第一話 10
「…んだよ、俺が手こずってるって言ってんのかよ?井萩!!」
「いや?ですから批判はしていないって言ってるじゃないですか。鶴田クン。…でも、あまり時間をかけている場合じゃないですよ。そろそろ彼を始末しないと…」
そう言って井萩は、うすく目を開く。すると、辺りの空気が変わり生暖かな空気が身体中を舐めるような異様な殺気が立ち込める。鶴田とは種類の違う殺気。鶴田のように、獲物を狩ることを楽しんでいる訳ではない、純粋に目の前の吸血鬼を始末する事だけに、集中しているそんな殺気。
蓮は、身構えようとするがまともに動けるはずもなく。後に瓦礫が無ければとうに倒れ込んでいる状態である。
「確かに、いい加減飽きてきたしなぁ…とっとと殺っちまうか」
「そうですよ。鶴田クン。早く始末しましょう。二人でかかればすぐ終わるでしょう」
鶴田は、腰を引く落とし、拳を引く。
かたや井萩は、腰に差していた刀を鞘から抜く。蓮には、拳を握る力すらも、残っておらずただただ、二人の様子を傍観しているしかなかった。
二人が、それぞれの構えを取り、攻撃の体制を整え蓮に拳と刃を向ける。だが、二人は突然、攻撃を止めた。
二人と蓮の目の前には、エルウィンが立っていた。
「無事ですかな?」
エルウィンは、そう言い蓮の様子を見て重篤な身体の損傷が無いとわかると、軽く微笑む。そして次の瞬間。近くにいた鶴田の左足を払い、払われて宙に浮いた鶴田をエルウィンの強烈な裏拳が叩き込まれる。




