初依頼
ソウマはそうレイに言われ再度首を傾げた。
「え、どうして?」
ソウマはレイの言っていることが理解できなかった。
レイはそんなソウマの様子を見て天を仰ぎながら溜息を吐く。
「そうか、そういえば説明してなかったな……」
「忘れていた……」と割とマジトーンで落ち込むレイ。
レイは説明を始める。
「ソウマ君、特殊属性はな魔法を使える者の中でも数千人に一人と言われている。それは前にも言ったな? そして魔法を十分に使える魔力量を持った特殊属性持ちとなるとこの数がさらに少なくなる。この希少性は他者から妬みも買いやすいんだ」
ソウマはそう言われてもまだいまいちピンときていないらしい。
「まあ、簡単に言えば厄介ごとに巻き込まれやすいってことだ。それがまだ実力の弱い子供なら尚更。下手したらヒト攫いに逢うこともある。そして奴隷にされてどこかの戦力にされる。有り体に言えば死んだほうがマシっていうことになる可能性がある」
「そんな大げさな……」
「大袈裟じゃない!」
レイが大きな声で一喝する。
レイとティニアが揃ってびくりと体を震わせた。それを見てレイは数度顔を横に振る。
「いいか、ヒトの妬みを甘く見るな。例えどれだけ魔法が下手でも特殊属性を持っているというだけで絡んでくる輩もいるんだ」
ソウマは顔を青くさせこくこくと頷く。
レイは「家に帰ってからはもっと常識を叩き込む」と言ってから魔法を解除する。
音のなかったその空間に徐々に周囲の喧騒が戻り始める。
「騒がせてすまないなティニア。ソウマは賢いが世間については思っていた以上に疎かったようだ。私の認識不足だったな」
「い、いえいいですよ! 謝罪なんて。むしろこの場で済んで良かったです」
レイがフッと笑って「そうだな」と頷く。
そして側でしょんぼりと肩を落としているソウマの頭をぽんぽんと叩く。
「すまなかったな。大人気ない真似をして。あとこれからはもう少し一般教養を増やすぞ」
「……ハイ」
ソウマはどこか拗ねた感じで返事を返す。
(こんなところでする話でもなかったかな)
レイはこの場でする話でもなかったと反省する。
だが今すぐにでも教えておきたかったのは事実。
彼女としても貴族の認識がこれほどまでに弱かったとは思わなかった。
実際ソウマが本をたくさん読んでいたその本はほとんどが魔法関連だった。その為、彼の一般常識が通常よりも欠如している。
これはソウマを外に出さなかったレイにも責任の一端がある。もちろんレイもそのことは理解していた。
「元気出してくださいソウマ君。叫んでしまった私も悪いんですから」
ソウマはティニアに励まされてさらにしょげる。
(そういえば転生者だったな、この子)
年齢は同じでも精神年齢がだいぶ低い子に励まされるというのはだいぶ応えたらしい。
「はいはい、もうそれ以上しょげるな! せっかくの初依頼なんだから楽しんでくれ」
「……うん!」
ソウマは気落ちしていたらせっかく待ち望んでいた今日という日がもったいない、と思い元気を取り戻す。
レイも少し強く言いすぎたことを反省し、ソウマの頭を撫でながら「私も強く言いすぎたな」と謝る。
「ちょっ! 人前でそれはやめてよ!
