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〜レイの過去編〜 転生

これから章の合間に数話ほどレイの過去編を投稿したいと思っております。

本編とはあまり関わりがなく独立した感じになってますが読んでくれるとありがたいです。

 






(ーーーん?……ここはどこだ?)


 “彼”は唐突に眼が覚める。

 いや、意識が覚醒したと言う方が正しいのか、彼は自分の体にひどい違和感を感じていた。

 彼は自分の体を見下ろす。


(てかあれ? 足もないし、手もねえな)


 そして彼は自分の体が物体の無いフヨフヨと浮かんだ火の玉のような形をしたモノであると言うことに気づく。

 彼は薄っすらながら自分がいわゆる魂の状態であるということが分かってしまった。


(あー、もしかして俺死んだのか? これから閻魔様の所に行くのかな〜)


 彼? は呑気にフヨフヨフヨと体を上下左右に揺らしていく。何も考えることもなくただただ今という状況を考えることもなくフヨフヨとしていた。





『目覚めましたか』




(……………ふおぉうっ!?)


 唐突に後ろから聞こえてきた声に驚き思わず心の中で変な声を上げてしまう。

 そして慌ててくるりと体? を半回転させる。


(へっ……………?)


 そして今度は言葉を失ってしまう。

 そこにいたのは艶やかな長い黒髪を背中にまっすぐ流し、赤と白を基調とした着物を着た浮世離れの美貌を持った女性であった。まるで人間ではないかのよう。人形に魂を吹き込んだと言われたらそれですぐに納得してしまいそうなほどの美しさ。


 いや、そもそも彼女は人間なのか? 彼はそんなことを疑問に思う。

 彼も我ながらバカバカしく思えるような推察だが今回ばかりはそれが正解のような気がしてならなかった。


『おお! 眼が覚めたか』


 そこに加わってくるもう一つの声。

 彼はまたそちらの方を向いてまた絶句する。


 豊かな長い白髪と髭を蓄え、その鋭い眼光からはとてつもない威圧感を感じられる。

 年老いた風貌ではあるが体は筋肉質であり白のトーガを見に纏っている。


(ヤバイヤバイヤバイ、これ絶対あかんヤツや)


 思わず関西弁になってしまうほどのこの状況。

 彼は自分が何者なのかを思い出すのすら忘れてあたふたしていた。


『では、揃いましたことで自己紹介をしましょうか』


『うむ、そうしようかの』


 続く言葉に先程までゆらゆら揺れていた体を引き締める。引き締める体はないけども引き締める。

 しかしそれも次に出てきた言葉によって撃沈されることになる。


『我が名は天照、高天原が最高神である』


『儂の名はゼウス、オリンポス十二神が一柱にして神族の長なる者じゃ』


(……………おワタ)


 彼は浮いていた魂(我が身)をぽとりと地面に落とすことで沈黙を返した。




 ☆★☆




『ではまず事情を説明しましょう』


(あ、はいお願いします)


 そこで彼は声が出ていないのに意思疎通ができていることに気づく。


(あ、てか聞こえているんですか?)


『ええ、でないと会話ができませんから』


 言っていることは最もである。ただそれを容認できるかといえばそうでもない。ただ彼は神と名乗る彼等の話を聞かなければ先に進まないと言うことを理解していた。


『で、何をしているのです? あなた』


 日本が誇る太陽神の目の前には地面に落ちたままの魂。と言うか丸い光る球体。


(あ、これ最敬礼のつもりです)


『分かりにくいのう……』


 言うなら土下座のそれに近いが、ただの球体にそこまでの表現を求めるのは酷だろう。


『頭を上げてくれませんか?』


(いえ、このままでも話を聞けるので、続行してくれるとありがたく存じます)


