第三話 1
陽の光が当たらない、薄暗く、ボロボロに壁が崩れている、今はもう使われていない廃墟に男女が集まっていた。男女の人数は男性が四体で女性が一体。年齢が、みんなバラバラな集団である。これだけならば大学生や社会人の集団でも通りそうなものだが、場所が場所だけに、そうではない。
何か、“ワケ”有りな集団であることは明白であった。とはいえ、犯罪者やテロリスト的な集まりではなく、犯罪など一切犯してはいない者達である。ただし、それはあくまで“人間”としてみた場合の話であり、五体の集団は人間ではない。
彼らは特区と名の付く遥か前から存在し、特区をまとめる“王”を守護する者。しかし、この五人はただの闇の眷属ではなく、最も王に近い力を持つ“神魔”とも呼ばれている。神魔一体一体が持つ力は非常に強大で、古くから伝わる伝承では一国を単体で滅ぼせる程の力を持つとも言われている。
「こんな所に、呼び出して一体何の用なのかしら?シャルデウス?」
赤みがかった長い髪を細い指先でくるくると弄びながら、艶っぽい声をした女が、表面がボロボロに崩れている柱に背を預けて立っている男に声をかけた。年齢は、25〜6くらいで、道ですれ違った人間ならば、まず振り返って見てしまう程の美貌の持ち主だった。
「んー。何の用っていうか・・ただ単純に久々にみんなの顔が見たくなったから?」
男は、缶バッジをたくさん付けたキャップを取って、目の前でくるくると回しながら、おちゃらけた様子で答えた。キャップを取ると、薄めの銀色に染められた癖っ毛が覗いている。その癖っ毛と、仕草から猫を思わせる風貌の男の口調からは、寂しいからだとか旧友と再会したいという気持ちが伺えなかった。
「・・また何か企んでいるのか?」
二人から、離れた所に座っていた低い声の男が声を発した。その男は、和装の格好をしていて、戦前の一昔前の人間をイメージさせる。二人より、歳は上で落ち着いた雰囲気を出している。
「ヤだなぁ。ミラエンテ、アマツダラ。僕は何も企んでないよ?本当に、みんなに会いたくなっただけ」
キャップの男は、笑みを浮かべながらそう答えた。一見、爽やかな好青年に見えるが腹の中では、何を考えているのかわからない、油断のならない男だった。




