魔王転生 大長編 ~永遠の大陸~
魔王転生の大長編です。最後まで読んでいただけると嬉しいです。
特別版長編
プロローグ
ある大陸で、一つの闇が動き出していた・・・
第1章「唐突」
俺はいつもどおり朝起きて服を着替え、梨花に捕まりながら朝食を食べる。そして外に出る。「今日もいい天気だ。」俺はそう言う。今日もまずは町を出歩く。鉄を打つべリムに兵に戦い方を教える稲荷、いつも通り木を刈る雷牙、べリムの鍛冶屋の前で売ってる俺のグッズに集まる刹那と咲良。それを呆れてみている黒霧。リザードマン空軍をまとめるリゲル。いつもの光景だ。なんだか微笑ましい。こんな生活もいつまで続くのやら。そういえば今日はべリムに呼ばれてたんだっけな。俺は鍛冶屋に入る。「よお!べリム。久しぶりだな。」べリムはこちらに気づき、「おお!ティル!久しぶりだな。少しは背伸びたか?」どこかのおっちゃんかよ。「まあとにかく見せたいものがあるんだ。」俺は部屋の奥に案内される。「見せたいものって?」「これだ。」べリムは俺の眼の前のテーブルに地図を広げた。「この地図、この部分何にもないだろ?でもこうやって魔力で照らすと・・・」大陸だ。大陸が紫く浮かび上がる。「この地図は紛れもなくお宝もんだ。」そういえばこの地図はあの骨董品屋で適当に使えそうだから買ったやつだ。「んで、この大陸は?」べリムはついさっきよりも興奮した様子で、「ココに描かれているのはただの大陸じゃない。100年前に消えたと言われているヘルヘイム大陸だ。」ヘルヘイム?なんか本で読んだことが・・・思い出した。この世界に来た時、の更に前。小学4年生のころ、倉庫の中から見つけ出したとても古い本で、読んだことがある。父と母はそんなもの知らないと言っていた。俺はそれをむさぼり読んだ。その物語に出てくる大陸がヘルヘイムだ。100年前に消えたという設定も同じだ。「あの絵本って・・・」べリムが反応して「絵本って?ああ、これのことか?」べリムが一冊の本を取り出す。まさにそれだった。「それだ!」しかしそれは魔物の文字で描かれている。なぜ小さい頃の俺に読めたのかは謎だ。父母2人ともなんて書いてあるかわからない。きっと小さい頃の工作かなんかだろうと言っていた。しかしココまで来ると何かしらであっちの世界とこっちの世界がつながっていたことが分かる。「んで、これを見せてきたってことは・・・」べリムが笑みを浮かべる。「その通り!行ってやろうぜ!100年前に消えた大陸、ヘルヘイムに!」おもしろそうじゃねぇか!「ただし、そこら辺の海は禁足海なんだよ。だからどう行くか・・・」「行けるかもしれない。俺は魔王だ。」「そうじゃない。人間のルールだ。モンスターも通れやしない。」だったら・・・「なあ、それってどんなふうに守られてるんだ?」「1kmごとに一人、監視人がいる。」なら普通に通り抜けられそうだな。「それと魔力感知1kmが発動してる。」・・・あー、なるほどね?無理じゃん。「まあそれなりに策を練ろう。」
第2章「試行錯誤」
黒霧と刹那と雷牙と咲良と梨花とアクリアと稲荷とべリムとリゲル。みんなが集まる。さて、まず1kmごとに一人。そして魔力探知機1kmをひとりひとつ持ってるってわけか。でもそうなると下に間ができる。「間をくぐり抜けることはできるか?」べリムが首を振り、「間は水面上に魔力探知が浮かべられている。その下にも絶対に入ってこられないよう隙間なく魔力探知がある。魔力探知機にもし引っかかってしまったら強制的に人だったら港、モンスターだったら処刑場にワープする。」おいおい、物騒だな。「私も聞いたことがあります。お兄様が一度行ったことがあるとか・・・」みんなの視線が黒霧に向かう。「確かに行ったことがありますが、その時は禁則でもなければ人も存在しませんでしたから。それに大陸は沈んでいて行くことが出来なかったです。」沈んでる・・・?「なあ黒霧、お前はなんで沈んでいると分かったんだ?」黒霧は少しだまり、「大陸がある場所に行き、下を見ても何も無い。そして海に潜ってみたんですよ。そしたらなんと、町や自然。当然草木はもうなく、くちていましたがそれらがしっかりと残っていたんです。人やモンスターは確認できませんでした。」なるほど。「でもそうなるともう行けなくない?」稲荷が口を挟む。「たしかにそうなる。」俺が続ける。「が、そう見せる結界を張っていると考えたらどうだ?」みんなが納得したように頷く。しかし、どうしたものか・・・「まて、魔力探知機に引っかからず突破する方法を思いついたぞ!」「それなら私知ってます。」全員の視線が声の主、リゲルに向かう。「「「「「え?」」」」」みんなが揃いに揃って驚く。「あの、言い出すのが遅くてすみません。以前、試したことがあって・・・」「それを早く言えぇ!」稲荷にツッコまれる。「すみません!それで、空高くからだと魔力探知機が無いので飛び越えられます。」え?とみんながまた驚く。「そんなあっけなく?」「はい。」え?・・・まあ、行き方は分かったし。「よし、じゃあみんな出発準備だ!」「「「「「「はい!!」」」」」」俺達はついにヘルヘイムに向けて出発する。待ってろよ!新大陸!
第3章「扉」
俺達は町を出る。野を越え山を越え・・・そして海に出る。さあ、ココからが本番。「あそこに見えるすこし虹色がかったものが魔力探知の結界です。」みんな飛んでいく。アクリアは飛べないので、俺に抱きついている。(雷牙とかは飛べなさそうで魔力で飛べるらしい。すごいシュールだ。)それを刹那と咲良が見ている。空の上まで嫉妬を持ってくるな!「さて、みんな急上昇するぞ!」俺達は上へ上へと上がっていき、雲まで超えた。その後、前に進む。「お兄ちゃん・・・苦しい・・・」梨花が言う。梨花は人間だから酸素の薄い空の上だとキツイか。「そろそろ結界通り抜けたんじゃないか?」俺が言って降りていく。成功だ。しっかり通り抜けている。さて、「黒霧、沈んでたのはどこらへんだ?」黒霧は向こうの方を指して、「あっちの方だった気がします。」よし、行くぞ!俺達は勢いよく飛んでいく。しばらくして・・・あった。沈んだ都市、沈んだ大自然。そう。沈んだ大陸だ。「これが・・・」「美しい・・・」そう。言葉に表すとただ、美しかった。沈んでいるが、きれいに原型をとどめていて、何一つ劣化していない。しかしこれが偽の姿だとするとどうなるのか。さて、どうしたものか。「なあ、これって沈んでる町とかの中にヒントとかあったりしないか?」俺達は海の中を進んでいく。途中で梨花が、「息が・・・!」と上へ上がっていった。この前教えた水中呼吸の魔法使えよ。俺は苦笑いした。そして進んでいくと城のようなものが見えてくる。「あれは?」黒霧が答える。「あれはヘルヘイム城です。ヘルヘイムで最も大きな城であり、一番偉い王が居るというところだ。」なるほど。窓の隙間からなんだか輝くものが見えた。「なにか輝くものがあるぞ?」その言葉に全員がその方向を見る。たしかに光っている。「あれは・・・鏡?」アクリアがそうか!という顔をして、「鏡で向こうの世界とこっちの世界を繋いでるんですよ!」なるほど。だったらそこへ行こう!相変わらずアクリアは俺にしっかり捕まっている。〈アクリアパート〉こんなに長くティルにくっついていられるなんて・・・ずっとこのままが良い。ティルが言ってた鏡が近づく。「これか。」ティルが鏡の前に立つ。私はまだしがみついている。ティルが鏡に手を伸ばす。ティルが鏡の中に消える。「合ってたんだ・・・」私はなんだかワクワクしてきた。〈ティルパート〉俺は鏡に吸い込まれる。なんだ?!周りを見渡す。虹色の粒子が飛び交うポータルの間のような空間だ。これがどこまで続くか・・・と後ろから「うわぁぁぁ!」という声や、「なんだこれ!すごい!」という声などが聞こえる。眼の前に光が満ちる。思わず目を瞑る。
第4章「新大陸」
目を開けるとそこには大地が広がっていた。俺は今落ちている。かなりの高さから落ちているんだ。「キャァァァァ!」アクリアがくっついてくる。梨花もくっついてくる。咲良も刹那も近づいてくる。お前らなんで空中でそんな動けるんだよ。アクリアと梨花は近くにいたからだけど、お前らは完璧に水平移動してた。にしてもこれは・・・すごいな。下には大自然と町。しかもその町はモンスターの町だ。「すごい・・・」アクリアが感嘆の声を漏らす。本当にすごい。俺の町よりかは小さいが、とても賑やかで活気がある。とその時、下の方から声がした。「親方!空から冒険者が!」俺達は落ちていく。ものすごいスピードで落ちていく。地面に激突する。[ドォォン!]アクリアが衝撃でスライムに戻り、勢いで俺に覆いかぶさる。さらにその上に梨花、咲良、刹那が降ってきて、最後に稲荷が降ってきた。ほかはしっかりと着地をした。(その積み重なった上に)〈アクリアパート〉私は勢いでティルに覆いかぶさる。・・・ティルとくっついてる・・・私の頬が赤くなる。私は気づかれないようそっと力を入れてティルを無理ない程度に捕縛する。すぐ申し訳なくなって離れる。もっとくっついていたい。けどあんまりくっつきすぎるとティルから嫌われてしまいそうで怖いから。・・・・ついさっきから視線を感じる。きっと咲良と刹那だ。いいじゃん、少しくっついてるぐらい・・・視線が怖い。〈ティルパート〉いてぇ・・・覆いかぶさったアクリアが退く。ここは・・・草原の真ん中だった。「すげぇ。」どこまでも続く大自然。その中にぽつんと一つの町がある。俺達は落ちてきてボロボロのまま町へ向かう。「なあ、これって100年前なのかな?それとも沈んでるように見せている結界の向こう側なのかな?」みんな黙っている。「わからないが、100年前となると次元を超えているということになる。しかし見てみろ。あの月は50年前に欠けたものだ。100年前にあんなふうに欠けているわけがないだろう。」たしかに・・・じゃあこれは結界の向こう側?だとするとなぜ周りに大陸が見えない。「どうしたものか・・・まあとりあえず町へ行こう。」俺達は歩き出した。