『近年稀に見るへり下りっぷりだの〜』


 呆れた声を出すゼウス。

 というか当たり前だろう、と魂は思う。ラノベではよく神相手に不遜な態度をとる奴がいるが、普通に考えてあり得ない。

 もしもの話ではあるが、神のミスで死んだと言われ怒るという場面がラノベではよくある。

 しかし神に対しその些細なミス一つまで言及するのは酷である。日本の価値観でいえば全能の神は存在しない。良い側面もあれば悪い側面もある。

 それをわざわざ律儀にミスをしたと言って謝るのだ。そのまま輪廻の輪に送るなり閻魔大王のところに送るなりすれば発覚しないことでもあるのに。

 死という事実の前に混乱するのは仕方のないことなのだろうがそれを読む度に彼は心を苛立たせたものだ。


『最近は神という言葉を聞くだけで何故か生意気な態度をとるものが増えましたからね〜』


『だの〜、久しぶりじゃわい。こんなに敬意を表して貰ったのは』


『まあ、こうなるのも仕方のないことなんですけどね〜』


 くどくどと頭の中で現実逃避という名の思考を続ける中、何故か神の二柱は感激したかのように雑談を続けている。


(あの〜………?)


『あっ……うほん。では、説明をさせていただきます』


 今『あっ』て言いませんでしたか? そう言いそうになるが寸前で抑える。まさかと思ったが一瞬こちらを忘れられていたようだ。

 そんな魂の心の声に彼等はスッと目をそらす。


『では説明を始めます』


(あ、はい。お願いします)


 神も意外と抜けてるところがあるのだなー、と心持ち緊張が緩和される。


『貴女は私達が“創り上げた”存在です』


(ん……?)


 何故かよく分からない言い回し。

 魂が神の創り上げたものなのだとしたら須らく魂は神の創ったものとなる。


『聞きましょう。貴方に記憶はありますか?』


(え? ……いや、それは勿論……あれ?)


 彼は頭を捻って? 記憶を探る。

 彼には死んだ記憶がなかった。だが、それだけであれば死んだ時のショックで覚えていない、ということもあり得る。

 彼はあるはずの記憶がなかった。知り合い、友人、親兄弟、必ずいるはずのいずれかの記憶も全てそこだけがポッカリ空白になったように抜けていた。

 彼の記憶にあるのはある人物の追体験のようなもの、記憶ではなく、“記録”。

 そしてどうもその記録は一人分ではないようだった。現代的な風景の記録の他に戦場の血生臭い記録。

 同じ時代だとは到底思えない。


『気づいたようじゃな』


『貴方が何故そうなったのか。私達が今ここにいる理由も含めて説明させていただきます』


(………)


 彼にはただじっと待って、彼らの話を聞くしか選択は残されていなかった。


『私達は遥か太古より地球の、私は大和を、ゼウスはヨーロッパを、守っていました』


『じゃがな、儂達は地球の神であると同時に、とある世界の神でもあるのだ。いや、“であった”というべきか』


『こことは全く違う法則が存在した世界。今風にいうならば剣と魔法の世界でしょうか?』


(……神様、もしかしてラノベを愛読してたり『してません』ーーあ、はい。すいません)


 食い気味に迫られて思わず後退してしまった。


『貴方に行って欲しいのは私達が元々統治していた世界。そこである問題が起こっているのです』


(……それは?)


『情けない話なのですが、私達の後釜に入った転生を司る神が地球のラノベにはまってしまったのです』


 ハァ、と恥ずかしそうな、情けなさそうな顔を浮かべる天照。

 そこでラノベという略称が出るあたりこの人も結構読んでたりするのかなー、と思ったらギロリと睨まれてしまった。

 思わず魂なのに背筋に悪寒を走らせてしまう。


『そこで転生神が調子に乗り地球人達をその世界に続々と転移させてしまったのですよ』


(ん? けどそこら辺はあまり騒ぎになってなかったような……)


 全て覚えているという訳ではないが、そこら辺のニュースとかの記憶はそこそこ残っている。


『そんな万単位でさせた訳じゃありませんから。それに集団単位ではなく個人単位ですので、関連性を警察が見いだすことができなかったのでしょう』


 それはそうである。

 もし警官の誰かがラノベを嗜んでいて、それを槍玉に挙げたとしても、警察がそんな非現実的なことを言ってしまっては組織として成り立たなくなる。


『神々の決まりごととして、その世界の魂を他の世界に移す時はその世界の神の許可を得なくてはなりません』


(ということは……)


