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武器屋にて

少し短めです


9/10前話を大改稿しました。

一度眼を通していただけるとありがたいです。

 

 マンスの話が終わり、二人の前を歩いていたマンスは二人に向き直る。


「いや、長いお話をすみませんね」


「いや、なかなかにいい話だった。最初、商人にしては筋肉が付いているのと姿勢が整っているのを見て何か武術でも嗜んでいるのかと思ったのだが、鍛治をしていたというのなら納得だ」


「え、よくわかったね」


「見ればなんとなくわかる」


「わからないけど」


「それはお前が子供だからだ」


 そんなレイ達のやりとりにマンスはくっくっく、と笑う。


「いやはや、あなた方はなんとも面白いですね。たまにはこういうのも悪くない。あとレイさん。あなたの見立ては間違ってませんよ。私、商人の修行時代に護身術の道場に通っていまして、最終的にそこの師範代まで登りつめましたから」


 レイはその言葉に目を見開いて驚く。


「師範代か、凄いな」


「ねえ、レイ。武器、どれがいいかな?」


 どうやらソウマはあまりこの話題に興味がないらしくその目は既に先ほどの子供用の武器コーナーの方へと向かっていた。

 その今すぐに向かいたい、と側から見ても分かるようなソウマのそわそわした挙動に思わず大人二人組は苦笑する。


「おやおや、お弟子さんはこの話に興味はなさそうで」


「はぁ〜、ま、そうだろうな。そもそも今は武器を買いに来たから分からないでもないが」


 レイはソウマとともに小さい武器が陳列している棚に近づく。

 その後ろからさりげなくマンスもついてきていた。




「うーん、どれがいいかな〜?」


「別に幾つでもいいぞ? 使ってみたい奴を幾つか買って帰ってから試してみればいい」


「けど、もったいなくない?」


「鍛冶屋へ行けば中古でも引き取ってもらえるから気にするな」


「あ、それでしたらうちの店でもしておりますので使わなくなったらうちに持っていただければ」


「うん、何でいるんですか? マンスさん」


 当然のように口を出してくるマンスにソウマはそう突っ込む。


「いえ、せっかくの機会ですので何か買うにあたって助言など出来ればと思いまして」


「あ、そうでしたか。ありがとうございます」


「いえいえ、それにしても礼儀がきちんとしてますね。レイさんの躾が良かったのですか?」


「ん? いや、私は礼儀に関しては何にも教えてない。それに今は魔法やらなんやらを教えるので手一杯だからそちらまで手が回っていないんだ」


 レイのその言葉にマンスは感心したような様子でしげしげとソウマのことを見つめる。

 その視線を受けソウマは居心地が悪そうにもじもじとした。


「そうでしたか。いやはや、随分と優秀なようで」


「まあな、それには私も助かってる」


 レイがソウマのことを褒められ自分が褒められたかのように胸を張る。

 その時ローブの上からでもしっかりと認識できる母性の象徴がさらに主張される。それに思わず周りから様子を伺っていた者たちから様々な意味の込められた視線を受けた。


「ハッハッハ、羨ましい限りですな」


「で、ソウマ君、結局どれとどれにするんだ」


「え、うーん。どうしよっかなぁ?」


 ソウマは同じようなところをうろちょろしながら、時に実際に手を持ってみながらうんうんと考える。

 レイとマンスはそれを見つめながら世間話に興じていた。




「そういえばレイさん。この話を知ってますか?」


「ん? なんだ?」


 ソウマの武器選びはなかなか終わらない。

 その間他愛ない話をしていた大人二人組、しばらくした後マンスはレイにそう切り出した。

 もちろんレイは普段“島”に籠っているのでそう言われても心当たりがあろうはずもない。

 情勢は知ろうとしても噂話のレベルはたまに外に出ただけではそんなに知れるものでもないしレイ自身にしてもあまり興味を持っていなかった。


「最近、この国と隣国との関係が悪化してるらしいですよ。それに今、世界では様々な勢力が揺れてるらしいです。あの魔国ディートレスでさえも」


 レイはシャルが治めている国の名を出されピクンと反応する。


「ほう、その話はどこで?」


「一般にはまだまだ知られることはないでしょうが名のある商会を含めた世界に拠点を持つ一部の者たちだけが知っています」


「そんな話を私にしても?」


 レイが疑問に思うのも当然だ。

 マンスの言う通りならば知っているものたちはごくごく一部、貴族レベルでさえも知らないものたちがいるということだろう。

 貴族という地位はどの国に行ってもある程度優遇される特権階級ではあるが世界中にその根を下ろしているわけではない。


「構いませんよ。特に機密というわけでもないですから。いつかは知れ渡ることです」


「そうか……」


「揺らぎますかね?」


 マンスが言っているのは魔国、及び各国の勢力図のことだろう。

 近年は大きな争いも世界は極めて平和と言ってもよかった。もちろんレイもそのことは理解している。


「さあな。だが、揺らぐにしろ揺らがないにしろ私達にとってはあまり関係ない。いや、ソウマ君には少し関係があるのか?」


 レイは最後のその一言を小さくボソッと呟くように言う。

 マンスは最後のその言葉を聞き取れず少し困惑するような顔をするがレイが「何でもない」と言ったのでそこからさらに詮索するようなことはしなかった。