第5章「依頼」
俺達は町についた。町につくやいなや町民が集まってくる。「外からの客人だ!」「こんなの初めてだぞ!」俺達は少し戸惑った。町民が集まりすぎて身動きが取れないのだ。もみくちゃにされてアクリアがティルとくっつく。〈アクリアパート〉近い!はわぁ・・やっぱりかっこいい。私の隣で咲良が「ティル様♡」とくっついている。私は苦笑いした。流石に真似できないな・・・更に横では刹那がすごい形相で咲良を見てる。やっぱこの二人怖い。その時奥から何やら偉そうな人が出てきて、「ほれ、旅の方々が困っておる。どいて差し上げなさい!」と言う。するとみんなバラバラに散っていった。なんだったんだろう・・・私はティルから離れることを忘れて見ていた。私はティルから離れると、黒霧に聞いた。「あの二人ってなんであんなにティルに執着心を持ってるの?」黒霧は困ったように、「・・・私にもさっぱりだ。」わかんないかぁ・・・まあ女心だもんね。〈梨花パート〉ついさっきから色々起こりすぎてて何がなんだかわかんないよぉ・・・「お兄ちゃん、頭の仲整理させて・・・」私は立ち止まる。まず水中の中に都市が沈んでて、その中の城の中の鏡に入ったらこの大陸にとばされて、落下して、町についたら民衆に囲まれて長らしき人が出てきた。よし!整理完了!「整理できた!」お兄ちゃんは頷くとまた歩き出す。かわいいなぁ。高校生だったお兄ちゃんはかっこよかったけど、魔王になってちっちゃくなったお兄ちゃんは可愛い。私はお兄ちゃんをむんずと抱き上げる。「梨花、やめろ。」いやだ!私は歩いたままお兄ちゃんの匂いをかぎ始める。後ろからの視線が気になるけど気にしない!「梨花・・・ホントやめてくれ。」お兄ちゃんの顔が赤面する。よく見たら町民の視線がこちらに向いている。私は平気。私はお兄ちゃんを下ろす。「はぁ・・・やっとおろしてくれたか。」呆れたように言ってくるが、私にとっては嬉しい。〈ティルパート〉ったく・・・梨花はどこでもおれを抱き上げるからホント恥ずかしい。そこへ、ついさっきの長が来て、「貴方がたは英雄御一行で間違いないでしょうか・・・」え?「何を言ってるんだ?」長は「この大陸に代々伝わる伝説があるのです。」伝説・・・?「説にはこう描かれています。この大陸に災いが降りかかる時、一人の魔王、一人の人間。一匹のスライム、四人の鬼人。一人の妖狐、一人のリザードマン、二匹の龍が現れ、この地に平和をもたらすでしょうと。」おいおい、それじゃ二匹の龍以外完全一致じゃねぇか。「そしてあなたは魔王なのでしょう。亜人の見た目にその角。そして翼。さらに貴方方が降ってきた前の日に、奴が復活したのです。」奴?「その奴ってなんだ?」長が少し俯いてから、「ディアボロじゃよ。」ディアボロ・・・どんなやつか知らないが、要するにそいつを倒せば事が済むってことか?そこに長が、「貴方方にディアボロの討伐を依頼したい。」そう来ると思った。「・・・分かった。引き受ける。」まさか興味本位の冒険がここまでのスケールになるとはな。
第6章「苦戦」
俺達は町を出て、ディアボロが居るという方向へ向かう。ここはとても大きな大陸だ。見つけるのが面倒だな。とそこに・・・上から龍が降りてくる。ん?これって・・・「ハナとナルガ?」二匹の龍は変身を解く。「よく分かったな!」ナルガだ。そして、「分かって当然じゃろ。」ハナだ。「久しぶり!」俺は二人に抱きつく。ハナは少し顔を赤らめて、「やめるのじゃ。」と言ったが振りほどこうとはしない。再会が嬉しいのだろう。ナルガは、「おう!久しぶりだな!相棒!」と乗り気で返事をしてくれる。ん?待て、予言の二匹の龍って・・・ハナとナルガのことだったのか!「んで、二人はなんでここに?」「迷い込んでしまったようなのじゃ。」なるほど〜・・・え?あの鏡以外で出入り口あるの?へぇ〜。「んで2人とも、一緒に来ないか?」二人はえ?という顔をする。「今討伐依頼を頼まれてて・・・」かくかくしかじか、すべての事情を話す。「なるほどね。それなら向こうにいたよ。」そうか・・・え?待て、今なんて?向こうにいた?え?「案内しようか?」ハナが言う。「・・・あ、ああ。たのむ。」ン?なんかアッケナイゾ?俺達はハナとナルガに案内され、ディアボロの居るという場所まで行った。居た。そこには白く、腕は少し羽のようで片方片方から2本ずつ毛の生えた触手のようなものが伸びている。なんだか三つ編みに見える。顔は目がどこかわからず、四足歩行で、尻尾が長いやつがいた。「あいつが・・・」「そう。あいつがディアボロ。思ったより小さいでしょ。」ハナが言う。たしかに。もっと大きいのを想像してたよ。とその時ディアボロがこちらを見る。「おっと、気づかれちまったようだな。」ナルガが言う。そうらしい。こっちに向かってくる。「いっちょやりますか!」俺達はまず間合いを確かめる。そして一斉に走り出す。みんながみんなバラバラな方向へ行き注意を逸らす。そして俺とナルガが初めの1打を打ち込む。「サンライズ!」ナルガは銃口をディアボロに向けて真っ赤に燃える1弾を打ち込む。「フルフレイム!」俺は拳を真っ赤にし、殴りつける。そして、「クリスタルナックル!」赤いクリスタルが生成され、俺の拳が固くなる。しかしディアボロは全く怯まない。こいつ、固くないのになんで効いてないんだ?!謎で仕方がない。そう考えているうちにディアボロに弾き飛ばされる。黒霧が切りつけ、刹那が上からたちを突き刺そうとする。雷牙が足に向かって斧を振り上げる。刹那が黒霧、刹那、雷牙にバフを掛ける。しかし全て弾かれる。なんでだ?皮膚は柔らかい。そして鱗もない。なんで弾かれるんだ?・・・わからない。みんなが吹き飛ばされていく。稲荷が竜巻を起こし、べリムが雷と火を起こす。ハナが光をまとい突進する。すべて弾かれる。梨花のエーテルキャノン、アクリアのブレイブパンチ。これらも弾かれた。さらにはリゲルの臨界穿刺までもが弾かれる。アクリアがまたもやふっとばされて中を舞う。俺はすかさずキャッチする。〈アクリアパート〉私はティルにキャッチされた。って・・・お姫様抱っこ?!私の顔が赤面していく。「アクリア、大丈夫か?」ティルが私に話しかける。「大丈夫・・・多分。」ティルが分かったと頷く。私をおろしてすぐにディアボロに向かう。かっこいい。〈ティルパート〉「みんな!まだ気を引き締めていくぞ!」「ああ!」「はい!」「おう!」「分かった!」何人かの声が上がる。しかし・・・みんなふっとばされて終わった。「なんでだ。強すぎる・・・一旦退却だ!」俺達は一旦ディアボロに背を向けた。
第7章「恋バナ」
私達は森の中で野宿をすることになった。ティルや黒霧、雷牙などの男子軍は全員食料を取りに行き、(ティルは性別無いけど)私たち女子軍は簡易拠点で話していた。「咲良とか刹那とかはすぐ分かるけど、ハナとかって好きな人いるの?」ハナは「好きというかもう結婚しておる。」みんながえ?という顔をする。「既婚者?」「リア充?」非リアな稲荷とリゲルの顔が曇る。「私たちをバカにしてる?」ハナは慌てて「べ、べつにそういう思いで言ったわけでは・・・」ハナは思いっきり殴られた。涙が垂れる。「そんなにしなくても!」ハナは簡易拠点の洞窟の奥へと行ってしまった。「そんな事言うから、泣いちゃったじゃん。ちょっと私見に行ってくる。」梨花がハナの様子を見に行く。「・・・で、貴女はよくティル様にくっついてますよね?」刹那からの一言。とても鋭い。「だ、だからなんです?」私は少し怖くなった。次に咲良が「怖がらなくて大丈夫ですよ。なんでくっついてるんだろうな〜って思ってるだけなので。」顔が、顔が怖い!目に光が宿ってないよ!私も洞窟の奥へ逃げた。〈咲良パート〉そのあと刹那が、「そして咲良、あなたも民衆に囲まれた時堂々とくっついてましたね?」圧が来る。そういう時は厚で返す。「それを言う刹那もこのまえティル様とお風呂入ってましたもんね〜」刹那がなんで知ってるの?!という顔をする。「分かるんですよ。そういう事は全部。あなたよりも情報はもっていますから。」私は絶対譲らない。〈ティルパート〉クシュン!なんだか寒気がした。「大丈夫か?ティル殿。」黒霧が即座に気づく。「ああ。なんか寒気がしてな。」そうか、とべリムが火をともしてくれる。それでも寒気はひかなかった。そうして簡易拠点に戻ることにした。〈ハナパート〉私は洞窟の奥まで来た。あの人達怖い。とその時後ろから、「おーい、ハナさーん。一人でいったら危ないかもしれないんですよー。」梨花の声だ。数少ない癒し枠だ。私はすこし心が安らぐ。「怖いですよね。急にあんな・・・」私は泣けてきた。「どうしたんですか?!ハナさん?!」「いや、私のこと気にかけてくれる人が居るってほんとうに幸せだなって。」梨花は少し黙ってから、「ナルガさんのようなかっこいい旦那さんが居るの、正直言ってちょっとうらやましいです。でも・・・」でも?「でも、ナルガさんとハナさん。お似合いじゃないですか。ハナさんにはナルガさん。ナルガさんにはハナさんしかいないと思うんです。わたしは今のところ兄以外に好きな人がいないので、恋というのはあまりわからないのですが、これはなんとなく分かる気がします。」なるほど。「・・・ありがとう。」とその時、アクリアが恐怖に満ちた顔つきで走ってくる。癒やし枠二人目だ。「どうしたの?アクちゃん。」梨花が聞く。アクリアが梨花の胸に飛び込む。「あの二人怖いよぉ」きっと刹那と咲良だろう。たしかにあの二人は怖い。「よしよし、怖かったね。」なんだろう。なんだかこの光景が微笑ましい。「ところでアクリア、好きな人いる?」梨花が唐突に聞く。アクリアは少し恥ずかしそうにして、「・・・ティルさん」と小さく言った。梨花は、「やっぱり?ちょっと気づいてたんだ〜」とゆるく言う。やっぱりこの二人は癒し枠だ。ところでティルたちは帰ってきたのだろうか・・・〈ティルパート〉えっと、なんかさん人足りないんだけど。「なあ、ハナとアクリアと梨花知らないか?」残っていた4人が全員で洞窟を指差す。お前らなにしたんだよ。俺が洞窟に入ろうとしたその時、何かにぶつかり俺はこけた。「なんだ?」顔を見上げる。俺がぶつかったもの、それはアクリアだった。「なんだ、アクリアか。」「きゅ、急に目の前に現れるから・・・びっくりしました!」アクリアは頬をふくらませる。後ろに梨花とハナもいる。さて、夜も明けたし。冒険再開と行きますか。
