街歩き
この話も後半はほぼ説明会っぽい感じに
誠にすいません
9/10大改稿しました。
一度眼を通していただけるとありがたいです。
レイとソウマの二人は昼ごはんに露店に売られている料理を幾つか買いそれを歩きながら食べていた。
「ムグムグ、んっ、うーむ、タレはなかなかに美味だが肉が微妙だな。少し臭みが残っている」
「モグッ、そうかなー? そんな臭わないと思うけど………」
二人はお互い同じ商品を食べながら感想を述べあっている。レイはなかなかに厳しい評価だがソウマはそうでもないようだ。
今二人が食べているのは『うちに代々伝わる秘伝のタレ、一度食べたら病みつきになるよ!』という宣伝文句で売られていた肉串だ。
その店から香る食欲そそるタレの匂いと肉汁の弾ける音が二人の琴線に触れレイとソウマで二本ずつ、計四本を購入していた。
ちなみに値段は一本百二十ミル、少し他の店と比べて高いがその値段以上の味を出しているように感じる。実際その店もかなり繁盛していた。
レイとソウマはそれを食べた瞬間二人は溢れる肉汁とタレの旨味に目を見開き思わず「美味しい・・・」と声を揃えて呟いていた。
それを踏まえての先ほどのセリフである。
ちなみに言葉とは裏腹にレイはかなりご満悦な様子であり内心では(かなりの当たりだな)と喜んでいる。
このような露店では出されている物の味がピンからキリまで幅広く一種のギャンブル要素が含まれている。大体は繁盛しているところやいい匂いのするところへ行けば美味しいものには巡り会えるが、たまに目立たない名店のような所もあるのでそれを探し、挑戦してはハズレだったということを繰り返す者もいるらしい。
というかレイが以前していたことだった。
「ふむ、次は何が食べたい?」
「うーん、何か甘いものかな?」
二人はそう話しながら歩いていた。
先ほどのドンガの店から離れてからそろそろ昼時であることに気づき二人は露店を冷やかしながら気に入ったものがあればその都度買っていくということをしていた。
先ほどの肉串の店を含め今の時点ですでに五軒ほど回っている。
ソウマはまだまだ腹には入るがそろそろやめないとこのまま買い続ければ満腹になって碌に動けなくなると考えていたためそろそろデザートを食べたかったところだった。
ちなみにレイはまだまだいける。普段はそれほど食べないが食べようと思えば成長期真っ只中のソウマよりも多く食べれるレイである。
普段であればもっと遠慮なく買っているがソウマの手前彼のペースに合わせて行きたかったのだ。
二人はてくてく歩きながらヒトが多く行き交う大通りに集っている数々の露店の中から甘いものが食べれる店を探していた。
「お、ソウマ君。あの店なんかはどうだ?」
「え、どこどこ」
レイが指差すその先、そこには《豆ジャムパイ》なるものが売られているところだった。
要するに餡子がパイ生地に包まれて焼かれたものである。
その店は他と比べてあまり客が寄り付いてなかった。
二人はヒトのいないその店に歩みより売られているものを覗き込んでいた。
パイ生地の隙間から覗く黒いジャム、餡子は前世日本人であったソウマの興味を引くには十分なものであった。
他のヒトはここの店の甘い香りには気づいてはいるがその黒いものに少々の抵抗感を感じるらしく遠目からチラチラと覗いているだけだった。
「どうする? ソウマ君」
「うん! これ食べたい!」
ソウマは餡子が使われているスイーツと分かった途端買うとすでに心で決めていたため問われた瞬間に即決で答えた。
「じゃあ店主、これ二つ」
「あいよ! 毎度あり!」
パイを売っていた青年が少し気落ちしていた顔から一転、溌剌とした笑顔で接客した。レイは金を払って熱々のパイを受け取り、片方をソウマに渡した。
ちなみに店番を務めていた青年、自分の料理に自信は持っていたがこの土地においてこの食材はあまりポピュラーではないことを理解しており、興味は示されてもあと一歩を踏み出してもらえず、なかなか買ってもらえないという現状にもどかしく思っていた。
そこで現れた二人の救世主、思わず普段の倍ほどの声で接待してしまった。