ソウマはティニアが目の前にいるのに頭を撫でられていつも以上に恥ずかしそうにする。
レイはそれを見て「照れるな照れるな」とからかいながらさらに激しく撫で回す。それを見てティニアはくすくすと楽しそうに笑っていた。
その間にも列はどんどん短くなる。
レイたちの前にいた冒険者が門をくぐり、レイたちの番がまわってきた。
この街に勤める兵士たちは領主一族の顔を知っているのでティニアはフードをさらに目深にかぶり彼等に正体がばれないようにする。
ソウマとティニアの二人は少し緊張しながら彼ら自身にも気づかぬうちに自然とその手を繋ぎ合う。
そんな二人を後ろにレイは許可証を見せる。
幸運なことに子供ということで特に怪しむ気もなかったのか門番は一度も二人に目を向けることなく「通っていいぞ」と言った。
そしてそう言われた瞬間子供二人は門番から逃げるように、そして初めての外が待ちきれないと言わんばかりに小走りでレイを追い越しながら門をくぐる。
門番はその様子を訝しむが、レイはそんな二人に顔を綻ばせながら優しい目で見つめていた。
門をくぐってからしばらく、街道から離れた草原地帯、そこで二人同時に息を「ぷはーっ」と吐き出す。そして今更ながらに手を繋いでいることに気づいた二人はパッと手を離して顔を真っ赤に染める。
そんな初々しい反応をする二人を見てレイは笑いを堪えるように肩を震わせていた。
☆★☆
「うーん、意外とわからない。ねぇーレイー、これも薬草で合ってる?」
現在、ソウマ達は門から伸びる街道から外れ街を囲む外壁がかろうじて見えるところに来ていた。
「ふむ、うーんこれは薬草じゃなくてただの雑草だな」
見渡す限りに広がる草原。これだけの広さなら薬草もさぞ多くあるだろうがそれ以上に雑草の方が多い。薬草とて見た目に特徴がはっきりとあるわけではない。
ソウマとティニアは二人で手分けして薬草を探している。今回の依頼で必要な分は薬草が合計で十株である。今のところ三株見つかっている。
初めてにしてはなかなかいいペースだろう。
「あ、これさっき採取したやつと同じじゃないですか?」
「お、癒し草が二株目だな」
「レイー、これは?」
「お、凄いじゃないか。それは森に少し入ったところに生えてるやつでここら辺には滅多に生えてないんだぞ」
「本当に? やったー!」
レイは子供組が採ってきたものがちゃんと薬草であるかどうかを判別している。
ソウマもティニアも薬草の図鑑を読んだことがあるらしいので最初は「自分たちでやる!」と言っていたが図鑑を読むのと実際に採ってみるのとでは勝手が違うのか早々に自分たちで見分けるのを断念していた。
それからはそれっぽい物を見つけてはレイに薬草かどうかを判断してもらっている。
とはいえ、彼らが薬草を探し始めてからまだそれほど時間は経っているわけではない。
(ふむふむ、思ったよりも順調だな。それに、いい感じに二人の距離も縮まっている)
ソウマとティニアが互いの薬草を見せ合っている。
依頼を真剣に取り組みながらもそれを楽しめている二人をレイは腕を組みながら満足そうな顔で見つめている。
その顔はフードで隠れていてよく見えないがそれが無ければきっとレイの表情には母性が満ち溢れていただろう。
この初依頼はソウマの新たな出会いと共に、いい思い出になりそうだということをレイは心の底から喜んだ。
太陽が頭上を上回った頃、レイとティニアはその手を止めお互いの荒い息が聞こえる距離まで近づいている。
ティニアは途中からはめんどくさくなったのかそのフードを脱ぎその素顔をあらわにしていた。
彼女は薄い水色の髪を肩よりも少し下まで垂らしバッチリとした髪色とお揃いの瞳。その顔は非常に整っており、その時ソウマは一瞬彼女に見惚れてしまった。
レイとティニアが少し肩を上下させながら顔を見合わせる。腰をかがめながらの薬草探しは思いの外彼らの体力を削ったらしい。
しかしその顔には欠片も疲労が浮かんでいない。
彼らの手の中には合計で十株の薬草が握られていた。