第8章「希望」
歩いていると一人の移動商人がいた。「よってらっしゃいみてらっしゃい!世にも不思議な武器や武具、食べ物なんかや骨董品!何でも揃ってるよぉ!」・・・ちょっとめんどくさそうな商人だな。と思ったとき、その商人が「あんたら、ディアボロ倒したいんだろ?」え?という顔をすると、「なぁに、顔を見ればそう書いてある!」は、はあ・・・「あいつに攻撃与えるにはな、3つの神器が必要になるっていう言い伝えがある。」なるほど。「まずは東の祠。そこには水と火を操る怪物が居るんだとさ。そこにある神器が“神短刀:シチノゴゼン”。そして次が西の祠だ。そこには氷を操る見た目は美しい女性の見た目だが凶暴で好戦的な魔物が守っている。そこにあるのが“神斧:スサノオ”。最後がこの大陸の中央にある城、〝イルミナデス城〟だ。そこにはこの大陸を全て自分のものにしようとし、天罰を下され醜い怪物になったという王がいる。名を、“サタン”。そこにある神器が、“神刀:五十嵐”だ。その3つが融合した時天からの恵みを得るだろう。」何を言ってるのかさっぱりだが、まあ要するにその3つを集めればいいってわけだな。急に言ってきて、嘘じゃないと良いけど。
第9章「面倒」
俺達はまず、東の祠を目指した。その途中、なんだかただならぬ気配を感じた。上からなにかが飛び降りてくる。「なんだ?!」その飛び降りてきたものは口を開く。「なんだ?!と言われたら。答えてあげよう世の情け。」え?「喧嘩は上等、芸も上等。遊びに全振り格闘家、その名が轟く、ストロォング!」・・・なんだコイツ。「ここを通りたければ俺と勝負するんだな!なんたってこの先にはあの雷獣レ・パルダが居るんだからな。」レ・パルダ?聞いたこと無いな。「あの、俺達は祠に・・・」「そうか!なら俺と戦え!」ダメだこいつ。「戦うって・・・」「そんなの決まっているだろう!1対1の真剣勝負。」きゅうに真面目な顔になる。「亜空展開」俺の周りが青い空間で包まれる。青い空間の中に足場が作られる。その足場が広がり、上空も変化する。あっという間に外と全く変わらない見た目になる。ついさっきから色々起こりすぎだろ。でもまあ、「なるほどな。しっかり1対1でガチンコ勝負ってか。」ストロングと名乗った格闘家はニヤッと笑い、「昔っから大勢で戦うのは好きじゃないんで・・・ね!」一瞬で眼の前に来る。速い!俺はすかさずかわす。するとストロングが、右拳に黒。左拳に赤の炎をまとい、「赤、黒。混ぜて緋色。緋拳!」と唱え、拳をまじえる。炎が混ざり緋色になる。俺はすかさず腰に手を回す。が、無い!羅生門が消えている。「おっと、言っていなかったがこの空間では己の肉体のみ。武器は使えん。」なんだって・・・?じゃあ完全不利じゃん。・・・昔ロンの姉、ナギに教わったあの術で・・・使ってみるかぁ。俺の体から煙が出る。ストロングが少しおののく。なにがはじまるんだ?という顔をしている。「さて、本気で行こうか。」俺の見た目は獣化していた。狼のような外見だが2足歩行で形的には人間に近い。「いがいと動きやすいな。」ストロングは少し戸惑った様子で、「おまえさん、只者じゃないな。」やっと気づいたか。「そんなことよりやろうぜ。」俺が一瞬でストロングの前に移動する。ストロングを大きくふっとばす。そしてさらに追撃で爪をたて、引っ掻く。3回引っ掻いたあとに下に向かって蹴り落とす。ストロングは地面にっ叩きつけられ、すこし血を吐く。「やるじゃねぇか・・・じゃあこっちも本気を・・・といいたいところだけどもうすでに本気だ。お前の勝ちだよ。」なんだ。もう終わりか。そういいたかったけど、言わなかった。「お前ならあの雷獣に勝てるかもな。じゃあ。」空間がもとに戻る。「何があったのですか!」刹那が駆け寄ってくる。「ああ。ストロングと戦った。」すると稲荷が「そういえば、ストロングさん。どこ行ったんだろう。」と首を傾げる。俺はあたりを見渡す。ストロングはいない。どこへ消えたんだ?まあとりあえず、邪魔はなくなった。
第10章「雷獣」
雷獣レ・パルダ・・・どんな見た目なのか。祠の守護者とは別に厄介そうなのが出てきたな。俺達は奥へと進んでいく。霧が濃くなってきた。「みんな、離れるなよ!」周りがほとんど見えない。俺達は足元に気をつけながら歩いていく。とその時眼の前の霧が晴れる。いや、晴れたんじゃない。何かが突っ込んできてその空気抵抗で霧が退けたんだ。そして今目の前にいるのは・・・雷をまとう、巨大なドラゴン。俺はすかさず避けたがかすり傷を食らった。体が痺れる。「お前が、雷獣。レ・パルダか。」レ・パルダは咆哮をあげて雷を落とす。「やべぇぞこれ」べリムが冷や汗をかいている。レ・パルダが構える。と同時に俺の前に来る。瞬間移動?!いや、電気の力で高速移動してるのか。やっかいな・・・俺は羅生門を構え、「ウルフバースト」と唱える。羅生門が黒炎をまとう。「仕掛けてきた以上、迎え撃つまでだ!」俺はまずレ・パルダの懐に潜りこもうとする。しかし翼で起こる爆風に吹き飛ばされてしまう。黒霧が上から。雷牙が下から攻撃を仕掛け、刹那が背後から斬りつける。そして刹那がレ・パルダにデバフをかける。しかし攻撃はあたったものの倒れる気配がない。「クソ、硬いな。」予想以上だ。こんなに硬いなんて思ってもいなかった。「ティル様、どうしましょう。」そう刹那が戦略を聞いてきているうちに稲荷とべリムと梨花のコンボで動きを封じる。そしてアクリアがヒーラーとしての立ち位置にいる。「難しいな。」横からだと翼が邪魔をして懐に潜り込めない。後ろから攻撃しようとしてもしっぽで弾かれ、前方からは雷のブレスで撃退される。どうしたものか・・・「近づけないんだった、近づかなければ良い。」俺はレ・パルダから距離を取って、「斬撃:ムーンフォース」X型の斬撃が飛ぶ。命中!だがやっぱり硬い。「物理攻撃じゃなきゃ効きにくいか・・・」ついさっきから分かってはいたが、レ・パルダの鱗は鎧なんかよりも固く、魔法も通しづらい。俺は即座にこの前作った投擲爆発物を投げる。(詳しくは3巻の第2章を読んでね☆)レ・パルダは気づいていない。投擲爆発物がレ・パルダの背中に当たる。大爆発をおこし・・・成功だ!鱗が剥がれている。レ・パルダは苦しそうにもがく。「みんな!剥がれた鱗の部分に攻撃を当てろ!」みんなが鱗の剥がれた部分に向かい、攻撃を仕掛ける。まずは俺が羅生門で切りつけ、黒霧が鱗が剥がれて浮き出た皮膚に深く刀を差し込む。さらにその刀を軸に、べリムが雷を伝わらせ感電させる。そこに稲荷が水を放ちさらに雷を広げる。咲良が刹那にバフを掛け、刹那がさらに斬りつける。そして最後に俺がクリスタルライズを叩き込む。雷獣レ・パルダは大きな音をたてて倒れた。熱された水のように蒸発していく。その時声が聞こえた。〈ありがとうな。これで成仏できる。〉その声はストロングのものだった。そうか、お前はもう・・・死んでたんだな。レ・パルダ・・・いや、ストロング。最高だったぜ。俺は満面の笑みで眼の前に透けて見えるストロングに向かって拳を突きつけた。ストロングは少し笑い、拳を俺の拳に合わせた。拳同士がぶつかることはなく、すり抜けた。ストロングは足元から徐々に消えていった。
第11章「謎解き」
俺達は祠についた。んん?説明雑すぎないか??まあ良いか。とりあえずついた。祠って入口こんなに小さいのか?それは雷牙の大きさぐらいの岩だった。俺はその入口に描かれた魔法陣に手をかざす。すると岩の中心があき、下へと続く階段が現れた。地下か。なるほどね。俺達はその階段を1段づつ降りていった。そして一番下までたどり着く。そこに待っていたのはどう見ても人工物の洞窟のような見た目をした通路だった。「祠なだけあって狭いな。」黒霧が言う。アクリアは小さいしスライムなので楽勝そうだ。黒霧などは大きいので少し窮屈そうだ。少し進むと、開けた場所に出た。そこには球体が2つと急が彫塑収まりそうなくぼみが3つあった。これは・・・なんだ?良く見ると色が違う。しかしくぼみと揃う色はない。「これは・・・どういう事だ?」「謎解き・・・?」たぶんそうだろう。だが、なにかが足りない。くぼみが3つなのに対し、球体は2つだけ。・・・何処かに球体が一つ隠されてるのか?俺は青い球体に近寄る。触ってみても何の反応もない。それどころか動きもしない。これ、どうすんの?上を見上げる。なんだかそれらしきものを見つけた。1つのクレーンのようなものだ。そしてくぼみの反対側には扇風機のような羽がついた巨大なものが何個もある。これで飛ばすのか?「なあ、雷牙・・・」あ。雷牙が球体を持ち上げている。「これをはめれば良いのか?」・・・うん。たぶんそうじゃないと思う。そんな雷牙に咲良が、「駄目でしょ雷牙。しっかり手順を踏まないと。」雷牙はそうかという顔をする。そうかじゃないんだよそうかじゃ。とりあえずあの右端にある端末らしき物をいじってみよう。俺は端末に近づき、画面にふれる。すると画面が光る。液晶画面とは違く、石が光っている。「この矢印を押すと・・・」上のクレーンが動く。