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再会

今日から三日連続投稿です

 

 その日、レイは予定通り昨日ソウマの誕生日のパーティをした手前それほど豪華にはできなかったが、ソウマが全属性持ちだったことを祝う記念パーティーをささやかながら開いた。


 レイはいつも通り楽しんでいたが、ソウマは「楽しいけどパーティってこんな頻繁にやるもんだっけ? 」と首を捻っていたが楽しいので別にいっか、と呟き目の前のご馳走を楽しんでいた。




 ☆★☆




 ソウマがぐっすりと寝入った頃、レイはシャルへ連絡をしていた。

 幸いシャルは今日の仕事が終了した頃合の時間だったらしく直ぐにレイの連絡に出てくれた。


『あら? 珍しい、お姉様の方から連絡だなんて。何かありました?』


「ん、いや突然だが明日ソウマ君をどこかの街に連れて行こうかと思ってな。

 流石にここにいたままじゃ身につく常識も身につかん。まあ、こもるばかりじゃ知る事のできない常識を教えておこうと思ってな。

 だから街に入るためにお前に私の身分証を再発行して欲しいんだが」


 レイが魔国ディートレスに保証された許可証を発行したその場にはシャルも居たのでそのことは彼女も知っている。

 しかしレイは彼女が忙しいことを理解しており彼女の手を借りるような手段は余り取りたくなかった。


『はあ、そういうことでしたらすぐにでも準備しますが……。それってお姉様がこちらにいらっしゃるってことですか?』


「ああ、そのつもりだが?

 丁度シャルに会えるいい口実ができたと思ったんだが……」


 それも本当のことである。

 レイは丁度この機会に数年ぶりにシャルに会ってみたいと思っていた。


 魔道具の向こうでガタガタッという音がする。

 レイは疑問に思いながらも、もしかしたら今は何か都合が悪いんじゃないかと少し不安になってきた。


 もちろん本当はそんな事はなくシャルは久々にレイに会えると分かり少し慌てただけである。


『も、もちろんよろしいですよ。

 私がお姉様を拒むはずがありません』


 レイはそう声が返ってきたことにホッとする。


「そうか、なら良かった。

 無理を言ってるものかと思ったからな」


『いえ、その程度ならばたいして手間もかかりませんし、お姉様と会えるならそれくらい大したことありません』


 レイはその言葉に少し顔を緩める。流石に今の言葉はレイの心にくるものがあった。


 要するに照れた。



「そ、そうか……。

 じゃ、じゃあ早速だがそちらに行かせてもらうぞ!」


『はい、分かりました』


 レイは転移を発動させる。

 音もなく彼女の体がそこから消え、その部屋には誰もいなくなっていた。




 ☆★☆




「ん? おぅっ!」


 レイがシャルの元へ転移した途端、体に衝撃と僅かな花のような優しい香りがレイの鼻へと届く


 レイが転移でシャルの元へ飛んだ瞬間、シャルはレイに抱きついてきた。



「お久しぶりです。お姉様」


「ああ、久しぶり、シャル。

 会いに来るのが遅くなってすまなかった」


 レイはそんな抱きついて来たシャルをそっと包み込むように抱きしめる。


「お前も久しぶりだな。レミア」


「ええ、久しぶりです。レイさん」


 そしてレイはシャルの肩越しにレミアに話しかける。シャルはレイと最後に会った時から全くと言っていいほど見た目が変わっていない。(ちなみにシャルの身長はレイの頭半個分ほど小さい)

 しかし、レミアはレイと最後にあった時から少し大人っぽくなったように感じる。


 ちなみにレイがレミアと最後にあった時は十代中盤頃の見た目で今は後半頃にまで成長したような気がする。あくまでレイの主観であるため本当にそうかはよくわからないが。


「ふふ、シャルはまだまだ甘えん坊だな。

 自立はまだ早かったか?」


 レイはギュッと抱きしめてくるシャルに優しく微笑みながらそう言う。

 シャルはその端正な顔を少しムッとさせながらレイに反論する。


「私をそんな子供扱いしないでください!

