第三話 5
シャルデウスには、得体の知れない部分があり言葉や態度が一致していない事が頻繁にあった。彼は言葉とは裏腹な行動をよく取るため、他の者達も彼を完全に信用しているわけではない。
そもそも、彼等には揺るぎない確固たる仲間意識がほとんど無いに等しい為、彼等同士でいつ何時殺し合いを始めてもおかしくないという危うさも秘めており、己の目的に必要ならば、裏切りも共闘も潰し合いも構わないというスタンスの集団である。
しかし、それでも五体で集まっているのは“王”と呼ばれているただ一人の存在の為だけなのである。彼等にとって“王”とは絶対的な存在であり王を裏切り逆らうということは、死ぬ事と同等の意味を持つ。ゆえに王を裏切らないのであれば、彼等同士で瓦解しようが何をどうしようが、問題はない。
「‥ガロアが、あそこまで荒れたのは正直、予想外だったけど、まぁ、見てもらいたかったものは見せられたから良しとしようかな。‥一人顔を見てないヤツもいるけど」
「そういえば来てないわね。どこへ行ったのかしら」
「さてね‥?僕にも検討がつかないよ。昔から興味のない事はしないヤツだったからね」
「そうね‥。それはそうと、いい加減目的を話しなさい。アナタが何か企んでいる事は、私も、アマツデュラもとうに気がついているわ。それとも‥身体に直接訊く方が好みかしら?」
ミラエンテは、微笑みながらシャルデウスに言った。しかし、その言葉には喜びや楽しさといったものを含んでおらず、焦れた感じのような怒気のこもった言い方だった。もしも、シャルデウスから真っ当な回答が得られないのであれば、今この場で殺し合いを繰り広げることも厭わない、とまでミラエンテは考えていた。
「ミラまで殺気立っちゃってヤだなぁ。みんなギスギスしすぎなんだよ。少し落ち着きなよ」
「あら?私はいたってクールよ“シャルデウス”‥ただ私は、アナタの目的が何なのか知りたいだけ。目的さえ判れば特に何もしないわ」
ミラエンテは、目を細めシャルデウスを睨みつける。ミラエンテからは静かで、しかしそれでいて昏くて重い、まるで真っ黒なコールタールのようにドロリとした粘着質な殺気を出していた。彼女は最早、殺気を隠そうともしていなかった。
「わかったよ‥。ミラと、アマツデュラには話すよ。と、いうか最初からこっちが本題だよ。本当は“みんな”に聞いて欲しかったんだけど」
シャルデウスは、降参といったように両手を大げさにあげながら答える。が、ミラエンテは、殺気をすぐには押さえようとはしていなかった。
「ミラ。いい加減殺気を引っ込めてよ。ちゃんと話すから」
髪を指で弄びながら、シャルデウスはミラエンテに言った。ミラエンテからハッキリとした濃密な殺意を向けられても自分のペースを崩そうとしなかったのは、余裕からか、あるいは自信から来たものなのか定かではない、しかし彼は飄々とした態度を崩すことはなかった。
「ふぅ‥わかったわ。シャル」
しばらく睨みつけるようにシャルデウスを見ていたが、やがてミラエンテは、素直に殺気を解いて、それまで漂っていた真っ黒なコールタールのようにドロリとした粘着質な殺気が消えた。ミラからすれば、“王”を護るという一点ではシャルデウスと意識は同じという認識があったため、シャルデウスと殺し合いをするのは容易いが、互いに争っても最終的にメリットはないと思った。
何より“王”は彼女らにとって絶対的な存在であり、王を護る者が一人でも欠けるような事があれば、身の危険がそれだけ増えるのである。どちらが欠けたにしても、それだけは彼女にとっても避けたい事態だった。




