは黒いスーツをきちんと着こなしたオールバックが似合う物腰が柔らかそうな老紳士。ただ、そのセリフの中には聞き捨てならないものがあった!
「オレの名前……いや、それよりも今ここが黒いフードのアジトだと言わなかったか!?」
「ハイ、左様でございます」
この瞬間、オレは有無をいわさずに行動を起こす!
「まずい、バーバラさん! 早くこの場から離れないと……なっ、バーバラさん!?」
何故か呼びかけに反応しないバーバラ。それどころか、彼女には全く動じる気配がなかった。
「そう警戒する必要はないわよテルミチ。そもそも私は、ここが黒いフードのアジトだと知った上でアナタを連れて来てるんだから」
「え? それって……じゃあ、オレの両親は!?」
「ああ、御二方でしたら既にあそこにお待ちで……」
代わりに答える老紳士が、二階の奥にある扉を指差す。
「え?」
「輝道様の御両親は、あの奥にある扉の……
この時、オレは無我夢中で駆け出していた!
「あの部屋に両親がいる!」
逸る気持ちを抑えることもなく階段を一気に駆け上がり、十数秒後には目的となる部屋の前に立った。
「はぁ、はぁ……この扉の向こうに、父さんと母さんが……」
息を整えもせず、目の前にある扉を力一杯に開く!
「父さん!母さん!オレ、オレ…………え?」
「え?」
あろうことか部屋の中にいたのは、お尻を丸出しにして着替え中だった同世代のショートカットの女の子が!!
「「…………」」
あまりの事態に両者共が見合わせたまま固まって数瞬後!!
「キキキキ……キャアアアアアアーーーーー!!!」
彼女は金切り声を上げて絶叫し、身の回りにあったあらゆるものを容赦なく投げつける!
「キャアアアアアーーーー!! 変態痴漢!! どっかいけぇぇぇーーーー!!」
「え、あ、ちょ、誤解……いで!あだっ!ぐへっ!!」
最後に椅子を顔面にぶつけられたところで、強制的に部屋から退場させられてしまう。
「ててっ……は、鼻が……」
折れてるんじゃないかと確かめていたら、一つ手前にあった部屋の扉がゆっくりと開かれる。
「なんだ? 騒ぎを気にした野次馬でも……え?」
開かれた扉から現れた人物。それは……
「輝道……なのか?」
「え、父さん?」
続いてもう一人が……
「ほ、本当にアナタなのね…….輝道……」
「母さん!!」
ようやく会えたオレ達は、互いの存在を確認し合うかのように強く抱き締め合う。
「うわあああああーーーーー!! 父さん!!母さん!!」
「よかった……よかった……オレの息子だ! オレの息子なんだ!!」
「ああ、私の愛する息子……もう絶対に離さない!!」
伝わってくる確かな温もり。それは間違いなく、オレ達三人が“家族”であること証明していた……