 ま、まあ久しぶりにお姉様会えたことは心から喜んでおりますけど……」


 レイはそんないじらしい事を言うシャルに感激しながらさらにギュッと抱きしめる。


 そしてシャルはレイにギュッと抱きしめられ華のような笑顔をパッと輝かせながらさらに強く彼女を抱きしめ返す。

 その二人の周りにはどこか甘い、桃色な空間が広がっていた。




 そんな二人を側から見て呆れたような顔を浮かべるヒトが一人。シャルのお付きの侍女、レミアである。



(ハア、相変わらずね。このお二方は)



 その心中は普段のような敬語ではなく昔のような素の口調になっていた。

 数十年前、レミアはレイとシャルの事を一緒に旅をしていた頃から知っている。その時国は荒れに荒れていた。そしてそんな荒れた国を平定し、成り行きでシャルが魔王として混乱を収めることとなったのだ。

 魔族はある意味特殊な長命種。魔力が高ければ高いほど永き時を生き、その身体は若さを保つ。

 その当時のことを知る者は魔族が多く住むこの国にはそれなりに存在する。

 レミア含め彼等魔族はレイとシャルの師弟の圧倒的な武力は戦いを重んじる彼等の気質から尊敬するに値するものだった。


 そしてシャルは気付かれてないと思っているが彼女がレイに想いを寄せているのはこの城にいるレイとシャルのことを知る者ならほとんどのヒトが気付いていることでもある。


 ただレイは本当に気付いてないが。


(ハァ、本当にもうくっつけばいいのに)


 因みにだがこの世界では余り歓迎はされないが同性婚も認められている。


(あの程度の触れ合いは旅をしていた時は日常茶飯事だったって言ってたし、レイさんもシャルのことを娘か妹みたいにしか見てないわね)


 レイ自身としては元が男であったために前世よりも遥かに長く生きているとはいえ男をそのような目では到底見ることはできない。かといって女性ならいいのかと言われてもレイ自身が判断できない。