「十株ぅー、揃ったー!」
「いぇーい!」
ソウマとティニア、二人は顔に満面の笑みを浮かべながらその手を突き上げる。
薬草を計十株採り終えるのにあれから時間はそれほどかからなかった。
二人は手を合わせ喜び合っている。
「レイ、これで依頼完了なんだよね?」
「ああ、そうだな。よく頑張ったな二人とも」
思った以上の速さで終わらせることができたことに内心驚いているレイ。
その為そう素直にレイが褒めると二人は同じ仕草で照れ臭そうに頬をかく。
レイがそれを見て笑うと二人は顔を見合わせる。そして互いに吹き出した。
その場にはしばらく三人の笑い声が広がっていた。
☆★☆
「はい、依頼完了ですね! お疲れ様でした!」
依頼の達成の報告、確認は先ほどと同じくアリアが担当している。
「メンバーがなんか増えてるようですけど、初依頼はどうでしたか?」
何故かそこにいる先ほどまでいなかった三人目にアリアが目を見開いていたがすぐに平静を取り戻す。
「えっと、やることが簡単だったってこともあっと思いますけど楽しかったです!」
「それは何よりです。せっかくの初依頼ですから楽しんでもらいたかったですしね!」
アリアはソウマから薬草を受け取り一つ一つ鑑定していく。
「ふむふむ、ほうほう、おや? これがあるということは森まで行ったんですか?」
「あ、たまたま草原に生えてました」
「そうでしたか。それはラッキーでしたね。では少々お待ちください」
アリアが薬草を持ちその場を離れる。ソウマとティニアがそわそわしながら少し経ち、彼女が戻ってきたとき、その手には小さな袋が握られていた。
「これが今回の報酬の三二○ミルとなります」
アリアがその袋をカウンターに置く。ソウマはおずおずとその袋を受け取り感激したような顔をする。
彼には何故かその袋には重さ以上のずっしりとした重みが感じられる。
ソウマは初めて得られた労働の対価である賃金に思わず口がニンマリしてしまう。
「ありがとうございます!」
「ふふ、いえこれが仕事ですので、またのお越しをお待ちしております」
今回の初依頼、そしてティニアとの出会い、今日という日はソウマにとっても忘れられない日になりそうだと思いながら意気揚々と、ティニアと手を繋ぎながら冒険者ギルドを後にした。
冒険者ギルドを出た三人は広場のベンチに並んで座っていた。真ん中にソウマが座りその両隣をレイとティニアで挟んでいる。
「はい、これどうぞ」
「え?」
ソウマが小袋の中に手を入れお金をいくらか取り出したかと思えばそれをティニアへと渡す。
ティニアは渡されたそれを見て何が何だかわからないという風に目をパチクリさせながら首を傾げていた。
「報酬だよ。一緒にやったんだから半分こが当たり前でしょ?」
「え、けど依頼を受けたのはソウマ君だし……」
ティニアはあくまで自分は付いていっただけだから受け取るのは悪いと主張し、返そうとするがそれをソウマ自身が拒む。
「いいんだよ! それに今日が最後っていうのは嫌だからね。僕はもうティニアとは友達だと思ってるし。友達は対等だからね!」
「ソウマ君……!」
ソウマは差し出されたその袋を受け取ろうとはせず「友達」という言葉で押し切る。卑怯かもしれないがこれは彼の本心であり、ティニアとはこれからも友達でいたいと思っていた。
ティニアは感激したようにその目を潤ませ渡された袋をぎゅっと握る。
「うん! これからも友達だよ!」
「もちろん! えへへ、何気に友達が出来たの初めてだな」
そうソウマが呟いたのを聞いてティニアが「私もだよ!」と言う。それを聞いたソウマが少し意外そうな顔をした。
「え? 貴族とかなら社交界で友達の何人かくらいはいるのかと思ってたけど」
ソウマがそう疑問に思うと「お姉さまやお兄様たちはそうなんだけどね」と少し苦笑気味に彼女はその答えを返す。
「私は五人兄弟の中でも末っ子だから、お父様やお母様からは『自由に生きなさい』って言われてるの。私も元々社交界とかは好きじゃなくて関わろうともしなかったし……。だから社会勉強の為にも何かしたいことがないか街に出て探してたんだけど、なかなか見つからなくてね」
