第2話 レディース「安土会」
新宿のカラオケ店には、制服に着替えた先ほどのキャッチふたりが受付に立っている。
PCには、全室に設置された防犯モニター画像が並ぶ。
(念のため)
「203号室」画面をクリックして、映像データをdeleteする。
証拠隠滅だ。
玉木玲央が目を覚ましたのは、その203号室だった。
ステージの上にうつ伏せにされて、両手両足は手錠で繋がれている。
全裸だ。
顎がジンジン痛む。
「いってえ。う。何だ?どこだ?」
「よう、色男。起きたか」
知らないセーラー服の女と、眼鏡をかけた事務員のような女がソファに座っている。
「…誰だ、てめえらは?」
「もう二度と会わない奴に、なんで名乗る必要があるんだ?ま。こっちはおまえのこと、ケツの毛まで読ませてもらったがな」
「あ!俺のスマホ」
リタの傍らで、秀美がノートPCに繋いだスマホの情報を抜き出している。
「解析させてもらいました。何でもかんでもスマホに入れて持ち歩くのは感心しませんね。悪い奴に拾われたら悪用されますよ。例えば、あなたの親御さんのクレジットカードとか……」
「ざけんな。返せ!」
リタが続ける。
「ここのカラオケ代、それとSMグッズの支払いは落としておいた。あと、慰謝料な。こっちは高額で、暗証番号が必要だから教えろ」
「慰謝料?さっきから、何言ってんだ?」
「おまえが悪さをした被害者たちに対する慰謝料だ。カードから毎月リボ払いで50万引き落とす手続きを取る。三人に一千万ずつ支払うことになるから、五年ローンになるな。おまえみたいなクズを育て上げたバカ親には、ちゃんと説明しとけ」
「ああ?殺すぞ。くそガキ!」
「慌てるな。これは民事上の罰。刑事上の罰は、これから受けてもらう」
「は。警察にでも突き出すってのか?無駄だ。この手のいざこざは、やつら面倒くさがって相手にしねえぞ。なんせ俺はまだ17だからな」
「まったく、この国は未成年者に甘すぎるよな。だから、刑執行はこっちでやる。まず、おまえが女の子にやったように、全裸姿を撮影する。それから闇サイトに流す。『元気のいい若い男の子を抱きたい方、こちらまで』と募集をかけて、な。来週からおまえは超売れっ子、大忙しだ。おっと、そうだ。学校に休学届けを出しておかないとな」
秀美が頷き、玲央のスマホを操作して勝手にメールを打つ。
学生証も押さえられているのだ。
「てめえら。こんなふざけた真似して、ただで済むと思うのか?俺のバックには『独眼竜』っていう……」
「大宮の半グレ組織だろ?リーダーは『政宗』を名乗ってるブサメンくんだっけな。おい、権六。政宗をライブ映像に出演させてくれ」
「……」
「ほれ」
スマホ画面を玲央に見せる。
リモートのライブ映像だ。
画面いっぱいに写ったのは、ボコボコにされて原型をとどめてないアイパッチ男の顔。
「ま、政宗さん!」
「総長。こいつを含めて、独眼竜の連中は……こんな感じに仕上げときました」
権六と呼ばれた大女が一旦自分の顔を映してから、背後にカメラを向ける。
アジトらしいクラブのホールには、十数人の怪我人が死屍累々と横たわっている。
「おまえのバックとやらは、さっき壊滅した」
「……おめえら、ナニモンだ?」
「令和のレディース『安土会』だ」
「あ、あづちかい?」
リタがひびの入った顎を鷲掴みにする。
「うがあ!」
「暗証番号を言え。言わねえと…泣かすぞ」
玉木玲央は、すでに涙目だった。
つづく
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