『ええ、その神は私達の世界の神の了解を得ずにあちらの世界の神は異世界への転生を実行してしまったのです』


 しかし分からない。

 だからと言ってそれは飽くまで神々の問題のはずである。

 まだ自分のこともよく分かっていない。それが本当の理由ではないような気がした。


『ええ、貴方の考えの通りです』


 そしてその思考は心を読める神には筒抜けである。


『その神は既に我々の手で処分しました』


(処分て……物騒ですね)


『その反応にはノーコメントで。貴方の思う通り、問題はその転移者達です』


 とうとう本題に入るということに思わず彼は喉をゴクリと鳴らす。もちろん気分であり実際には鳴っていない。


『彼等は私達が治めていた世界を、滅ぼそうとしているのです』




 さて、地球の転移者達によって異世界が滅ぼそうとされていると言われているが、そう言われてもイマイチ実感がわかない。


(どういうことなんでしょうか?)


『……私達が処分した転生神が転移者を送る際に彼等に祝福ギフトを持たせたのです。ギフトとはチートと考えてもらっても構いません』


 絶対この人ラノベ読んでるでしょ。という思念をじーっと送る。

 天照は再度目をさっと逸らす。

 その様子をゼウスは呆れたような目で見つめていた。


『彼等の行為が直接世界の滅びに直結している訳ではない。じゃが彼等が動いた結果、世界が滅んでしまう可能性が高いのじゃ』


『そういうことで、貴方には世界を救ってもらいたいと思います!』


 ビシィッと魂に向かって指を向ける天照。

 なんか色々吹っ切れたらしく序盤から醸し出している神聖さの中に少し残念さが混ざり始めた。


(何開き直ってるんですか、神様)


『私達とて、万能ではないのですよ……』


 天照はそういって落ち込む様子を見せる。

 その言葉には色々な実感が篭っており、かなりの重みがある。


『話が少し逸れたような気がします。まず最初に明言しておきましょう。貴方は純正の魂ではありません。私達が生み出した、言うならば混沌魂カオスソウルとでも言いましょうか』


(神様、若干厨二病発症してませんか?)


『転生神を処分したとはいえ、あちらの世界の神の許可なく魂を送り込むのは協定違反となります』


 スルーされた。


『あちらの世界に送り込んだ転移者達に対抗するにはあちらと同じ質を持つ複数人、若しくは一人で対抗できるほどの力を持った個人』


『しかし複数人となれば各個撃破されれば不利になる。それにその集団の中で不和が生まれようものなら目も当てられん。ならば我らが生み出すべきは複数ではなく一人に絞るべきが得策、そう考えたのじゃ』


(……なるほど)


『そのためにわしらが作り出したのがお主じゃ。魂の格を上げるために過去の格の高かったもの達の魂を融合させ、なおかつ、人格の基盤となるものに異世界への順応が早そうな記憶を持つ魂を使った』


(それが俺、というわけですね)


 神様相手に一人称を俺と使うのはどうかとも思ったがここは敢えて自分という“存在”を通した。


『貴方の中に時代の違和感の残るような記憶があるのはそのためです。意識して探ればわかるとは思いますが、貴方の記録には数多くの武人や賢人達の記憶が存在します』


『もしかしたら、お主が儂等相手にそこまで下手なのも、そこが影響しとるかもしれんの。昔の者は善人であれ悪人であれ信心深かったからのう』


 いや、それはありません。現代っ子の臆病さをなめないでください。

 魂は心の中で叫ぶ、というかそれは神様に直接伝わる。彼等はそんな魂が面白かったのかこの場で初めて笑顔のようなものを見せる。


『そうかそうか。今にも残るのじゃな。神を想う心を持つ者は』


 そこで彼はふと気になることを尋ねることにする。


(そういえば、具体的にですが、どれほどの魂を使ったのですか?)


『一億じゃ』


(………………ふぇ?)


 思わずその耳を疑う。疑う耳は存在しないが。

 思っていたのと桁が違った。十や百でなく、億。

 色々と桁はすっ飛ばし過ぎていた。


(え、いや、何でそんなにフュージョンさせちゃってるんですか!?)


 思わずツッコミを入れる魂。

 しかしそれに帰ってきたのは何やら沈痛な面持ちと沈黙だった。

 これには思わず彼も黙り込んでしまう。

 ことがそれだけ重いものなのかと思ったからだ。


(……あちらにはどれほどの転移者がいるのですか?)