「けど、今回それが見つかりそうなんだ!」という言葉を聞いてソウマも嬉しそうに笑った。
しかしそんな楽しい時間は唐突に終わりを告げる。
「おい! 見つけたぞ!」
大きな声と共にドタバタとした足音が広場に響く。何事かと周りのヒトがそちらへ目を向けるがそこら辺にいる一般人と変わらないような見た目をしていた為すぐ興味を失ったかのように目を戻す。
しかし、ティニアはそんな彼らを見て少しバツの悪そうな顔をしていた。
レイはそんな彼女を何かを見て察したかのように話しかける。
「お迎えが来たようだな」
「そのようです。出来ればもう少し居たかったのですけど……」
その言葉を聞きソウマも彼等がどういった者達なのかを理解する。彼らは彼女とはぐれたという護衛達らしい。
ティニアのもとに走り寄った彼らは周りに訝しまれない程度に頭を下げる。
「お嬢様、我らが目を離してしまったばかりに申し訳ありません。何も問題がなかったようで何よりです」
「いえ、勝手に行動した私も悪いので」
彼女はソウマ達と出会ったときは彼等が先にはぐれたと言っていたが本当は彼女が勝手に行動した結果らしい。口調の丁寧さとは裏腹に彼女は中々にお転婆らしかった。
「こちらの方々は?」
護衛のうちの一人がこちらに視線を向けティニアに話しかける。
「街中で一人困っていた私達に手を差し伸べてくれた方達ですよ。おかげで得難い体験ができました」
何を言っているのかとこちらに目を向けてきた護衛に「この子の初依頼だよ。ついでに外にも出てしまったがな」とソウマの頭に手を乗せながら言う。
護衛たちは一瞬何かを言いかけたがため息一つと共にそれを飲み込み「お嬢様のご面倒をみせてしまって申し訳御座いません」とこちらに向かって頭を下げる。
レイはそれを受け取って気にしなくていい、と手を振る。
それよりもレイは先程からソウマが聞きたがっているであろう質問を彼らに投げかける。
「いいさ、それよりも彼女はこれからも外には出るつもりなのか?」
「それは、まあ、はい。お嬢様がそれを望むのであれば」
それを聞いてソウマがパアッと笑顔を見せる。
「実はこの子達だが、今日の依頼で仲良くなってな、これからも定期的に友誼を結んでもらいたいんだ」
その言葉に彼らが困ったような顔をしているとティニアが「大切なお友達です!」と手をギュッと握りながら力強く言ったのを見て「お嬢様が望まれるのであれば」と諦め混じりの声で了承する。
「元々交友関係の少なかったお嬢様が友人を作られたのは喜ぶべきなのでしょうが、それが私たちの目の届かないところで成ったとなると、少し複雑ですね」
「今日のことは旦那様に報告させてもらいますよ」という言葉にティニアは「うっ! はいぃ」となんとも力の弱い返事を返す。
「では私達はこれで。行きますよお嬢様」
「うん、またね! ソウマ君、レイさん!」
「うん! じゃあまた!」
去り際に思い出したようにティニアの「そういえば次はいつ来るの?」という言葉に「二週間後だ」とレイが返す。
「私達は二週間周期でこの街に来る。大体朝に来るから、広場にいるところを見つけてくれればいい」
その言葉を最後に頷き返しソウマ達に手を振りながらティニア達はその場を去っていった。
暫しティニア達が去っていた方を見つめていたソウマ。レイがぐだっと空を見つめるような格好でベンチに座っていたら彼が唐突に真面目な表情でレイの方を向く。
レイが顔だけをそちらに向けて「どうした?」と聞いた。
しかしソウマの放った次の言葉にフードが半ばずり落ちぐだっとした状態のレイは一転してその顔が引き締まる。
「あのね、僕、冒険者になりたいんだ」
☆★☆
その日の夜、ガレスの領主一族達の住まう館の執務室でガレス領主デリック・シルヴェスタ辺境伯は部下からの報告を聞いていた。
「ーーー以上です!」
「ふむ、そうか、下がっていいぞ」