「まあ、それもそうですね。揺らぐにしろ揺らがないにしろ、私たちは商売を続けるだけです」


「だな」


「ねえねえ、レイ」


 レイのローブの裾をソウマが引っ張る。

 どうやら武器が決まったので彼女を呼びに来たようだ。


「お、決まったか。それで、どうするんだ?」


「えーっとね、これとこれと、これ!」


 ソウマが指差したのは両刃の典型的なロングソードと片刃で刃の部分が反り返っている刀、そして槍である。もちろんどれも子供用の小さめサイズだ。


「ふむ」「ほう」


 二人からじっと見つめられソウマは何か選択が悪かったのかと「ど、どうしたの?」と狼狽する。


「いやいや、何の問題もない。別に変な武器を選んだということもなく誰でも使うような武器だ」


「ただ、刀ですか。また難儀なものを選びましたね。いや、この年ならそうでもないのでしょうか?」


「え、刀の何が悪いの?」


 そんなソウマの疑問にレイとマンスはお互いに目を交わし互いの考えを確認する。

 見る限り両者とも同じことを思っていそうだと二人は確信した。


「ふむ、ソウマ君。刀というのはだな」


「うん、それがどうしたの?」


「たいへん扱いづらい」


「……そんな?」


 ソウマは大人二人の比較的真剣な表情にそんなに?、と思ってしまう。


「いや、確かにしっかりと扱うことができたら強い。まあ、それはどの武器に関しても言えることだがな。その難易度が他よりも高い、いわば一種の浪漫武器の様なものなんだ」


「浪漫武器て」


 それは言い過ぎじゃないのか? という視線でレイを見つめる。


「いやいや、あながちレイさんの言うことも間違いではないんですよ」


 ここでレイからマンスに説明がバトンタッチされる。


「刀というのは古代に異世界人が伝えたといわれるもので様々な英雄たちが使った武器とされます。

 それで最初は刀を使って見るヒトも多いのですが、その扱いが難しさに多くのヒトが途中で武器を変える羽目になるんですよ」


「え、なんで?」


 まだソウマにはピンときていないようだ。

 ここで再び説明がレイに戻ってくる。


「ソウマ君、刀というのは斬ることに特化した武器というのは知っているな?」


「うん、もちろん!」


 ソウマにとっては前世の頃から憧れていた武器であるためよく知っている。

 転生した今でもテレビや雑誌で見たときの刀がとてもかっこよく憧憬の眼差しで見つめていたものだ。


「ロングソードと槍は力があればなんとか出来る。もともとロングソードは叩き切ることを前提に作られたものだし、槍にしても突くだけでなく薙ぎ払い、刃先の長さによっては斬るという動作もできる。

 それな対して刀だが、基本斬るという動作しかできず鍔迫り合い、武器の競り合いなどをすればすぐに刃がこぼれてしまう。

 要は使い手を選ぶ武器なんだ」


 そしてレイは若干意気消沈したソウマに一言最後に付け加える。それは希望を込めてソウマが“転生者”であるが故の期待。


「まあ、もしかしたらソウマ君にも適正はあるかもしれんがな」




 ☆★☆




「で、本当にその三つで良かったのか?」


「うん、ありがとうレイ!」


 その後、結局ソウマはロングソード、槍、刀の三つの武器を選んだ。

 最後のレイの言葉が決め手になったのかそれとも元々心で買うと決めていたのか刀という選択肢を下ろすことはなかった。


 マンスに見送られながら店を出た二人はまたどこへ行くでもなくふらついていた。

 新たに手にしたソウマの得物三本は最初レイが持っておこうか、と尋ねたがソウマが拒否し風呂敷で三本まとめて包んで背負っている。


「ふむ、まだ日が沈むまでに幾らか時間があるがどうする?

 まだしばらく回るか?」


「うーん、今日はギルドに行かないんだよね?」


「そのつもりだ」


「じゃあ、僕はもういいかな」


 肩からずり落ちそうになるその荷物を掛け直しながらソウマが言う。

 彼自身としてはギルドに行けるのなら行ってみたかったが今日いけないのであればこれで満足という心境になっていた。


「そうか、これからもこの街には来たいか?」


「……うん、来たい。来れるの?」


 少し逡巡した後、ソウマはそう答える。彼にとってはまだギルドも見ておらず、それを含めないにしてもこの街はたった一度訪れただけでは満足できない楽しさを持った街だった。


「今日来れて次が来れない道理もあるまい。明日からは修行も本格化するからそんなに来れないが、二週に一度くらいは連れてきてやる」


「じゃあ、修行も、この街に連れてきてくれるのも、お願いします。師匠・・


 ソウマが足を止めレイに頭を下げた。

 周りが歩きながらこちらに興味深そうに目をよこす者もいるが決意を固めたソウマに、そしてそんな実感のできる確かなソウマの成長を嬉しく思うレイが気にするはずもない。


「クッフフ! 師匠、か。いいな。これからはそう呼べ。ビシバシしごいてやる」


「うん! 頑張って強くなるよ!」


(強く、か。ソウマ君の強さはどんなものになるのか。先が今から楽しみだな)




 二人は日が傾く前という早い時間帯に街を出てそのまま街が見えないほどに離れた場所で家へと転移して帰っていった。






誤字脱字や文章の違和感などの指摘大歓迎です。

これからは幾つかまとめてでなく一話ごとに出していくことにします。間が物凄いことになりそうなので。

更新は不定期です。


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