そんなことは露とも知らない二人はまた足の赴くままふらりと歩き始めていた。
パイを買った二人はサクサクと音を食べながら歩いていく。
「うまうま、うまうま」
ソウマは速攻で食べ終わっていた。
ソウマは久々の和の甘味にあっという間に平らげてしまって少ししょんぼりしていた。
レイはそこでソウマをチラリと見てから半分ほど残っている手元のパイを見つめる。そして少し考えた後、遠くに見える先程このパイを買った店を見つめた。
その店はレイ達が買っていったのを見ていた者たちが我こそはとばかりに群がっていた。今並んでも少々の時間がかかりそうだった。
そしてレイは小さい溜息を吐いた後残った半分のパイをソウマに「ほい」と渡した。
「え、いいの?」
「ああ、私はもう満足だ。遠慮せず食え」
レイが羞恥から少し顔をそらしながら言う。
それを見てソウマは「ありがとう!」と言ってサク、と今度は先ほどよりもゆっくり食べ始めていた。
☆★☆
「ところでだ、ソウマ君」
「ん? 何、レイ」
何気なしにふらふらと彷徨い歩いて数分ほど、レイはとある店を見つけ、ソウマに話しかけた。
「うむ、これから魔法を教えたりするだろう?」
「うん」
「その他にも並行して一般常識や専門的な知識、それと護身代わりに近接での戦闘の仕方も教えようと思っていてな」
「おー! そうだったの。それで、どうかしたの?」
「うむ、何かソウマ君に武器を買っておこうと思ってな。ほら、あそこの大きな店、武器なんかもいろいろ取り扱っているらしいぞ」
レイが指し示す先、そこには他よりも一際大きな建物が建っており客らしきヒトが多く出入りしていた。
そこの看板には『武器をお買い求めならこのラーダル商店へ! 訓練用の武器も多数取り揃えております』と書いてある。
「へー! 武器かぁ、剣とか、槍とか?」
「まあ、最初はソウマ君が気に入ったやつを使っていけばいいだろう。幾つかの種類を買えばどれが自分と相性がいいか自ずと決まるだろうからな」
そう言って興奮して騒ぐソウマを諌めながら二人は店の中へと入っていった。
店の中、其処には冒険者らしきヒトからソウマのような子供まで幅広い客層が武器を買うべく訪れていた。
売られている武器は実戦で使えるものから木製のものや子供用の小さいサイズの武器まで、武器専門の店なので当たり前ではあるが見渡す限りの武器にソウマはやや圧倒されていた。
ソウマはレイに「あそこに行ってもいい?」と子供用のコーナーを指差しながら言う。元々ソウマに武器を買ってあげるためにこの店を訪れたので否と言うはずがなく「もちろん、取り扱いには気をつけろよ?」と了承して送り出した。
レイに関しては自宅の倉庫の方が大きく、圧倒されることもなかったのだが並べられている武器、そのうちのロングソードを掴み上げそれをしげしげと眺めながら少し感心しながら呟いた。
「ふむ、思っていたよりも質がいい。見た限り量産品だが、これを見るに侮れんな」
「そのとぉーりですっ!」
「うおっ!」
いきなり話しかけられすっかり油断していたレイはビクッとなって剣を手から落としそうになった。
「な、なんだ?」
「いえいえ、そこのお姉さん! 中々に嬉しいことを言ってくれますねぇ」
レイに話しかけてきたのは黒髪をぴっちり七三分けにしてモノクルをかけ、カイゼル髭を蓄えたニッコニコのスーツをピシッと着こなした三十代後半あたりの見た目の男性、この店の関係者と思われる。それが大げさに手を広げながらレイに近づいていた。
レイは女性にしては身長が高いほうなのだが、そのダンディなおじさんはそんなレイよりも頭一個分高い高身長だった。
「ふむ、それでどうしたのだ?」
「え、何、レイ。どうしたの?」
レイの吃驚した声、普段は聞かないその珍しい反応にソウマはレイの元へと戻ってきていた。
「おや、こちらは?」
「ああ、私の弟子のようなものだ。それで、なんの御用で?」
「おお! そうでしたそうでした」
そこで男は懐から名刺を取り出し、レイとソウマに差し出す。
「ふむ? ふむふむ」
「おーっ、名刺ってやつだ」