「失礼しました!」と下がる部下にデリックは「ああ、そうだ、ティニアを呼んできてくれ」と言う。
部下が去り暫くしてからノックが鳴る。
「入っていいぞ」
デリックのその言葉と共に「失礼します」とティニアが部屋へと入ってくる。
まだ寝る時間には早いが今日は外ではしゃいでいたからか普段のパッチリとした目は今は少し閉じかけている。
「今日はいいことがあったようだな?」
そう笑いかけながらデリックがティニアに話しかける。すると彼女は先ほどまでの眠そうな顔から一転、パァっと弾けるような笑顔で嬉しそうに今日あった出来事を話し始める。
曰く「今日は初めての友達ができた」、「その子について行ってギルドの依頼を手伝った」などなど。
デリックはニコニコしながらその話を聞き続けるが話が終わると真面目な顔をしてティニアに話しかける。
「友達ができたのは良かった。父親としてもそれは大変に嬉しく思う。だがね、護衛から離れるのはいかんかったな。それと外に出たこともだ。もしその人達が悪い奴らで、攫われたりでもしたらどうするんだい?」
「……はい、ごめんなさい」
彼らはそんなことしない! と反論したかったが、そこはティニアとしても分かっていたため素直に謝罪する。
「まあ、そんな人達ではないからこそティニアも付いていったんだろうが、今後は気をつけなさい」
「はい」
「それで……」デリックは真面目な顔を一転して先ほど話を聞いていた時のようなにこやかな笑顔に戻る。
「楽しかったか?」
「はい!」
「そうかそうか! それで、君に聞くのもなんだが、彼らは大丈夫なのかい?」
そう言われティニアは眉を顰めながら困ったように考え込む。デリックが聞きたいのは彼等を信用できるのか、ということだ。
ティニア自身としては今日であった彼等、ソウマとレイは信用できると考えている。
しかし、彼等自身の人柄もそうだが性格を加味して厄介ごとを招くか否か、という面でもデリックは問いたいのだろう。
その顔は幼いながらもしっかりとした貴族の顔であった。
「大丈夫だと思います。それに、もし厄介ごとに遭遇してもレイさんがなんとかしてくれそうな気もしますから」
ティニアは今日会ったソウマの師匠を名乗る女性のことを思い浮かべる。
見た目は若いが彼女からはその見た目以上の何か、強いて言うならば老成した、言うならどこか達観したような雰囲気を感じ取った。
迷いのないその顔を見てデリックは、なら問題はないか、と心の中で密かにホッとする。我が子の初めての友を引き離すということは親としても避けたかった。
「そういえば、彼らが指定した二週間周期というのはどうしてだい? 彼等はここ近辺の出身じゃないのか?」
「えーっと、確か辺鄙なところに住んでると言ってましたけど、詳しい場所までは……」
そうティニアが申し訳なさそうに言う。
(まあ、それは別にいいか。他国の間諜ということも聞いた感じではなさそうだし、そういうことは追い追いにでも聞くなり調べたりすればいい)
「あの?」
「ああ、すまない、考え事をしていた。今日はもういいぞ。部屋に戻ってぐっすり寝なさい」
そしてティニアは「おやすみなさい、父様!」と言ってとてとてとその部屋を去る。
デリックはその背を見送った後、使用人の目が無いからか「ふぅ〜っ」という深い溜息を吐きながら背もたれに背中を思いっきり預ける少しだらしない格好をとる。
そして机の横に積み重なる書類を嫌々そうに見ながら憂鬱そうな顔で哀愁漂わせながらポツリと呟く。
「今日もまた、徹夜かな……」
デリック・シルヴェスタ、御歳三十五歳。辺境という冒険者たちがたくさん集まる土地として知られており、貴族にとってはその激務により敬遠される土地として知られる。
今日も彼は視力の改善としての効能もあり、何より目覚まし効果のある目薬を傍に携えて頑張る。
余談ではあるが今日ソウマが採取した珍しい薬草はこの目薬の原材料として使われている。
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