しかしそれだけではまだ球体をくぼみには運べない。クレーンはくぼみなんかよりもはるか上空。下ろすことも出来ない。となるとあの巨大扇風機か・・・どうやってつけるんだ?俺は巨大扇風機に近づき、奥を覗く。何かくぼみがある。またくぼみかよ。と思ったその時、このくぼみ、球体がはまってる。しかしがっちりはまっているのではずれない。横の出っ張りを押してみると、球体が上に上がってくる。そして球体をどかすと扇風機が動き出す。扇風機は球体をくぼみまで飛ばした。俺と一緒に。俺は壁に叩きつけられる。「なんでだよ・・・」でもとりあえず謎は解けた。謎と言って良い代物かはわからないが一応解けた。俺はクレーンを操作し、残りの2つもはめる。成功!すると部屋の真ん中の床が開く。階段が現れた。しかし黒霧が言い出す。「これ、結界貼られてるぞ。」え?「どうやら、まだ解けきれてなかったみたいだね。」梨花が言う。クソ・・・めんどくさいな。その時アクリアが、「これ見て!」と叫ぶ。いち早く反応した稲荷が「なになに?」とアクリアのもとまで行く。「あー!」さらにべリムも確認しに行く。「ティル!あったぞ!多分これだ!」俺も急ぐ。そこにはついさっきまであったかわからないくぼみがあった。たぶん謎を解いてから出てきたのだろう。「これ・・・」コードが赤、青、黄、白の4本と点滅する石。「これ、時限爆弾かなんかかよ。」その言葉に、「ば、爆弾?!」と稲荷が驚く。「いや、これは絶対爆弾じゃねーよ。こんなところに仕掛けるバカはいないからな。」俺はすかさず訂正する。「良かったぁ。」それぐらい分かれや。「とりあえず、この点滅してるのはきっとモールス信号だろう。トンとツーで言葉を作るんだ。」みんなへぇ〜という顔をしている。理解できてないなコイツラ。「長いのがツー。短いのがトンだ。」俺は石に注目する。・ー ーーー ・ーー ーーー ー・ー ・・ ・ー・ ・ AOWOKIRE…あおをきれ、青を切れ、だ!「青、青を切ればいい!」稲荷が本当?という顔をする。「何だよその顔は。」俺はそう言いながら、青の導線を切りにかかった。青い導線らしきひもが切断される。予想的中!バリアが消えた。「これで奥に進めるな。あとはボスのみだ!」
第12章「火水の蛇」
バリアが消え、俺たちは現れた通路の最奥へと進む。そこはドーム状の巨大な空洞で、中央には赤と青の二色に激しく渦巻く不気味な大泉が広がっていた。 「ここが、東の祠のボス部屋か……」 俺が呟くと同時に、水面が爆発したように跳ね上がった。 現れたのは、巨大な蛇の姿をした怪物。だが普通の蛇じゃない。一本の胴体から、炎をまとう赤い首と、激流をまとう青い首の二つが生えている。地響きのような咆哮が、狭い洞窟内に反響した。 「水と火を操る怪物……『サスライノオロチ』だ」 黒霧が刀を構えて叫ぶ。 オロチは容赦なく仕掛けてきた。赤い首が大きく口を開けると、凝縮された高熱の火炎弾が俺たち目掛けて降り注ぐ。 「防壁展開!」 咲良が瞬時に魔力の壁を張るが、火炎弾の凄まじい威力に一撃でひびが入る。 「きゃぁ!」 「咲良、下がれ! ここは俺たちが食い止める!」 雷牙が巨大な斧を構え、地を震わせながらオロチの足元へ突っ込んだ。下からの強烈な一撃を叩き込もうとするが、今度は青い首が凄まじい激流のブレスを放射し、雷牙を押し戻す。 「間髪入れずに属性が変わるぞ! ベリム、稲荷、合わせろ!」 リゲルが指揮を執り、空中へと跳ね上がる。リゲルの〝臨界穿刺〟がオロチの胴体を捉えようとした瞬間、オロチは火炎と激流を同時に周囲へ撒き散らし、爆発的な水蒸気を発生させてリゲルを叩き落とした。 「うわぁぁぁ!」 水蒸気の熱風に煽られ、後方にいたアクリアと梨花が吹き飛ばされる。「「きゃぁぁぁ!」」アクリアはすぐに体勢を立て直し、梨花に回復魔法をかけながら叫んだ。 「ティル、あいつ、火と水をぶつけて爆発を起こしてる!」 「相殺させるどころか、威力を倍増させてやがるのか……!」 俺は唇を噛んだ。雷獣レ・パルダの時のように、単に硬いだけではない。二つの異なる属性が完全に調和し、死角のない波状攻撃を繰り出してきている。 「刹那、黒霧! 左右から揺さぶりをかけるぞ!」 俺の指示に、二人が無言で頷く。 刹那が神速の踏み込みでオロチの右側面に回り込み、デバフの呪詛を放ちながら太刀を振るう。同時に黒霧が左側から影のように音もなく接近し、鋭い一閃を放った。 オロチの赤い首が刹那を睨みつけ、青い首が黒霧を迎撃する。二人の刃は確実にオロチの皮膚を捉えたが、傷口から溢れ出た魔力がすぐに炎と水に変わり、二人を力づくで弾き飛ばした。 「ハナ、ナルガ! 上空から奴の視界を奪え!」 「任せるのじゃ!」 「おう、相棒!」 ハナが神聖な光をまとって上空を旋回し、まばゆい閃光を放ってオロチの目を眩ませる。その隙にナルガが銃口を向け、真っ赤に燃える一弾「サンライズ」をオロチの眉間に叩き込んだ。 ズドォォン!と重々しい爆音があがり、オロチが初めて大きくのけぞる。 「今だ、畳み掛けろ!」 ベリムが前線へ飛び出し、自慢の金槌から激しい雷と火を放ち、稲荷が巻き起こした巨大な竜巻と融合させる。梨花も後方から「エーテルキャノン」を最大出力で照射した。 すべての攻撃が、オロチの胴体に直撃する。洞窟全体が崩落しかねないほどの衝撃波が吹き荒れた。 しかし、煙の向こうから現れたオロチは、全身から凄まじい魔力を吹き荒れさせ、さらに狂暴化していた。二つの首が天を仰ぎ、部屋全体を埋め尽くすほどの巨大な火炎と激流の渦を形成し始める。 「嘘だろ、あれだけの猛攻を受けて、まだ余力があるのかよ……!」 稲荷が絶望混じりの声をあげる。 奴の放つ魔力の圧に、みんなの足が止まる。これだけの大人数で攻めても、個々の連携だけでは決定打にならない。二つの属性を同時に、それ以上の威力でねじ伏せるしかない。 「……いや、まだだ。全員、俺に合わせろ!」 俺は前に出た。腰の羅生門に手をかけ、一気に魔力を引き出す。 「ウルフバースト!!」 叫ぶと同時に、羅生門が黒炎を宿す。「ハナ、ナルガ、もう一度上から奴を押さえつけろ! ベリム、稲荷、雷牙、黒霧、刹那、リゲルは、奴の二つの首の動きを数秒でいい、完全に止めてくれ!」 「分かった!」 みんなが俺の意図を察し、最後の力を振り絞って動き出す。 ハナとナルガが上空から光の檻を降らせ、オロチの自由を奪う。ベリムと稲荷が残った魔力をすべて注ぎ込んで水と雷の鎖を作り、赤い首を縛り付けた。雷牙とリゲルが突撃し、青い首の牙を武器で受け止める。黒霧と刹那の同時会心の一撃が、オロチの胴体を深く切り裂き、その動きを完全に静止させた。 「ぐぎゃぁぁぁ!」 オロチが激しく暴れ、縛り付けるみんなの口から血が滲む。限界は数秒もない。 「これで、終わりだぁぁぁ!」 俺は地面を爆破するように蹴り、一直線にオロチの胸元へと跳ね上がった。「ジャイアント...スラッシュ!」 羅生門が赤く光り、巨大な一撃へと変化する。 オロチの二つの首が俺を捉え、最大級のブレスを放とうとした瞬間、それよりも速く、俺の羅生門がオロチの胸へ突き刺さった。 ドォォォォォン!!! 激しい爆音と共に、赤いクリスタルがオロチの体内で炸裂する。黒炎が水と火の魔力を根こそぎ焼き尽くし、オロチの巨体が内側から崩壊していく。二つの首は悲鳴をあげる暇もなく、光の粒子となって霧散していった。「・・・やっ・・・た・・・のか?」確かに目の前にはもうあのおぞましい蛇はいない。「やったぞ!」俺達は歓声を上げた。だが、お目当てのものがない。神器、“神短刀:シチノゴゼン”だ。「シチノゴゼン、見当たんないね。」稲荷がなんだか残念そうに言う。「あれじゃないのか?」ハナが指す。なにか光っているものがある。「ほんとだ。おいおい、まさか体内にあったとか言わないでくれよ・・・」あ、これ絶対サスライノオロチがのみこんでいたやつだ。胃液がべっとりついている。「うげぇ・・・汚い。」俺は魔力で洗浄したあと、「さて、これで一つか。と拾い上げる。」しかしまだ2つもあるのか。めんどいなぁ。
第13章「添寝」
さて、どうしたものかな。次の祠の位置がわからない。この東の祠は奇跡的にたどり着けたものの、きっと西の祠はものすごく遠いはず。城はついさっきからずっと見えているが、ただならぬ殺気を感じたので近寄らないでおく。少し経って、「今日はここらへんで野宿ですね。」と咲良が言う。「だね〜・・・また野宿かぁ」梨花がすこし嫌そうに言う。「仕方ないだろ。ここらに宿とか無いんだからさ。」俺が励ますと、「じゃあお兄ちゃん一緒に寝て!」・・・なんでそうなる。いっつも夜が怖いとか言って。もう立派な小学生高学年だろ?まあ前世よりは歳は下がってるかもしれないけど、流石に更に小さくなった俺に甘えるのはどうかと思う。「...いいけど、一つ条件がある。」梨花は一回目を輝かせてそのあと条件って?という顔をする。「絶対に抱きついてくるな。」えぇ〜?という顔をする。あのなぁ・・・小さくなったからって精神年齢とかはお前より上だからな。それと寝る時寝返りうてないから邪魔だし。そこにハナが、「良いじゃないか。一緒に寝てやればよかろう。」という。俺はハナに小声で、「お前、コイツ(梨花)がどれだけ恐ろしいか分かってないな?」その言葉にハナは、「ただお兄ちゃんが好きなかわいい女の子じゃ。かわいがってやるのが礼儀じゃぞ。」ハナがすこし笑っているのを俺は見逃さなかった。「今笑っただろ?」その言葉にハナは、「...そ、そんなことないぞ?」ととぼける。「分かってんだろ。梨花の執着心がどれだけ強いか。」ハナはその言葉を聞くと、「でも数少ない癒し枠じゃ。咲良や刹那は怖い。」まあ、たしかにな。咲良や刹那にくらべりゃマシか。あの二人はこえぇからなぁ。「わかったよ・・・」なんで毎回こうなるんやら。そして夜。結局俺は人形のように抱かれて眠った。いや、眠れなかった。「邪魔すぎて寝れねぇ。」他のみんなは爆睡している。「なんで俺だけこうなるん?」すると「んふふ・・・」と梨花が言う。起きた?!と思ったが、寝言だったっぽい。俺を抱きしめる腕に更に力が入っていく。痛い!まって梨花、痛い!俺は夜通し痛みを耐えた。そして翌日。「どうしたの?!ティル?!」アクリアが聞いてくる。「は、はは・・・なんでもないよ。」「なんでもなくない!目がやつれてるよ!寝れてないんじゃない?」そう言ってから、梨花を見る。「梨花ちゃん、ぜったい強く抱きつきすぎたでしょ。」御名答です。梨花はギクッとして「し、してない!そんなこと!」「強く抱きつきすぎてティルが寝れなかったってことじゃない?」アクリアが更に言葉を重ねる。「・・・だってぇ」だってじゃねぇよ。まあ良いけど。次やったらまじで町においていく。アクリアが疲労回復魔法をかけてくれた。さて、冒険の続きだ。俺達はまた歩き出す。