 肩をすくめながら小さくやれやれ、とレミアは首を振り「先は長いわね」とぼそっと呟く。


「む? どうしたのですレミア。そんな首を振ったりして」


「いえ、なんでもございません。

 それよりも魔王様、レイ様に許可証の発行をペンはこちらに」


「あら、そうでしたね」


 レミアはすぐさま仕事用の口調に戻し対応する。

 そしてシャルにサッとペンを渡し話をそらす。

 そのペンをシャルは受け取りサラサラと紙に必要事項を書き込む。


「おお! 恩にきる!」


「いえいえこの程度。はい、どうぞ。

 これでいいですね?」


「ああ、問題ない。ありがとうな、シャル」


 レイは新しく作られた許可証をローブの中にしまい込む。


「そういえば、他の奴らは元気なのか?」


 ふと何気にレイが聞いたのはこの国でのいざこざの際に知り合った者たちの事だ。彼らは今でも国に仕え軍や政治においても重要なポジションにいるという。


「ええ、彼らも元気ですよ。ただお姉様と仕合がしたい、と中々うちに来ないことに文句を言っていましたが、ねぇレミア?」


「そ、そうか……それは本当に済まなかったが、変わらんな、彼等も」


 遠回しに自分が責められたことによろめきながらも何とかシャルに返事を返す。


「はい、そうですね。特に将軍は『魔王様と連絡する暇がありながら来ないとは何事か!』と言って部下をしごいておられました」


 関係のないやつに八つ当たりをするなよ、と思いつつレイはその見知らぬ部下とやらに憐憫の情を抱く。


「なんか、すまないな。今度相手しておいてやると伝えておいてくれ」


「ええ、これで将軍の機嫌も少しはよくなるでしょう」


 レイは申し訳なさそうな顔をしながらレミアにそう頼む。レミアは将軍の荒れる様子を思い浮かべクスッと笑う。


「まあ、彼は実質この国のナンバー2ですからね。

 お姉様に負けっぱなしというのも性に合わないんでしょう」


「何故私なんだ、シャルでもいいだろうに」


「仕える主人に決闘申し込む馬鹿が何処にいますか」


「ム、それもそうだな」


 二人はうふふと笑いだしまた二人の周りを桃色空間で包み出す。

 これでもレイはシャルの気持ちに気づかないのだから恐れ入る。

 それをレミアは呆れながらも数年ぶりの再会なら致し方なし、と一切気にしないようにメイドらしく壁際でじっと立っている。


 そしてそんな彼女を見てレイはここに来る前にレミアにあげようとして持ってきた物があったことを思い出した。


「ああ、そういえば」


 レイはレミアの方に歩み寄り懐からある物を取り出す。そしてそれをレミアに渡す。


「……これは?」


「見ての通り“魔剣”だ。双剣型のな」


 レミアに渡されたそれは二振りの魔剣。現在は無骨で丈夫そうな黒塗りの鞘に覆われている。

 その双剣は片手で持つ分にしては少し長めだが膂力にも優れている魔族なら簡単に扱えるだろう。


 レイはレミアに剣を抜くよう促す。


 レミアはそれを察しそのうちの片方の剣をそっと引き抜く。


「「おおっ……!」」


 レミアとレイの隣からそれを見ていたシャルから感嘆の声が漏れる。


 剣身が薄紫色に輝きその剣自体が薄ぼんやりと光を放っているように感じる。

 その引き込まれるような美しさに二人は息を飲んでいた。


「確かレミアは双剣を好んで使っていただろ?

 この間、倉庫を久々に整理しようと思ってやってたらそれが出てきた。

 昔ならコレクションとして大事にしていただろうが、今はそれほどでもないからな。

 それに他にもそれと似たような奴はあるし、せっかくだから来るついでにレミアに渡そうと思ってな」


「ほ、本当にこれをくれるんですか?!」


 レミアは驚きで目を見開く。

 レイならばその言葉は嘘ではないだろうがそれでも驚く。この二振りで貴族が住む家が一軒建てれるだろう程の価値があるのは武器を扱い武器を愛する彼女であれば一目見て分かった。


 それ故レミアは躊躇った。

 さすがに高価すぎて受け取れない、と。


「まあまあ、受け取っとけ。

 せめてもの感謝の印だ。愛弟子がいつもお世話になってるからな」


「ま、愛弟子だなんて、そんな」


 レイにそう言われて頬に手を当てながら首を振る自分の仕える主人の姿を見てレミアは落ち着いた。というかそれで隠せてるつもりなのか? と呆れながら。

 側から見たら完全にもろバレである。


「それでシャル。最近国の方はどうなんだ?」


「国ですか? まあ最近はまたなんか怪しげな勢力が動いてるらしいですが、よくわかりません」


 実はシャルは成り行きで王になったこともありあまり政務に携わっていない。


 重要な書類などは国王として目を通したりしているがそれ以外は他の大臣や宰相に丸投げしている。

 元々はレイと放浪の旅をしていたのだ。

 単純な戦闘力であればこの国でもトップクラスの位置にいて、頭もキレるが政務に携わる能力までは備わっていない。


 そして今の大臣や宰相ら含めた重鎮達は昔より国に仕えており、混乱期であった数十年前であっても彼らという存在のおかげで範囲はこの魔国の首都とその周辺だけで抑えることができた。


 しかし、数十年前に収まった混乱が今もまた起きようとしているらしい。


「別にいいんですけどね。私の位置に誰が座ろうとも。そしたらまたお姉様と旅ができますし」


 だがあまりシャル自身は気にしていないようである。


 これにはレイも流石に王になったのなら責任感を少しは持て、と軽く叱った。


 シャルはしゅんと落ち込む。


「はぁ〜っ、ま、望んでついたわけではないとはいえ、もう少し頑張れ、な?」


「……はい」


 レイはしゅんと肩を落としたシャルの頭をしょうがないな、とばかりに撫で回す。


「じゃあ私はそろそろお暇させていただく」


「あ、もう行くんですか?」


 その声から察するにシャルはもう少しレイにいて欲しかったようだ。

 レイは苦々しい顔で「まあな」と頷く。


「そろそろあいつらが来そうだ。さすがに今の時間帯にあいつらに会うのは面倒くさい」


 しばらく会ってないとはいえあの熱血漢と陰険に会うのはレイとしてはいつでも遠慮したいのだがシャルに会いに来る以上そうもいかない。

 だがなるべく遭遇しにくいような時間帯にこっそりと来ている。こんな真夜中に会うというのはお互い暇な時間帯というのが一番の理由ではあるがレイとしてはそちらの方にも全体の何割かは占めている。


