第一話 13
蓮は、鶴田の一撃をかわすためだけに、神経を集中させる。
鶴田は、蓮を殺すためだけに、力を集中させる。
鶴田の右腕には、力が集まり筋肉が肥大し、硬質化している。まるで、巨大な岩のような拳。それを連に向けて繰り出そうとしている。
鶴田の拳の速さは、二度、この身に受けていて嫌というほど実感している。
たが、今の連には避けられるという、全く根拠はないが予感がしていた。
自身の神経が、研ぎ澄まされているような感覚。
「…吸血鬼ってのは、頑丈過ぎていけねぇや。だが手応えのない奴も、つまんねぇけどな。ま。お前さんは、良く持った方だ!あのガキとジジイ共に比べたらな」
「手応えのない奴ってのは、火事で死んだヒト達の事かよ?…」
「ああ??」
「さっき、じいやさんが何の罪もないって言ってのは、本当かよ?」
「そりゃあ、奴らには罪はねぇ。が。アレだ。…生きていること自体が罪ってことだ」
「…そうかよ!!」
蓮は、始めて怒りの感情を出した。
貧民街の人達…人ではないが、少なくとも何の罪もない、何も悪いことはしていない、弱くても貧しくても、ただただ一生懸命生きていただけの者達。
それを、無残に無差別に殺戮する。
ただ、自分達の仕事というためだけに、何の感情も持たず実行することに蓮は、怒りを感じていた。
「は。怒ったかよ?闇の眷属さんよォ!!いやま。どっちでもいいけどよ?そろそろ死んどけや!!!」
そう言って連に向け、三度目の突き。先程喰らった突きとは、レベルが違う。速さも違う。喰らえば、骨は砕け、肉は弾け、身体は吹き飛ぶだろう。
それ程の突きであるにも関わらず、蓮は恐ろしいほど冷静だった。冷静に鶴田の巨大な岩と見まごうほどの拳を見つめている。