第14話「幽霊船」
俺達は湖にたどりついた。「なあ、この湖でかすぎやしないか?」「海じゃない?」アクリアが言う。「ばかいえ。塩分が含まれてない。」アクリアが手に少しつけて舐める。ほんとだと言う顔をする。舐めんなよ。細菌だったり未知のウイルスだったりがいるかもしれないのに。近くに居たモンスターに話しかける。「なあ、ここの船って出せるか?」するとそのモンスターは怯えて、「む、無理だ。アイツラに沈められちまう!」あいつら?「あいつらって?」更に怯えた表情で「幽霊船だ!」と言った。「幽霊船だ?馬鹿げたことを言うな。」ナルガが珍しく正論で返す。「馬鹿げてなんかない!本当なんだ!」うーん・・・幽霊船かぁ・・・こっちの世界ならアリそうかも・・・「まあとにかく船を出してくれ。もしもその幽霊船が出たなら俺達が対処してやる。」モンスターの目が疑いに変わる。「本当にだね?」俺は頷く。しばらくして、「なら・・・大丈夫だろう。俺の名はクライム。ここで船着き場の管理と船の船長をやっている。」なるほど。「それじゃあ早速出してくれ。」「絶対に守ってくれよ?」クライムは少し不安そうに行った。信頼はしてくれているようだ。俺達はさっそく湖に出向した。沖に出て少し経つ。中央に近づくにつれ霧が濃くなる。「すごぉい!」アクリアと梨花が口を揃えて言う。ほんと仲良いなそこ。「こんな濃い霧初めて!」「すごーい!真っ白!」たしかにハナの言う通り癒し枠か。「なあべリム、この霧出発前あったか?」そう聞くと、「たしかになかったはずなんだが、ちょっと幽霊船は本当かもしれないぞ。」そこに稲荷が、「え?本当だよ?だって横見てよ。」俺達は横を見る。は?「ほら。並走してる。」ちょぉっと待てぇ?!なんでお前はそんなにはしゃいでいられるんだよ!稲荷!「おまっ、稲荷!はしゃいでる場合じゃねぇ!幽霊船と反対側に来い!」え〜?という顔をする。「もっと近くで見てみたい!」駄目だろ!「幽霊船に仲間入りしてもいいのか?!」稲荷の顔に少し恐怖が浮かぶ。「えぇ・・・それは嫌だぁ。」「なら早くこい。」そうだ、黒霧たちは?!左側を見る。黒霧、刹那、雷牙は居る。咲良は?!「おい!咲良はどこだ?!」黒霧が、「我らも探しているのですが・・・」その時、「ティル様!!」咲良の声だ。「咲良!どこだ!」「ここです!幽霊船の!」なんだって?!幽霊船の上を見る。「捕まっちゃいましたぁ・・・」手足を縛られ半泣きになっている咲良がいた。俺は考えるよりも先に体を動かした。そこにクライムが、「おい!まさか自分から幽霊船に乗るつもりか!自殺行為だぞ!」そんなの分かってる。だからといって仲間を見捨てろってのか?無理な話だ!俺は忠告を無視して幽霊船に飛び移る。「かかってこいよ!俺の仲間を連れ去ろうったってそうはいかないぜ!」俺は幽霊乗務員を片っ端から振りほどき、咲良の手足を縛っている。縄を切った。「ティル様・・・!」咲良はまだ怯えている。「大丈夫。俺がなんとかする。しっかり捕まってろ!」俺はまた船から船へと飛び移る。「あの中に突っ込んでいって無事とは・・・お前どんな根性しとるんだ!」クライムに言われた。まあ実際怖かった。死ぬかと思った。クライムの言う通り、生きて帰ってくるのはむずかった。アイツらに触れられたところが極少しだが分子レベルで分解されていくのが分かった。再生できるからといって、長居は禁物だ。「あれは危険だ。だからこそ鎮めよう。」クライムが、「急に何を言い出すんだお前は!死にたいのか。」「死ぬために戦うやつなんかいないよ。生きるために戦うんだ。」俺は再び幽霊船に飛び乗る。「あのバカ!」黒霧が言う。「戻ってこい!」べリムも必死になる。しかし俺は戻らない。なぜなら、梨花とアクリアがついさっきからいないのに気づいているからだ。「梨花とアクリアはきっとこの先にいる。」助けに行くからな。俺は心のなかでそう誓った。
第15話「スピードバトル」
俺は甲板にいる幽霊を振りほどきながら奥へと進む。艦隊の扉を開け、中に入る。中は思ったよりも広かった。「こりゃ大変だな。」見た目よりも広い。きっと魔法かなんかなのだろう。俺はさらに奥へ進む。少し開けた場所に出る。すると、「お兄ちゃん!」「ティル!」梨花とアクリアの声がした。「来ちゃ駄目!」二人は吊るされた折の中にいる。梨花は腕がない。分解されたのだろうか。それとアクリアはすこし小さくなったようにも思える。二人があの状態だからこそ長居は出来ない。「よぉよぉ、魔王さんが向こうからやってくるとは・・・大した度胸だ。」なんだ?聞いたことの無い声だ。「誰だ!」部屋の奥、霧の中から一人のリザードマンが現れる。カウボーイハットを被り、両手に拳銃を持っている。二丁拳銃か。「俺は海賊。色々あって死んじまったが、未だこの船に魂が残り怨霊とかした。」・・・そうか。「名はなんという。」「俺の名はベスト・ブルーム。んで、お前は本当に命知らずだな。」ブルームは嘲笑う。「何を嘲笑っている!」俺は怒鳴る。すると急に真剣な顔つきになり、「ごちゃごちゃうるせぇんだよ。人間だろうがモンスターだろうが俺の敵だ。」こいつ、過去に何があったんだ?ここまで人間とモンスターまで嫌うなんて・・・「よそ見厳禁!」俺ははっと前を向く。するともう目の前に弾が迫っていた。必死に避け、体制を立て直す。「くっ、速い!」するとブルームがにやりと笑う。「そうだろう。俺の弾を避けたことはまず褒めてやろう。初手で避けたのはお前が初めてだ。」ああ、俺でも危なかった。しかし黒霧ならなんとかできそうだが、そう考えているうちにもブルームは壁、天井、床と忙しなく動き回り全方向から打ってくる。クソッ!避けきれない!俺は咄嗟に「カウンター!」弾を弾く。見事ブルームの腹部に当たる。「おっと、見事だな。だが、残念。俺はもう死んでいる。痛みなんて感じないのさ。」銃弾はブルームの腹部を貫通し通り抜け、後ろの壁に当たる。ブルームは涼しい顔をしている。「そうか。でも実体はあるんだな。」ブルームがん?と顔をしかめる。「痛みを感じなくても、ダメージは通ってる。」ブルームが目を見開く。図星か?「クソ、大体のやつはここで絶望するからその時に撃ち抜いてるのに・・・」ブルームのスピードが早くなる。「こうなったらスピードで勝負だ!」俺は冷静に弾を避ける。あいつは今、冷静さを失って暴れている。こちらにしては好都合だ。俺はどんどん弾をカウンターしていき、ブルームに当てる。「・・・」ブルームが止まる。何が始まるんだ?〈ブルームパート〉ここまで追い込まれた。・・・なんでなんだ。父さん、母さん、兄さん。全員殺された。父さんと母は騎士団に。兄さんは...魔王に!そして俺も今、魔王に・・・もう一度殺されて・・・・「・・・・」いや、こんなところで終われない。俺は・・・俺は・・・!「まだ、やらなきゃいけないんだぁ!」体中に力がみなぎる。体中の皮膚が破け、下から新しい皮膚が出てくる。ついさっきよりもかなり筋肉質だ。だがそこで意識が少し遠のく。「グガァァア!」言葉を発したが、出てきた言葉はうめき声だった。〈ティルパート〉・・・とうとう自我を捨てたか。「そこまでやる理由はなんだ。」「マモノ...ニンゲン...ユルサナイ!」「過去に何をされたんだ!」「カゾク...ダイジナカゾクヲォォ!」ブルームが再びグォォ!と叫ぶ。「なるほどな。辛かっただろう。」だから、俺が沈めてやる。ブルームの強化された足が床を蹴る。ものすごいスピードで壁、天井、床と移動し、銃を捨てて爪で切り裂いてくる。ついさっきまでの優雅さなんてどこにもない。ただの猛獣だ。「これで、最後だ!」俺はトドメの一撃を叫ぶ。「亜空...切断!」眼の前の空間が真っ二つに割れ、戻る。ブルームは腹部から血を吹き出し、倒れた。「安らかに眠れ。」その瞬間腕が襲いかかる。すかさず俺は羅生門で切り落とす。「お...にい...ちゃん...」「ティ...ル」!二人がまずい!俺は檻を壊し、外に出る。幽霊が全員消えている。そしてこの幽霊船は・・・沈んでいる!「やべぇな・・・早くしないと。」俺は階段を駆け上がる。甲板に出る。まだ間に合う!黒霧が、「ティル殿!こっちだ!早く!」分かってる!俺は沈む幽霊船から船へと飛び移る。飛び移るやいなや刹那、咲良が抱きついてきた。「心配したんですよ!」「無事で良かったです・・・」心配させてすまないな。「それよりも、この二人を・・・」「二人だけじゃないよ。ティル君も手当しないとね。」稲荷が言う。まあそうだな。俺も分子分解で左腕と腹部の右側がない。肺も半分潰れているようだ。「というかどちらかと言うとティル君の方が重症。みんなも手伝って。クライムさんは船操縦して、この霧から出て。」クライムは「合点承知!」と前方に船を進めた。意識が遠のく。〈梨花パート〉目が覚めると船の甲板の上だった。幽霊船は見当たらず、横にはアクちゃんもいた。お兄ちゃんは・・・思わず息を呑む。左腕と腹部右側がないのだ。自分の腕は治っている。「お兄ちゃん!」意識はない。「梨花、大丈夫。」稲荷が落ち着いて言う。「命に別状はない。」・・・良かった・・・「けどどうする?治るまで結構掛かるよ、これ。」そう。お兄ちゃんの傷は浅いものなんかじゃなかった。私たちが捕まっていなければ・・・「自分が捕まったのが悪いって思ってる?」ハッとした。「そんなことで泣いてたらティル君悲しむでしょ。今は聞こえてないと思うけど。」私は涙をこらえた。でも、悪いのは自分だ。幽霊に自分から近づいてしまった。そんな事は誰にも言えなかった。船は霧を抜け、反対側の陸へと進んでいく。