「え? あら、本当ですね。ならしょうがないですね……。もっとお話をしていたかったのですが」


「すまんな、シャル。

 うわっもう来る。ではこれにてごめん!」


 ドタドタと足音が聞こえ始めたところでレイは焦燥を滲ませながら別れを告げてその場から消え去った。




 ☆★☆




「ああ、行ってしまいました……」


 そそくさと逃げるようにして消えていったレイに対してシャルがそう呟く。


「まあ、仕方ないですね。今日の訪問も元々予定ありきのものだったわけですし。っと、来ましたよ」


 そうレミアがシャルに答える。そのときドアがバン! と大きな音を立てて開けられた。


「レイ殿は何処だっ!」


「いやいや、もう逃げてるでしょうに。

 あの方は元からあなたが苦手でしたからね〜」


 そこから入ってきたのは可愛らしいイチゴのパジャマを着ているガチムチに体が鍛えられた初老が過ぎた頃の武人に背中を丸め黒いローブを着た目の下に隈を作った老人の二人。この二人はちょくちょくレイとシャルの会話の中にも出ていたこの国の将軍と宰相、武と文のツートップである。


「ム? 少し遅かったか」


「はぁ、こんな夜中に騒々しいですね。レイさんは次会った時に相手をしてやるとおっしゃっていました」


 部屋の中をキョロキョロと見渡す将軍にレミアは溜息を吐きながらそう返す。


「おぉ! そうかそうか、それは次が楽しみだな! ガッハッハ!」


 この国で将軍と呼ばれる男はそう言って豪快に笑う。


「はぁ、これでこいつも暫くは大人しくなりそうですね。部下からの苦情には対応すらするのが面倒くさかったですから。そもそも本来ならたかが一兵士が私の部屋に直談判することなどなかったのに、今回はまとめてそれが来るってどういうことですか? そもそも貴方はいつもそうだ」


 そうやってブツブツと将軍に向かって説教と愚痴がおり混ざった言葉を吐くのは宰相。

 そして将軍にゆらりとした足取りで顔を俯けながら近づくシャル。気のせいか身体全体が小刻みにプルプルと震えている。


「………将軍?」


「はっ! 何でしょうか、魔王様」


「あなたのせいで・・・お姉様が行ってしまわれたでしょうがーーーッ!!!」


「え? いやそれ我輩何の関係も、ギャァァァァァァァァッ!!」


 シャルは問答無用とばかりに回し蹴りで将軍を蹴り飛ばした。将軍は悲鳴の余韻を残しながら窓から落ちていく。

 ちなみに窓ガラスはこうなることを予想していた有能メイドのレミアが事前に開けていたので問題ない。


「フゥーっ、まあこれで良しとしますか」


「ヒヒヒッ、これで明日から兵士たちの苦情も無くなりますかね〜。理不尽な八つ当たりがどういうものか今のでわかったでしょうね〜」


 宰相は若干スッキリとした表情で窓から落ちていった将軍を眺めながらそう呟く。

 将軍は植木に頭から突っ込み下半身だけがそこから生えているようなマヌケな姿を晒している。そして将軍はパジャマのズボンも可愛らしいイチゴ柄である。


「ふんっ、理不尽な八つ当たりではありませんっ。正当な八つ当たりです!」


「八つ当たりに正当も何もないと思いますがね〜。あ、そういえば片付けて欲しいものが、例の件で……」


 そう言って宰相はどこからともなく取り出した幾つかの書類をシャルに渡そうとする。


「今は別にいいでしょう」


「あぁ、まあそうですね〜。じゃあこれはまた明日ということで。ふぁ〜あ、では私はこれで」


 宰相はドタバタしていて忘れていたが今が真夜中だということを思い出す。

 そして宰相は欠伸をしながら自分の部屋へとゆっくりとした足取りで戻っていった。


 それを見送ったシャルはちょうど窓を閉めているところだったレミアに声をかける。


「はぁ、最後の最後で疲れました。そろそろ寝ましょうか。行きますよ、レミア」


「はい、魔王様」


 そうしてシャルもレミアを連れ添って自分の寝室へと向かっていった。





これ、GLは保険ですっていうタグ外したほうがいいのかな? そんなハードなやつはするつもりはないんだけど・・・

誤字脱字や文章の違和感などの指摘大歓迎です

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