第ニ話 31
宗介の顔が少しだけ綻び、刀を持つ手も僅かに震えている。
最初は、気乗りしない蓮との闘いだったが、蓮の予想以上の強さに、この闘いを楽しんでいる自分がいた。
(マズイな…楽しんでる俺がいやがる。アイツ強いな)
宗介は、歓喜していた。元々剣術は好きだったが、人と競ったり、闘ったりというのは、苦手だった。
ゲームやスポーツは正々堂々と勝負できるし、楽しむことはできる。が、殺し合いは違う。
宗介の使う剣術は、確実に人を殺せる剣術であり、楽しめる筈も無かった。だが、いつからか命をかけて闘うことに、喜びを感じている自分が居る事に気がついてしまった。
刀と刀が擦れ合いぶつかって、刀同士の鍔迫り合い、斬るか斬られるかの先の読み合い、斬っては斬り、斬っては斬られ、また斬り……
殺るか殺られるか。ギリギリのところでせめぎ合い、生か死の遥かその先へ行く事への喜び。
いつしか、それが宗介の刀を持つ理由となってしまっていた。
しかし、宗介は、そんな自分に恐れを抱いていた。
やがて、自分がヒトでは無く、ただ人を斬るだけの“鬼”が目覚めてしまいそうになるから。
だから宗介は刀を使う事を封印しようとした。
宗介には刀を捨てることは許されなかったが、せめて封印くらいはと思っていた。
しかしいつしか、何処からか宗介の剣の腕を聞きつけ、力を利用しようとする輩が増えた。
刀を持つ事を抗えないのならば、殺し続けるだけの“鬼”にならないようにと、手加減を覚えた。
宗介の家は、闇の眷属のような人外を祓う一族で、人外を相手にするのだが、人間の相手もしていた。宗介は、人を斬殺した事は幸いなことにまだないが、自分の家柄とか、宿命だとかそんな言い訳をするつもりはなかった。