第16章「目覚め」
アクリアの日記:1日目。反対側の岸の近くにあった巨大な木の洞でティルが目覚めるまで野宿することになった。ティルはまだ目覚めない。2日目。今日はモンスターの襲撃があった。言葉が通じるかと思ったけどまるで無理だった。ティルはまだ起きない。3日目。美味しそうな木の実を見つけた。少しとっておき、ティルの枕元に置いた。ティルはまだ目覚めない。6日目。少し怖くなった。稲荷によると、少しずつ回復はしているらしい。でもまだティルは目覚めない。20日目ティルの状態は良くなった。でもまだ目覚めない。22日目・・・「ティル・・・そろそろ起きてよ。」私の涙がティルの額に落ちる。ティルの顔が少し歪む。私は少しハッとした。遅いよ。「・・・なんか、額に水滴が・・・」ティルが目を開ける。私は思わず飛びついた。「うわ?!誰だ?!」・・・遅いよ。私は泣いていた。「アクリアか・・・俺、どのぐらい眠ってたんだ?」そんな質問をされる。何を呑気に・・・寂しかった・・・「3週間と今日も合わせて1日。」ティルの顔がえぇ?!という顔になる。「寂しかった!」私は少し怒った声で言う。「・・・ごめん。」そこに、「お兄ちゃん起きた?!」と梨花も入ってくる。「梨花・・ぐふぉ?!」梨花がティルの顔めがけて飛びつく。「やめろ!危ない。後ろの棚に頭ぶつけたらどうすんだよ!」梨花とティルがわーわーと言い合っている。私はなんだか笑えてきた。気づくと笑いが漏れていた。つられて梨花とティルも笑う。そこに稲荷が戻って来て、「え、何があった?」と困惑していた。
第17章「再開」
俺達は旅を再開した。この大陸に来てもうかなり経つが、あまり時間の流れを感じない。俺が寝ていた間は稲荷が手当や世話をしてくれていたらしい。「そういやナルガ。」ナルガが振り向き、「なんだ?」と聞き返す。「幽霊船の中で凄腕ガンマンと戦ったんだ。」なんだって?!という顔をして、「は?!まて、俺が戦いたかった!」お前だと多分スピードには追いつけるけど威力で押される。「いや、戦わなくてよかったよ。お前が戦ってたら仲間を失うことになってた。」ナルガはすこしなるほどという顔をしてから、「いいや、待て?良いように言ってるけどそれ遠回しに俺だと絶対負けるって言ってねぇか?」ははっ・・・どうかな?「お前はスピードはあるけど威力がないだろ?」ナルガは苦笑いをする。「俺は威力じゃねぇ。速さで勝負してんだ。自慢のスピードで弾なんか当たんね・・・」「あいつの方が早かったぞ。」ナルガはそんな馬鹿なという顔をしている。なんだろう。この顔見てるとじわじわ笑えてくる。「フフッ」「あ!笑っただろお前!」「笑ってないって」〈ハナパート〉フッ、微笑ましいものじゃ。〈ティルパート〉俺達はまた歩き出し、眼の前に大きな岩が見える。あれが西の祠?「東に比べてデカくねぇか?」「だね〜」稲荷がなんとなく適当に返す。ここから見えるものの、まだ多分10〜15kmはある。「疲れたよぉ・・・」梨花がへばっている。まあ人の体力じゃ、そうなるのも当然か。俺は梨花をおんぶして進むことにした。それを見た咲良、刹那が「ティル様〜私も疲れました・・・」「お前達はおんぶしてもらいたいだけだろ。」図星をつかれた二人は、その後梨花を睨んでいた。怖えなぁ。俺達は西の祠の眼の前についた。魔法陣に手をかざす。東と同じように階段が現れる。さぁて、何が待ってるのやら。
第18章「起動」
俺達は階段を降りる。今回はすぐに開けた場所に出た。真ん中には何やら起動していないロボットのようなものがある。人形で片膝をつき、片足はたてている。足の裏にはブースターがあり、背中にもある。指一本一本には穴が空いており、きっとエネルギー射出が行われるのだろう。顔は真ん中にアンテナのような突起。黒い横長な目がある。変な形だ。「これは・・・兵器か?」その言葉にアクリアが、「兵器って?」「戦争に使われる戦力だよ。」へぇ〜という顔をする。その時、黒く横長な目らしきものの真ん中に赤く丸い光が宿る。まずい!「みんな離れろ!」ロボの全ブースターから炎が射出される。「動くぞ。」ロボがブースターをうまく使い起き上がる。速い。なぜこんな巨体でこれだけ速い。まるで流れ星のようだ。これほど巨大な空間を用意した意味がわかった。こいつ、ものすごく速い。ロボはこちらに突進してくる。肩にRX-702と描かれている。「なるほど。RX-702か。かっこいいな。」斧を取り出し、叩きつけてくる。一撃一撃が重い。これ、やばいな。あの雷牙でさえも押されている。コイツは厄介だな。まあとりあえずまずは、「バリッカ!」RX-702に雷が直撃する。ビンゴ!やっぱり効くと思った。RX-702は機械。電気で動いているだろう。そこに更に電圧を加えるとショートする。しかしまだ動けるとなると原動力は電気だけじゃないみたいだな。魔力でも動いているのだろう。その時、指1本1本の先端から光線がほとばしる。全方向から光線が襲いかかる。そのうちの何本かが俺に激突し、俺は弾き飛ばされた。「ぐっ!」そこにハナとナルガが援護をする。そしてアクリアが回復に当たる。さらに黒霧と咲良が兄妹タッグでコンビネーションを決めた。「想像以上に硬いな。」そう。ただの金属じゃない。これは合金だ。しかもかなり強力な。でも、そんなときのための羅生門だ。「開門、ウルフバースト」羅生門今できる最大強化。「うりゃぁ!」俺は勢いよくRX-702の腕に切りつけた。切ることに成功!すごい。布を裁つぐらい簡単に切れる。改めてすごいと思う。その時、RX-702から機械音がした。《大きな損傷を確認。敵がかなりの手練であることを承認しました。バーサーカーモードへ突入します。》バーサーカーだと?更にやばくなるのか・・・そう思った直後。RX-702の外部パーツが何個か外れ、ついさっきとは違ったスリムなかたちになった。《バーサーカーモード。起動。》そういった直後には俺の眼の前にいる。こいつ、なんだ?本当になんなんだ。なんでそんなに早く動ける。巨大な光線で出来た剣が襲いかかる。羅生門で弾く。そして斬りつける。更に硬い!「ははっ・・・ほんとどうなってんだよ。」俺は更に斬りつける。いつの間にか周りの全員がやられている。まずい。これじゃやべぇぞ。俺は一旦距離を取った。しかし次の瞬間にはもう距離を縮められている。こいつはスピードタイプ。装備を外してついさっきよりも固くはなくなっているはず。それなのについさっき切れた羅生門を弾く。俺は雷牙の下まで行く。「雷牙、ちょっと斧借りるぜ」雷牙は力なく頷いた。さぁて、ここからが本番だ!俺は斧に力を込める。斧専用技・・・!「ビルドアップ!」そして「ギガントスマァァァァッシュ!」おれは叫びながら高速で向かってくるRX-702バーサーカーモードに向かって斧を振りかざす。虹色の斬撃が出て、RX-702の中心を通る。RX-702はその後真っ二つに割れて落ちていった。みんながここまでぼろぼろになったのは初めてだ。この先にいる〝氷を操る魔物〟がどれだけ強いのか・・・少し絶望すら感じた。
第19章「氷の魔物」
俺達は更に奥へと進んでいった。そして開けた場所に出る。「すごい・・・」地下のはずなのに、星空が広がっている。「ここ、地下...だよね?」梨花が聞く。咲良が答える。「そのはずですが・・・」「こいつはすげぇ。」ナルガも感心している。他は言葉を忘れて見入っている。すると正面で何かが動いた。「みんな!」全員がすぐに警戒態勢に入る。眼の前の水面が盛り上がる。「来るぞ。」水の中から何かが飛び出す。氷を操る魔物だ。美しい女性の見た目でありながらも、やはり狂気を感じる。「とうとうお出ましか。」氷の魔物は見た目に見合わない声を上げる。「キエェェェェェ!」 耳を突き刺すような金切り声と共に、氷の魔物――フローズンクイーンがその白い腕をこちらに掲げた。 瞬時に、俺たちの足元の床が激しく凍りついていく。 「みんな!避けろ!」 俺の叫びと同時に、全員が飛び退く。間一髪、さっきまでいた場所から巨大な氷の棘が何本も突き出してきた。 「な、なんて冷気……! じっとしてたら一瞬で凍らされちゃうよ!」 稲荷が狐の尾を逆立てながら、手のひらから炎を放って周囲の床を溶かしていく。 フローズンクイーンは不気味に微笑むと、今度は頭上に無数の氷の刃を形成した。それが豪雨のように俺たち目がけて降り注ぐ。 「防壁展開!」 咲良がすぐに魔力の壁を張るが、氷の刃は物理的な質量を持って壁を削り削り、強引に突破してくる。 「・・・!私と雷牙で前を抑えます!」 黒霧が刀を抜き、雷牙が巨大な斧を構えて氷の嵐の中へ突っ込んでいく。黒霧が鋭い斬撃で迫り来る氷柱を叩き落とし、その隙に雷牙がフローズンクイーンの足元へ自慢の怪力を叩き込もうとする。 だが、クイーンは冷ややかに笑うと、自身の体を一瞬で吹雪へと変えて霧散した。 「消えた……!? いや・・・上!」 リゲルが叫ぶ。天井の星空を背に、再び実体化したクイーンが巨大な氷の塊を練り上げていた。あれだけの巨塊を落とされたら、この空間ごと押し潰される。 「ハナ、ナルガ! 