第ニ話 7
そんなエルウィンの心中など、知らぬ蓮は、あっけらかんとしていた。蓮が己自身の危険やリスクを知らないのは無理もない話だが、エルウィンはせめて、この若者が“吸血鬼”ではなく“人”らしく過ごせるようにと思わずにはいられなかった。
「というか、じいやさん…さっき俺が調節下手だって言った時、普通に認めたよね?」
「はて?何のことやら?歳をとると忘れっぽくなりますな」
と言って蓮に微笑みかけた。
蓮は、何か抗議しようと思ったが、自分の毒によって死にかけたのは事実だったから、抗議するのをやめる事にした。
蓮は力を抜くと、徐々に腕が紫色から肌色へと戻っていった。実際は、力を抜くというよりも“やってやるぞ”みたいな気持ちから、“もうやめよう”みたいな気持ちにしている感覚。腕が戻り始めたと同時に瞳の色も元に戻っていた。
前はしくじったが、近いうちに毒の濃度や強さを変化させたりすることもできるだろう。現に、蓮は確かな感覚を掴んでいた。初めは能力を自分の意思で解除できなかった。
しかし今は、自分の意思で解除できるようになった。
まだ見ぬ能力も、恐らくそうなるだろう。それは、予感というより確信に近いものだった。
けれど、土壇場で新しい力が出てしまうのがいささか問題で、出たとこ勝負感が否めない。
もし、闘いに向かない能力だったら、どうするか?…蓮はそんな事を考えてしまう。
「手のひらから、お汁粉を噴き出す能力とかあったら…嫌だな…」
そんな事を考えていると、自然に口から出てしまう。
エルウィンは、?という顔で蓮を見たが、深くは言及しなかった。
「ああ!…そう言えば、この間の件ですが」
「んあ??この間の件って?」
「ほら?貴方が倒れた事があったじゃないですか?」
「あー。全く…ついてないわ俺!!」




