第ニ話 28
「黒崎。…お前さんは、まだ分かっていないみたいだから言っておく。お前さんが、俺と闘う意思を見せないなら…この娘を殺す」
首元に突き付けられていた日本刀が僅かにクビが触れていた。宗介が、少し力を入れれば、か細い首など簡単に斬れるであろう。その発言は、宗介が脅しで言っているのではないということを物語っていた。
「その子から、刀を離せ!」
「俺と闘うなら、お前さんの望みを叶えてやるよ。闘わないなら、この子と、この屋敷の人間全て斬る…。エルウィン=デア=セルヴァンテス…アンタは、簡単にはいかないだろうが…ただの人間なら、一瞬で斬り殺せる…その意味がわかるな?」
「………」
刀の刃が女の子の細い首筋に当たっている。宗介は親指に力を入れ、今にも斬ろうとしていた。
「黒崎様。ここはやむを得ません」
「…わかった。アンタの望み通りにする。だからその子を離せ」
蓮は、宗介にそう言って、戦闘態勢に入る。
宗介は蓮の言葉を聞き入れ、女の子から刀を離した。
宗介は、周囲が聴き取れない程小さい声で女の子に「ごめんな」と呟いた。
女の子は、宗介の言葉を聞き驚いたような表情を浮かべた。
正直なところ、宗介が女の子の首元に刀を突きつけていたとき、実は力がさほど入っておらず、女の子が首を動かせばすぐに振りほどく事が出来た。
女の子は、不思議に思いながら、エルウィン達の元へと駆けていった。
エルウィンが確認したのだが、女の子には怪我などはなく至って普通だった。
その様子を確認した蓮は、宗介の方に目をやる。
宗介の表情を、窺い知ることはできなかったが、既に闘う為の準備は整っている状態だった。
隙だらけの蓮に仕掛けてこないのは、武士道精神か。あるいは…別の何かなのか。蓮と宗介。互いに様子を伺っている。
二人のうちどちらかが、動けば闘いが始まる。
蓮の闘気と宗介の闘気が、絡み合いながらぶつかり合っている。