奴の空中からの攻撃を阻害してくれ!」 「任せるのじゃ! 光の加護よ!」 ハナが神聖な光を放ちながら飛び上がり、クイーンの視界を遮る閃光を炸裂させる。 「へっ、いくら冷たくてもこいつは防げねぇだろ! サンライズ!」 ナルガが銃口を上に向け、真っ赤に燃える一弾を撃ち込む。炎の弾丸が氷の巨塊に直撃し、激しい水蒸気を上げながらそれを相殺した。 「今だ、ベリム、稲荷、梨花! 遠距離から畳み掛けろ!」 俺の指示に、三人が息を合わせて魔力を解放する。 「これでも喰らいやがれ!」ベリムが火炎を纏わせた金槌を地面に叩きつけ、地を這う炎の衝撃波を放つ。そこに稲荷が竜巻を合わせ、炎の烈風へと昇華させた。さらに梨花が「エーテルキャノン!」と最大出力の光線を放つ。 激しい炎と光の濁流が、フローズンクイーンを真っ向から捉えた。激しい爆音と共に、辺り一面に白い霧が立ち込める。 やったか……!? しかし、霧の向こうから聞こえてきたのは、冷酷な高笑いだった。 「アハハハハハ!」 クイーンは完全に無傷だった。いや、それどころか、彼女の周囲には強固な氷の結晶の鎧が何層も覆い尽くしている。東の祠のサスライノオロチが属性の調和なら、このフローズンクイーンは圧倒的な「絶対防御」と「再生力」を持っていた。削られた氷の鎧が、周囲の冷気を吸って瞬時に元通りになっていく。 「嘘……、炎の魔法も全然効いてない……!?」 梨花が絶望に目を見開く。 「ティル、あいつの氷、ただの氷じゃないよ! 魔力を吸ってどんどん硬くなってる!」 アクリアが必死に周囲を観察して叫ぶ。 「魔力を吸う氷、か……。なら、絡め手は通用しねぇ。物理的な破壊力で、再生が追いつかねぇほどの純粋な一撃を叩き込むしかないな」 俺は腰の羅生門に手をかけた。 「刹那、黒霧! 奴の懐に入って、氷の鎧の一点にヒビを入れてくれ! リゲルはそこへ追撃を!」 二人が深く頷き、影のように地を駆ける。刹那が神速の踏み込みでクイーンの死角へ回り込み、太刀を振るって呪詛を叩き込む。防御力が一瞬低下したその隙を突いて、黒霧が渾身の一閃を放ち、氷の鎧に小さな亀裂を作った。 「そこだぁぁ! 臨界穿刺!」 リゲルの槍がその亀裂に正確に突き刺さり、ヒビが蜘蛛の巣のように広がっていく。 「キエェェェェーッ!」 不快そうに叫ぶクイーンが、周囲に向けて全方位の拒絶の冷気波動を放つ。三人とも血の気を失った顔で吹き飛ばされた。 「よくやった! あとは俺がブチ抜く!」 俺は地面を強く蹴り、跳躍した。 「開門、ウルフバースト!!」 羅生門に禍々しい黒炎を宿らせる。しかし、今回はそれだけじゃ終わらせない。俺は空中でありったけの魔力を引き出し、己の身体能力を極限まで引き上げる。 そして、「ウルフブースト!!」更に強化を加える。 黒炎の勢いがさらに倍加し、俺の体そのものが黒い流星と化す。 フローズンクイーンは迫り来る俺を凍らせようと、両手から最大級の絶対零度のブレスを放ってきた。触れたもの全てを凍結させる一撃。 だが、それよりも速く! 「これで、終わりだぁぁぁ!」 俺はヒビの入った氷の鎧の真ん中へ、羅生門を突き立てた。 黒炎と絶対零度の冷気が激しくぶつかり合い、空間がきしむような音を立てる。だが、ウルフブーストで強化された羅生門は、クイーンの氷を力任せに爆砕した。 ドグォォォォォン!!! 凄まじい衝撃波と共に、フローズンクイーンの巨体が内側から粉々に砕け散る。無数の氷の破片が星空のような輝きを放ちながら、光の粒子となって消え去っていった。 「ふぅ……。なんとかなったな」 着地した俺の前に、きらりと光るものが落ちてくる。それは武骨でありながら神聖な輝きを放つ、美しい斧だった。 「これが、二つ目の神器……“神斧:スサノオ”か」 俺がそれを拾い上げると、みんながボロボロになりながらも笑顔で集まってきた。 「やったね、お兄ちゃん!」 「さすがティル殿だ」 激戦を乗り越えた俺たちは、ついに二つ目の神器を手に入れた。みんなもうクタクタだ。
第20章「茶番」
俺達は西の祠から出て、きた道を引き返す。残るは城の大陸を全て自分のものにしようとし、天罰を下され醜い怪物になったという王、〝サタン〟のみだ。「もう少しだね。」アクリアが言う。「ところでティル様」刹那が聞いてくる。「なんだ?」「今このパーティー、一人多くないですか?」え?俺は確認する。まず、梨花。アクリア、黒霧、雷牙、咲良、刹那、リゲル、べリム、稲荷、ナルガ、ハナ、ミニゴブリン・・・ン?「誰だお前ぇ?!」ミニゴブリンは、気づかれた!と言わんばかりに焦っていた。逃げはしない。「誰と言われましても・・・」気ぃ弱っ!もうすでに消え入りそうじゃん。「とりあえずここは危ない。町に戻りな・・・」徒歩で歩くような距離じゃねぇな・・・「んで、なんでいるんだ?」黒霧が問いかける。「それは、フローズンクイーンにとらわれていたからです。」何だって?俺達は檻とかは見かけてない。どこにいたんだ?「あ、檻とかなかったと思ってます?」図星。そうです。「私が囚われていたのは檻などではありません。フローズンクイーンそのものにです。」???何を言ってるんだ?「えっと・・・つまり君がフローズンクイーンだったってわけ?」稲荷が聞く。「そういうわけでもなく、私は体内に閉じ込められていた。いわば生体ユニットのようなものです。」この世界に似合わない言葉出てきたな。まあいいか。「で、俺らが倒したから解放されたってわけか。」ナルガがカッコつける。みんなは見向きもしない。「おぉい!スルーすんな!」俺はその言葉も無視し、ゴブリンに向かって、「いま村におくってやるから目つむってろ」ゴブリンは小さく頷くと目をつむった。俺はワープ魔法をゴブリンに使う。ゴブリンが空高く村の方向へと飛んでゆく。「さて、先進もう。」俺は何事もなかったように進み始める。「お兄ちゃ〜ん」梨花がとても疲れ果てたような声を上げる。「はいはい、分かったよ。」俺は仕方なく梨花をおんぶする。やはり裏から2人ほどの鋭い視線が伝わってくる。怖ぇ。「とにかく残るはあと一つ。もう少しで3つが揃う。気を抜かず頑張るぞ。」みんなからの返事はない。振り返るとみんなバテて座り込んでいた。「疲れたよぉ」おいおい、・・・俺も疲れたぁ。俺も座り込む。その時誰かのお腹がなる。みんなでどっと笑い出した。
第21章「2つの神器」
俺達は少し休憩してからまた歩き出した。それにしてもここらへん木とかなくて日陰無いから熱いな。「ねぇ・・・水ない?」稲荷がちょっとしんどそうに言う。水はあるがもう少量しか無い。俺は仕方なく稲荷に水をやって、自分は耐えた。自分より仲間だ。更に少し歩くとなにか祭壇のようなものが見える。「こりゃなんだ?」ナルガが不思議そうに尋ねる。石板になにか描いてあるが、古代文字だろう。読めない。「3つの神器なるもの、ここに集い、融合する。」リゲルが読み上げる。あれ?お前古代文字読めるんだっけ?まあとりあえず、ここには3つの神器が来るっぽいな。まだ2つだけど・・・ちょっと試してみるか。俺は台の上に2つの神器を置く。すると2つの神器が浮かび上がり、融合し始めた。これ2つでも成り立つんだ。「すげぇ!」べリムが感心してみている。「ま、まぶしい・・・」アクリアは本当に光に弱いな。洞窟生ほぼ洞窟育ちで地上来てからも実験とかで部屋にこもりっきりだからな。そりゃしかたない。光の粒子が収まると、そこには元の二つの神器の姿はなかった。 代わりに台座の上に静かに着地したのは、一本の美しい漆黒の鞘に収まった太刀だった。 「これ……二つだけでも融合したのか?」 俺は恐る恐る手を伸ばし、その柄を握ってゆっくりと引き抜いてみる。 刃はどこまでも透明な青色をしており、まるで東の祠のシチノゴゼンと、西の祠のスサノオがそのまま一本の鋼になったかのようだった。刀身からは、触れるだけで凍りつきそうな冷気と、それを包み込むような不思議な熱気が同時に伝わってくる。 「おいおい、ティル……こいつはとんでもねぇ代物だぞ。鍛冶屋の俺から見ても、こんな業物は見たことがねぇ」 べリムが文字通り目を丸くして、刀を凝視している。 「名前……なんていうんだろうね?」 アクリアが眩しそうにしていた目をパチくりさせながら、横から覗き込んできた。 俺は刀を鞘に戻し、その表面をよく見てみる。すると、鞘の金口の近くに、小さく古代文字が刻まれているのに気づいた。 「……“神刀・天津風”」 リゲルがその名を口にすると、刀は呼応するように一瞬だけ小さくキィンと光った。「かっこいい……! お兄ちゃんにぴったりだよ!」 梨花が目を輝かせて拍手する。咲良も「お似合いです!」そして刹那も「その刀を携えたお姿、とても素敵です……!」と、いつもの熱い視線を送ってきた。後ろでは黒霧が「ふむ、これほどの刀なら、サタンとやらが相手でも遅れは取るまい」と満足そうに頷いている。 「二つでこれなら、三つ揃ったらどうなっちまうんだ?こりゃ」 ナルガが腕を組む。ハナも「うむ、予言の通り、我らが揃って神器も集まりつつある。不吉な気配のするあの城へ乗り込む準備は万端、といったところじゃな」と、頼もしく胸を張った。 俺は融合して新しく生まれた“神刀・天津風”をしっかりと腰に帯び直す。 手に入れたのはまだ二つの神器による融合形態だが、それでも手応えは十分だ。みんなの疲れも、この新しい希望の光で少しは吹き飛んだように見える。 「よし、みんな。これでサタンのいる中央の城〝イルミナデス城〟へ行く準備は整った。最後の一つ、〝神刀:五十嵐〟を手に入れて、ディアボロをぶっ倒すぞ!」「いくぜ!」「頑張ろう!」 俺たちの声が、遮るもののない大荒野へと響き渡った。残すは、地平線の向こうで禍々しい殺気を放ち続ける、あの城、イルミナデス城だ。
第22章「腸虫」
