第ニ話 40
ただ、揺ら揺ら揺れているだけなのだが、その光景は人間とは思えない程で異様で恐怖を覚える。
まるで、ホラー映画でも観ているような怖さ。
そんな風に、思いながら宗介を見ていると、宗介がゆっくりと立ち上がってきた。
両腕を前に、ダラリと垂らして前傾姿勢で、蓮を睨みつけている。
宗介の眼は殺意に満ちており、蓮は目を逸らすことが、できなかった。いや、目を逸らせないというよりは、目を逸らしたら、間違いなく斬られる。蓮は、“普通”の戦闘なら闘ってもまず死なない、が、相手は退魔の一族である。宗介の今の状態のままならば行動不能にされれば間違いなく殺される
蓮は、目をそらすことができなかった。
「ぎィぃィィィ!!」
しばらく睨み続け、互いに機を伺っていたが、先に、動いたのは宗介だった。人とは思えないような奇声を上げて蓮に襲い掛かってきた。
宗介の意識は無くなっているのか、今まで見せていたキレのある動きが、完全に無くなっていた。今はただ、目の前にいる蓮に向かっていくだけである。もう何度、カウンター狙いの拳を構えたかわからなかったが、宗介が蓮に向かってくるタイミングを図りヒットさせる。
ゴッッ!!!!
鈍い音がして、宗介は僅かに後ろに仰け反る。
「まだ…だぜっ!!」
さらに、ダメ押しといわんばかりに紫色の死毒を纏った拳で宗介に追撃する。
「ギィィィィィ!!ギェェェェ!!」
毒を喰らった宗介は声をあげて、転げ回る。闇の眷属などの魔物に極めて有効で、動きを止め行動不能にするばかりか命すらも奪うことができる蓮の能力。しかし、人間相手には動きを止める程度の効果しかない。
だが蓮は、宗介の身体が紫色に染まる程の猛毒をおみまいした。宗介は石畳にのたうち回って、苦しんでいた。毒の量の増減によって効果が変わり、尚且つ紫色の死毒の毒を強くし過ぎると人間相手でも有害になるという事が、図らずも証明されてしまった。
宗介の身体も、毒によって戦闘不能になっていると思われたが、バタバタと足を動かして、もがいている。まるで吐き気と痛みと痒みを一気に凝縮した苦痛を味わったような歪んだ顔をしていた。




