第一話 16
蓮の咆哮と共に、高く上げられた左腕を鶴田をめがけ全力で振り下ろした。
左腕は、鶴田の鳩尾にクリーンヒットし、鶴田の骨が、嫌悪感のする音を立てながら砕けていく。鶴田を殴った余波は、コンクリートまで伝わり、爆発でもあったかのように、破壊されていた。
全力を出し尽くした蓮は、鶴田の横に座り込む。鶴田は、完全に沈黙しており、全く動かなくなった。
「…ここまでですか」
突如、井萩が座り込んでいる蓮の隣に現れる。蓮は、身構えるが井萩は、連に危害を加えるつもりがないのか、片腕で、鶴田を軽々と肩に抱え蓮とエルウィンに告げる。
「今日は、ここまでにしましょう。鶴田クンもノビている事だし。私一人で、吸血鬼二人を相手にするのは、いささか厳しいのでね。出直してきます」
「おや?もうお帰りですか?おもてなしはまだまだこれからだというのに」
「ええ。私も貴方達を斬り刻めなくて、残念です。ですがここらで、お暇させて頂きますよ。なにぶん、暇ではないのでね。次回は、キチンと挨拶してから訪問させて頂きますよ」
「…それは、残念。では、次回お出でになった時は、最高級のおもてなしで、貴方がたをお迎えすることにしましょう」
「私も次回会えるのを、楽しみにしていますよ?エルウィン殿。では、またいずれ」
そう言い残すと、井萩と鶴田が姿を消した。二人が、消えた後は、驚くほど辺りが静かになった。少し前まで、戦場と間違える程の激しい闘いがあったとは思えないくらい、しんとしていた。
座り込んで、へたっている蓮の元へ、エルウィンが来る。




