食事会
「そうだ! バーバラ団長も久々に騎士団の食事を如何ですかなブゥ?」
一緒に朝食を取ることになったポールさんは、立て続けに提案する。
「そうね。私も朝食は済ませてないし、せっかくだからいただくわ」
「おお! それでは、さっそく食堂へ参りましょうぞブゥ!」
快く了承するバーバラさんも追加され、オレ達は三人揃って食堂へ移動する。
「――――そういえばポールさん。気になってたんですが、どうしてバーバラさんを“団長”と呼んでるんです?」
食堂への移動中、何気なく聞いてみた。
「ハイ。それは我輩がかつて、彼女の直属の部下だったからでありまして……まぁ、一種の“名残り”みたいなものそう呼んでいるのですゥ」
「へぇ、何だか良いですねそれ」
彼等の過去を直接に知ってる訳ではないけが、今の様子から察するに良好な関係でたったのは間違いないだろう。
「でもね、ポール。私は既に一線を退いた身なんだよ? そんな私をいつまでも団長って呼んでいたら、現団長であるあんたの威厳はどうなるんだい?」
「ハハハ! 威厳も何も元部下の我輩にとって、アナタは永遠の団長でしかありませんぞブゥ♪」
「永遠って……今の私は、あの頃に比べた相当に力が衰えてるわよ?」
バーバラさんは腕を頭の後ろに組み、自虐的な自己評価を口にするも?
「おやおや? これは“赤鬼”と恐れられた方がずいぶんと御謙遜なことを言いますなブゥ。
我輩から見れば、時折見せる眼光の鋭さや無意識に相手との間合いを考えた足運びは、現役時代とは何の遜色も感じさせませんブゥ」
「はぁ、アンタは……相変わらず、つまらないところを見てるね」
なんてことを言うバーバラさんだが、評価自体に関しては満更でもない感じだった。
「――――さて、到着しましたぞブゥ」
案内された食堂は十人程度で使えそうな長テーブル席が六セットづつの二列に並べて設置されており、その内いくつかの席では、既に先客である青い服の騎士達によって占領されていた。
尚、彼等は食事を取りながらも目の前に広げた大量の資料らしきものに夢中になっているため、こちらに気づく様子はない。
また奥には厨房。そこから少し離れた場所には個室の入口らしき扉が確認できた。
「さぁ、奥にある部屋が空いてますので、そちらへ参りましょうブゥ!」
ポールさんに誘導に従ってオレ達は言われた個室へ移動する……前に、まずはその途中にある厨房へ立ち寄ることに。
「シェフ長、すまんが三人分の食事を至急頼むブゥ。あと、一つはいつも通り“大盛”でなブゥ」
しばらくしてから料理を受け取ると、オレ達は再び個室へ向かう。
ちなみに、受け取った料理のメニューは先に教えられた通りのポテトサンドと人参スープ。そして、大盛はもちろんポールさんの分であることは言うまでもないだろう。
「――――さぁ、ここでしたら周りに気兼ねなく食事ができますぞブゥ!」
案内された個室は五、六人がゆったりと過ごせそうな広さがある部屋で、オレ達はそこに用意されているテーブルを挟んでポールさん、オレとバーバラ二人の二組に別れて席に着いた。
「さぁて、冷めない内にいただきますかなブゥ」
「フフフ、ここの料理もホント久しぶりね」
目を輝かせるポールさんと騎士団での食事を懐かしむバーバラさんを他所に、オレは湯気が立つ人参スープを口へ運ぶ。
「ズズ……うまい!」
人参独特の仄かな甘味が口の中に広がり、気分をやさしく落ち着かせてくれる。
「よし、次はこっちだ!」
ボリュームたっぷりのポテトサンドを両手に持って、思い切りかぶりつく!
「ガブッ……うん、これもいい!」
少し焦げたパンと僅かにスパイスを効かせたポテトの具が良い具合にマッチしている!
その後、各々が満足ゆく食事を楽しんで一息ついた頃。
「――――ところで、バーバラ団長はどう思われますかなブゥ?」
「……ネイが拐われた事件についてよね?」
「御意ブゥ」
やはり現騎士と元騎士。当然ながらこの話題は出るか。
「……そうね。今回、黒いフードが初めて一般人であるネイへ手を出した事実を鑑みると、ヤツ等の目的が今までとは変わり始めたと判断すべきかしら?」
「我輩もそう思いますブゥ」
黒いフードの行動について語り合う二人。しかし、これ対してオレはある可能性を感じていた。
「あの、ネイさんは錬金術師だから、その研究が狙われたとは考えられませんか?」
しかし、二人はこの意見に首を振って否定する。
「悪いけどテルミチ、それはありえないわ。そもそもネイの研究は魔法石を人々の暮らしに役立たせるものが主流なの」
「その通りですブゥ。我輩も何度か彼女の研究を間近で拝見したことがありますが、特に悪用されそうものはなかったと存じておりますブゥ」
なるほど、既に彼女の研究を確認済みなのか。
「だったら……ネイさんが拐われたのは、ネイさん自身に理由があるというのはどうです?」
「ちょい待ち! それはどういうことだい!?」
オレはバーバラさんの問いに答える。
「……これは勝手な想像ですが、彼女の研究が拐われる理由じゃないとするならば、彼女の“知識”そのものに理由あるんだと思うんです」
「ち、知識だって?」
話はさらに続く。
「つまり、黒いフードは自分達の目的のために彼女の知識が必要になったとのではないかと?」
この発言に今度はポールさんが反論する。
「待ってくだされブゥ! 確かにネイ殿は優秀かつ革命的な錬金術師でありますが、法を犯すような者が欲する知識を持ち合わせてるとはとても……」
「ポールさん。どんな知識でも、使い方次第では“安全”にも“危険”にもなり得ますよ?」
「そ、それは……確かにそうなりますが……ブゥ」
意見に同調し始めるポールさん……その矢先だった。突如として部屋の扉が勢い良く開かれる!
「失礼します!」
ノックもなしに現れたのは汗だくの騎士。
「ど、どうした! 一体何があったブゥ!?」
騎士のただならぬ雰囲気に事態を重く見たポールさんは、慌てて彼へ問いかける……っが、次の瞬間には予想だにしない展開が待っていた!
「報告です! 只今、ネイ=サンが一階フロアに現れました!!」
「なんだってぇ!?」
「なんですって!?」
「ブブブブォッ!?」
救出するべき本人の突然の帰還。その衝撃的な報せは、瞬く間に騎士団全体を駆け巡った!!