『……力の大小はあれ、百は越えまい。ちなみに言うが其方の魂の一つ一つの格に関しては、転移者でも最も格の高い魂を持つ者よりも高い』


 格の高さと実力が直結するのかどうかは分からなかったがそれでも過剰であるような気がするのは確かである。


『……多くを話せない私たちを許してください。現世に干渉できない私達には、情報を開示するのもそれほど自由にはできないのです。ただ貴方にはあちらの世界に行っても最大限のサポートをさせていただきます』


 彼には理解できなかった。

 世界が滅ぶのを救うために彼は創られたと言った。

 しかし今の彼等の口ぶりではそれ以上に“やばい”出来事が起ころうとしているようにも思える。

 しかもそれが彼等が開示できない程の重要な事項であるということ、彼が理解できたのは今の所それだけ。


『貴方にはあちらの世界に行くに際して、神の体を与えましょう。私が生み出した特別製です』


『儂からはお主に無限の魔力を与えよう。あちらの世界の魔法を無尽蔵に使えることができる』


 彼は喜ぶことができなかった。

 彼の人格の基盤となった彼の性格からすれば、今の状況は喜ぶべきことなのだろう。

 しかし、彼等の面持ちと明かされぬ情報の内容を思ったらそう素直に喜ぶことができなかった。

 与えられた物も、あちらの世界でなるべく苦労しないように与えられたものではなく、それが必須であるために与えられたようにも感じた。

 そして、その考えはゼウスと天照の表情を見る限りそれほど外れた考えではないようだ。


(…………)


 彼は、黙り込むことしかできなかった。


『あちらの世界に送らせてもらう。あちらの言葉は何もしなくとも自然に理解できるようにさせてもらった』


『何もできない私たちを、どうか許してください』


 地面に穴が空いた。

 いや、地面にではなく、空間にであろうか。

 まるでブラックホールのようにその穴に魂が吸い込まれて行く。


『頼む、我らの御子よ。どうか、我らの残してしまった負の遺産を……』


 吸い込まれて行く彼に最後に届いたのは、そのような呟きだった。




 ☆★☆




『ところで天照』


『なんです?』


 落ちて行く魂を見届けた二柱。

 ゼウスは天照にふと気になったことを尋ねた。


『神の体を生み出したと言ったが、誰を媒体にしたのじゃ?』


 神の体を生み出すには自らの肉体を分ける必要がある。なので彼はどの神の体を使ったのか興味を持ったのだ。


『もちろん、私の体ですよ』


『……え?』


 思わず間抜けな声を出してしまったゼウス。

 そんな彼の呆けた顔を見て天照は訝しげな顔をして口を開く。


『私達が勝手な願いを託す以上、ただ願いを言うだけでハイ終わり、はどうかと思うに決まってるじゃないですか?』


 その話にはきちんと筋が通ってるようにも思える。

 しかしそこには思わぬ落とし穴があった。


『因みに、当たり前の事を聞くようじゃが、女性体なんじゃよな?』


『当たり前じゃないですか』


 神の体から切り分けて神の体を生み出す場合、性別はベースとなった神の性別となる。


『奴の人格のベースは、男なんじゃが……』


『あっ………』


 気まずい沈黙が広がる。

 しばらくの沈黙の後、天照は願うように手を合わせた。


『……どうか、彼女・・の行く先に幸のあらん事を』


『おい』


 開き直った天照を突っ込むゼウス。

 しかし既にことがなされた以上、これ以上何かをすることができないということも事実であった。


『まあ、さらに増えた苦労には、儂からはなんとも言えんな。戻るぞ、天照』


『ええ、私たちも、ケジメをつけなければ行けませんから』


 そして彼等は地球へと戻って行く。

 その顔は、覚悟を決めたような、そんな表情であった。



思うんですけど、なろうで神様相手に無理な要望や恫喝する主人公とか多すぎませんか?

まあそんなことが出来る人が主人公と呼ばれる存在なんでしょうけど。


あと過去編だからか少し早足になってる気がしないでもない


誤字脱字や文章の違和感などの指摘大歓迎です。


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