時は流れる
時間とびます
駆け足になったことをお許しください
フレアと契約してからも彼らの変わらない日常は続いていく。
いや、変わったことといえばレイの修行の厳しさが増したことだろうか。既に座学を終えたソウマは一日中修行に明け暮れていた。
打ち身や擦り傷だらけの体を引きずるようにして風呂に入り、夕食を無理やり喉に押し込みベッドに飛び込み、沈むように夢も見ない程に爆睡する。そして起きてから早朝からトレーニングして朝食をとる。その繰り返しをしていた。
しかし連続でそのような負担をかけると成長期の身体にはあまり良くないので一日置きにきつい、かなりキツイを繰り返していたのがソウマにとっては救いだっただろうか。
どちらにしろ、きついのは変わりないがきつくない修行は修行でないということはソウマも分かっているので文句はない。
フレアと契約してから魔法の発動もスムーズにいくようになり元々の才覚もあったため、何度かフレアの補助を入れるとソウマ自身だけでも魔法を真っ直ぐ放てるようになっていた。
問題だったのはソウマの癖であって、あとはそれを直すきっかけさえあればどうとでもなったのである。
その事にレイは安堵し一層伸びてくるであろうソウマの先がさらに楽しみになった。
そしてソウマは自身の武器を刀ではなく両刃の剣を好んで使うようになっていた。どれだけ頑丈な素材を使ったとしても刀ではその動きの一つ一つに繊細な動きが要求される事には変わりない。
この刀という武器は彼にはあってなかったらしく早々に諦めていた。しかし武器の憧れという熱が冷めたわけではない。早々に剣へと移行して汗を流しつつ基本の素振りを続けていた。
魔法は限界を見ることで魔力の総量が上がるが武術はそうではない。無理をすればそれだけ後々に負担となる。幸い彼女は戦闘関連でいえばその全てにおいて世界トップクラスである。そして魔法とは違って剣術は見て盗むことが比較的容易である。ソウマはゆっくりとレイの動きを真似つつ、筋トレ、基礎練を欠かさず行っていた。
魔法とは違い体を苛めつつもその加減を調節し少しずつ彼は剣の腕を上げていった。
二週間に一度のガレスの街に訪れる日、いつしかフレアもソウマ達と共にガレスの街に訪れるようになっていた。最初は大精霊のフレアに畏まった姿勢を見せたティニア達であるが、ティニアはフレアと目を合わせるなり何故か火花を散らしていた。
周りの面々はソウマとレイを除いてあたふたしていたが最終的には打ち解けることができておりホッとしていた。
レイはそれを見ながら青春だな〜としみじみしており、執務中のためその場から離れることのできなかったデリックが窓から目付きで人を殺さんばかりの勢いで凝視していた。そんなデリックが秘書に耳を引っ張られながら退散していったのをレイは見えなかった事にした。
そしてティニア自身の実力であるが驚く事に才能自体はソウマに一歩劣るもののこと補助・回復関係の魔法でいえば彼を大きく上回っている。
彼女は教える人が上手かったと言っているがそれは本当のことであり謙遜も含まれている。
レイが教えるのが下手とは言わないがやはりその道のエキスパートには敵わない。魔法の腕と説明する能力が比例するわけではない。
たまたまスパルタなやり方がソウマに合っていたというだけである。
魔法を教えるだけであれば実践よりも座学でじっくりと理解を深めたほうが分かることもある。
そのため彼女の魔法の腕も既に一般のそれをソウマと同じく軽く凌駕していた。
彼女は三女であるため政争にも疎く庶民派であるが紛れも無い大貴族のご令嬢なのだ。(ソウマは実質それを上回る大貴族の次期当主ではあるのだが)
さらにデリックは娘を溺愛している。下手な教師を寄越すはずもない。
そして彼女も冒険者になりソウマについて行きたいと明言している。デリックも彼の妻も渋ったそうではあるがティニアの熱意に根負けし認めたという。
ティニアの中には生半可な腕でソウマの隣に立つことができないという気持ちがあるらしい。その心の奥の気持ちに彼女自身は気づいていないらしいが側から見れば丸わかりである。
レイは彼等の将来が楽しみだった。
そして冒険者見習いの活動をするに際してほぼ彼等の専属的な扱いを受けているアリアからもこのまま冒険者デビューしても立派にやっていけるとの太鼓判もいただけた。
かと言って規則を破るわけにもいかず依頼を真摯に受けていた彼らは徐々に周りの冒険者達の注目も集めてくる。
見習いに登録しても普通はある程度依頼を受けて本登録の時にスタートダッシュができるようになったらあまり訪れなくなるのだ。にも関わらず定期的に雑用依頼を受ける子供達にギルドでのマスコット的な扱いを受けるようになった。
ティニアもフレアも目を見張るような美少女であり基本男所帯な冒険者ギルドでは愛らしい彼女達は癒しとなっている。ソウマはソウマで物腰が丁寧で物分りが良く愛想もいいので冒険者達から弟分として可愛がられていた。
勿論ソウマは月に一度の両親との文通を続けている。ソウマの実の妹となるスィーアも兄の存在を知らされていたらしく途中から両親のと合わせて手紙を送るようになって来た。
拙いながらも兄に会いたいという思いが真摯に伝わってくる手紙の内容にソウマの頬も緩みっぱなしである。
彼はまだ見ぬ実の家族との親交を深めていった。
そしてレイではあるが彼女の日常は特段変わるものでも無い。
ソウマにとってきつい修行も彼女にとっては朝飯前である。それに彼の交流関係も彼女が仲介するということはしなかったため基本は彼が主体だ。それにレイが首を突っ込む事はない。
月に一度手紙をアスタリス家に送り届ける時は毎回シャルを随行する形になってデートのような様相をもたらしている。シャルの数百年越しの告白を受けたレイではあるがその関係に変化する事はなくいつも通りの接し方をしている。
それにシャルは若干不満そうではあるが自分の気持ちを伝えることが出来たからかレイと一緒に過ごすだけで満足そうである。
魔国の情勢が不安定なのは相変わらずではあるが特に変わった様子もない。
一日一日が濃く、しかし時が過ぎ去るのはまるで刹那のようにあっという間である。
子供の成長はあっという間である。その才能を遺憾なく発揮しソウマはみるみるとその腕を上達させていった。
ソウマがこの世界に転生して早十三年。
彼は十三歳になった。
あと数話で一章を終わらせます
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