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四本

ツィーチェはもちろん婆様の言うことなど聞きはしなかった。

鎖は繋いでいても、躾ができない、脅威の左手。


―――そしてそれは

敵に回られないための、鎖でもあった。


そんな左手を危険視している派閥もあり、それが国家を支えている二大議員派閥の一つ…主教派だった。

宗教色の強い派閥だが、民衆に近い位置にいるために、支持が強い。

近年から国家の過剰な戦力保有に異を唱え、死神の右手左手の存在を示唆した批判論を繰り広げはじめていた。


ツィーチェはそんなことにまったく関心はなく、常識であるその知識すらなかった。

その主教派を隠れ蓑にして兄が実権を握っているなど、当然知りもしなかった。


「…だから殺しに行くってのかい。

いくらなんでもそれは政府の交渉範囲内だよ。

下手に手を出せば……ツィーチェ、あんたどうなるか分からないよ」


当然婆様は止めた。

ツィーチェが手を出せば、素人の主教派など全滅だ。

彼女は対立派側の戦力であり、叩かれるのは明らかにこちら。

ツィーチェにどんな処置が下るのか用意に判断できる。


『ごめーん。

僕、もうけっこう殺しちゃったよ。

兄ちゃんのばしょ教えてくれれば生かしてやるってのに、言うこと聞かないんだもん』


ツィーチェが行方をくらませて三日。

ようやく連絡がとれた時、死者の数は既に二桁になろうとしていた。


『よーやく兄ちゃんの居場所が分かったよ。

ひいらぎの教会だってさ。』


明るい声で答えるツィーチェ。

無邪気な子供の声。

軽やかな足取りで、丘の上の教会をめざす。

小道に小川が流れており、鳥のさえずりが優しい。

だがツィーチェは、それを心地いいと思う感覚がそもそも身についてない。


だから花咲く石階段に、藍色のマントの男がいても……

いつものように刀を抜いた。


「そーいえば僕、君のこと何回か殺した気がするんだけど」


今度は鉤爪かぎづめで刃を受ける男。


「それは幻覚だ、左手」


「ふうん、そっか。

じゃまた殺せばいいか」


なんてことないように呟き、ツィーチェは再び刄を振るう。

その姿は、鎖に繋がれているとは到底思えない

伸び伸びとした姿。


ぞっとするほど、殺戮が楽しそうだった。



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