レイは名刺に書かれている名前とその肩書きを見て感心したような声を出し、ソウマは前世を含めて初めて受け取る名刺に少し感動する。
その名刺には『ラーダル商会支部長 マンス・ルーセ』と書かれていた。
「確か、ラーダル商会っていうのは・・・」
「知ってるの? レイ」
「ああ、ラーダル商店というのはな」
ラーダル商会、それは世界においても有数の規模を誇る大商会である。
食品、武具、生活用品など商品を幅広く取り扱う商会であり、その安価さと清潔さから庶民層からはもちろん貴族層からも厚い信頼を受けている。
そして、そんな商会の支部長というのはーーー
「え、かなりすごい人じゃん」
「その通りだ」
「いやいや、照れますね〜」
そう言ってマンスは照れ臭そうに頭をかいている。
「それで、用というのは?」
「ああ、用というほどでもないんですが、つい貴女の言葉が嬉しくて、声をかけさせていただきました」
「何か言ったの? レイ」
「うむ、それがだな」
レイはソウマに先ほどレイが言ったことを説明する。マンスは口を挟むでもなく横からそれをニコニコと聞いていた。
「あ〜、確かにここのって凄そうだもんね。見ると冒険者さんたちも買って行ってるみたいだし」
「そうなんですっ!」
マンスはソウマのことをビシィッという効果音が出そうな勢いで指をさした。
「これこそが私たちの夢の形。この商会はもともと武器を取り扱ってはいなかったのですよ」
「ほー、それは知らなかったな」
レイはラーダル商会のことを知ってはいたがどんな商品を売っているのかまでは知らなかった。
だがそれは一般のヒトにも言えることだろう。
それ専門の店として名が知られているならばともかく、いろいろなものが取り扱われている店が何を扱っているかを把握しているヒトは少ない。
「この街は辺境、通常の街よりも危険が大きく秘境も近くに存在するため冒険者たちも多く活動しています。商会はこの街に進出するにあたってとあるものが必要だと考えました」
「それは?」
ソウマが興味津々に問いかける。
レイは少し話が長くなりそうだな、と思いつつも話を黙って聞き続ける。
「それは、武器屋です」
マンスが戸棚に陳列されている武器を感慨深そうな視線で眺める。
「冒険者が活動するに必須な物、それは武器です。もともとこの街には自営業の鍛冶屋、他の商会の武器屋が多く点在しており、少しでも客を得るためにしのぎを削っています」
「本来ならそこにまた新しく入るというのは難しい」
「ええ、その通りです」
レイの言葉をマンスが肯定する。
「もともと武器を扱っていなかった私達にはそれを卸すための伝手もありません。そこで白羽の矢がたったのが私です」
三人は店内を歩き回りながらマンスの話を聞き続ける。
「実は私、こう見えても五十代でしてね。あれ? お二方あまり驚いてませんね? この話しをしたら大概のヒトは驚いてくれますのに」
マンスの見た目は三十代半ばだ。普通であれば驚くのだろうがレイは自分はもっと長生きしているし、ソウマも近くに年齢不詳の謎存在のレイがいるので大して驚かなかった。
「ごほん、まあ気を取り直して。私、昔に鍛治師を目指してたんですよ。自分の打ったのを店頭に並べるのが夢でしてね。まあ才能がなくその時は夢半ばで諦めたのですが、幸い商才はあったらしく今の会頭に拾われて元鍛治見習いということを認められここを任されたんです」
店をぐるりと一周し終わりレイがマンスに話しかけられた場所まで戻ってきた。
「苦節数十年、伝手もなく鍛治の実力もなく、鋳造にこだわり続け品質を限りなく高め今に至ります。この街での立場も確固たるものになり今や商会の主力の一つにまで登りつめました。
そして今の我々に至ります」
ソウマもレイもマンスの話を興味深く聞いていた。
そしてソウマは考える。今日出会った二人の大人。夢を違う形で実現した商人、今もなお自分の夢を追い続ける職人。
自分はこの世界で何になりたいのか? この日から彼はそう真剣に考えるようになった。
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