俺達は早速城へと歩み始めた。城の周りは砂漠地帯。更に暑くなるだろう。俺達は草原地帯からとうとう砂漠地帯へと移った。砂漠地帯の砂はサラサラしていて歩きづらい。「足が・・・!」後ろを振り返る。梨花の足が砂に埋まって抜けなくなっている。何やってんだか。俺は魔法で梨花を浮かせて足を抜いた。梨花は「早くおろして!」と焦った様子で言った。梨花は昔から高いところが苦手で浮いてる感じが駄目だったからな。きっとホウキに乗ってる時たまに酔って吐いてるのもそのせいだろう。俺は梨花をおろしてやる。そしてその数分後・・・「足が・・・!」また埋まった。俺は仕方なくおんぶをする。やれやれ・・・2人おんぶはキツイよ。なにせアクリアは砂だとくっついてダマができてしまうからである。あとから洗い流せるものの、本人曰くダマができるとものすごく痛いらしい。めんどくさいなぁ・・・そうだ!「アクリア、自分を魔力で包んだら良いんじゃないか?」アクリアはなるほど!という顔をして早速試してみる。成功だ。砂はアクリアにはくっつかない。「それと梨花、お前はホウキあるだろ。」梨花はそういえばという顔をしてホウキをまたぐ。すこしためらいの表情を浮かべ、飛ぶ。その時、砂の地面が少し揺れた気がした。「・・・気の、せいか。」またゆれた。これは気のせいなんかじゃない。なにか、来る![ドバァァン!]すぐ真下の砂が盛り上がり中から長いイモムシのような化け物が飛び出てくる。こいつは・・・前の世界でも見たことがある。伝説の生き物・・・モンゴリアン・デス・ワームだ!「おいおい、何だよこいつは!」ナルガがそういいながら空中で銃を構える。俺も羅生門を握る。そして右手には、「初めてだが、よろしく頼むぜ!天津風!」天津風がしっかりと握られている。「二刀流だ!」俺は早速走り出し、飛び上がって斬撃を食らわせる。キィィィン!! 「くっ……!」 手元に強烈な衝撃が跳ね返ってきた。刃は確かに奴の皮膚を捉えたはずだが、まるで見上げるような大岩を叩いたかのように火花が散るだけだ。 「嘘だろ、天津風でも斬れねぇのか!?」 ナルガが上空から驚愕の声をあげる。 デス・ワームは痛みも感じていない様子で、その悍ましい円形の口を大きく開いた。同心円状に並んだ無数の鋭利な牙が、不気味に蠢いている。 「キシャァァァァァッ!」 奴が吠えると同時に、口内からどす黒い酸の濁流が噴き出してきた。 「みんな、散れっ!」 俺は叫びながら空中で身を翻し、砂平へと着地する。俺たちが一瞬前までいた砂漠の地面は、激しい音を立てて泡立ち、瞬く間にドロドロに融解していった。ただの酸じゃない。魔力を帯びた強酸だ。 「足場が悪すぎて、まともに踏み込めないよ!」 稲荷が砂に足を取られながら焦りの声をあげる。その隙を突くように、デス・ワームの巨体が砂へと潜り、信じられない速度で砂原をうねり始めた。 ズズズズズ……! 「どこから来る!? 黒霧、気配を追え!」 黒霧が魔力探知を発動・・・と同時に叫ぶ。「……っ!真下だ! ティル殿、避け・・・」 黒霧の警告とほぼ同時に、俺の足元の砂が爆発するように弾け飛んだ。下から突き上げてきた奴の頭部を、俺は天津風の腹で辛うじて受け止める。だが、圧倒的な質量による膂力に押され、身体が宙へと高く打ち上げられてしまった。 「しまっ……!」 受け身も取れない空中。そこへ、デス・ワームが追撃と言わんばかりに、巨体に似合わぬ神速で肉薄してくる。奴の全身から、紫色の禍々しい電撃がバチバチと放電され始めた。酸だけじゃなく、雷撃まで操るのか! 「お兄ちゃんっ!」 梨花がホウキの上から悲鳴のような声をあげる。 「ティル様!」 咲良が必死に魔力を練り上げ、俺の全身に何重もの防御障壁を展開する。しかし、デス・ワームが放った極大の雷撃は、その障壁をガラスのように容易く粉砕していった。[ドガァン!!]「がはっ……!」身体を貫く激痛と、強烈な麻痺。意識が飛びかける中、俺は必死に歯を食いしばった。砂漠の熱気と奴の冷酷な猛攻。 だが、ここで折れるわけにはいかない。 「アクちゃん、今だよ!」 梨花の声が響く。アクリアが魔力の衣を纏ったまま砂の上を滑るように駆け、動きの止まったデス・ワームの側面に張り付いた。「ブレイブパンチ!」渾身の一撃が奴の体勢をわずかに崩す。 「これならどうじゃ!」 上空からハナが神聖な光の弾幕を浴びせ、ナルガの「サンライズ」が奴の目を貫く。 「……みんな!」 みんなが作ってくれた一瞬の隙。俺は空中で体勢を立て直し、天津風と羅生門に全ての魔力を注ぎ込んだ。 「冷気と黒炎……混ぜて混沌。押し通すッ!」 天津風から放たれる絶対零度の冷気と、羅生門の黒炎が渦を巻き、砂漠の熱風を切り裂いていく。俺は重力に従い、真っ逆さまにデス・ワームの頭頂部へと突撃した。 「おおおおおッ!!」 ドズゥゥゥン!!! 硬い皮膚と羅生門、天津風がぶつかり火花を散らす。「うおおおおおお!」俺はさらに力を込める。ウルフブースト!からの・・・ウルフバースト! 二つの相反する属性を宿した刃が黒炎をまとう。、今度こそ奴の強靭な皮膚を貫き、その皮膚の下へと深く突き刺さる。デス・ワームは激しくのたうち回り、やがて砂を巻き上げながら、その巨体を砂漠へと沈めていった。 「・・・ふう、死ぬかと思ったぜ・・・」 俺は羅生門と天津風を鞘に収め、荒い息を吐きながら砂の上にへたり込んだ。砂漠の魔物、強敵だった・・・・
第23章「孤城」
俺達はデス・ワームと戦ったあと、少し休んでからまた歩き始めた。城はもう目の前だ。「なあティル。」べリムが聞いてくる。「なんだ?」俺も聞き返す。「この城、瘴気がすごいぞ。生身で入ったらとんでもねぇ。」そうだな・・・「そのための天津風だろ。」べリムはへ?という顔をする。「知らんかったか?天津風は瘴気を5メートル範囲で浄化できる。」さらにべリムがえ?という顔をする。「まあ、とにかく大丈夫ってわけだ。」べリムはなんとなく頷いた。まあだろうね。じゃあのりこむか!「行っくよぉぉ!」と突っ込もうとした稲荷を掴んで止める。「天津風の半径5メートル以内にいろ。あと中には敵もたくさんいるだろ。むやみに突っ込むな。」稲荷が少ししょぼくれて「は〜い・・・」まあとにかく俺等は城の中へと入っていった。そこには何も居なかった。雑魚モンスターすら1体も居ないのだ。ましてや虫も居ない。その代わりに無数の死骸が転がっている。「みんな瘴気でやられたんだな。」梨花が顔をしかめる。「すごいにおい・・・」本当にすごいにおいだ。肉が腐ったようなにおいと発酵したような匂いが混ざっている。「こ、こんなところ、早く抜け出そう?」アクリアもヤバそうだ。「ティル殿。アクリアの言う通りだ。このにおいはあまり吸わないほうが良い。早く抜け出すのが妙案だろう。においがない場所・・・あるかわからないがそういった場所まで急いでいこう。」まあそうなるよね。たしかにここは危険だ。でも・・・なんか珍しいもんとかありそうで探索したいんだけど。「なあ、黒霧・・・ちょっとだけ探索・・・」「命のほうが大事です。」正論で返される。全くもっておっしゃるとおりです!でも少しだけ・・・俺は進路を少し変えた。が、黒霧に引っ張られて最終的には持ち上げられて運ばれることになった。「ティル殿はたまに危ない行為をするのでヒヤッとしますよ。」悪かったな。分かったからおろしてくれ・・・と言おうとした時、「黒霧さん〜お兄ちゃんこっちにちょうだい?」やべ・・・黒霧、絶対渡すな・・・オイィィ!俺は梨花に抱っこされた状態になった。なんでこうなるんだよ・・・俺は黒霧を睨む。黒霧はすまないといった顔をする。・・・なんでだよ。〈ハナパート〉やっぱりあの二人の組み合わせは良いな。やはり唯一の癒しじゃ。〈ティルパート〉結局俺は安全地帯に付くまでずっと抱っこされた状態だった。降ろされたあとしっかり説教した。まあ全然聞いてなさそうだったけど・・・「んで・・・ちょっと開けた場所だな。ここ。」その言葉を合図にみんながあたりを見渡し始める。「言われてみれば・・・」稲荷がたしかにと頷く。「これなに?」梨花が何かをツンツンと触っている。何を触って・・・?!梨花が触っていたのは、白く点滅している青色の小さな4足歩行の生き物だった。点滅・・・まさか・・・俺の脳内に昔やったゲームの緑色のクリーチャーがよぎる。もしかすると・・・「ちょ、梨花!そいつから離れろ!」そういった瞬間そいつは爆発した。「きゃぁ!」梨花が声を上げる。煙が晴れる。「梨花!大丈夫か・・・」あれ?梨花は無傷だ。え?爆発・・・「煙・・・だけ?」なんだよぉ・・・ビビらせやがって![パンッ!]何かが弾ける音がする。しかもさらに[ポンッポンッ]と聞こえてくる。何だ?敵襲か?俺は裏を向く。「あ、ティル君も食べる?ポップコーン。」・・・?稲荷がポップコーンを作り、梨花やアクリアがそれを食べている。ポップコーンかよ、ビビらせやがって・・・って、「なんでこんなところでそんな事してんだよ!」俺は怒鳴った。「だってここ安全ゾーンだよ?瘴気ないし。」まあそうだけど、「持ってたってことはそのポップコーン、瘴気にさらされてただろ。」稲荷が、あ!という顔をする。あ!じゃねぇよ。あ!じゃ・・・しかしそれを食べて大丈夫な梨花とアクリアはどうなってんだよ。考えると怖ぇな。「なんでそれくって大丈夫なんだよ。」すると稲荷が「これそういうぶっ飛んだお話だからどうにでもなるでしょ。」急にメタいな・・・「やめろ。今後そのようなメタい発言は控えるように。」稲荷はえぇ〜?という顔をする。もうツッコむのめんどくさいや。んで、黒霧とかは・・・お前らもポップコーン食ってるのかよ!「これ以外といけるな。」「美味しいですね。」何いってんだよ黒霧と刹那は。雷牙は食ってる時普通に無口だし。食ってないのは俺と咲良だけだな。「大丈夫なんでしょうか・・・」咲良が心配そうに言う。「大丈夫だろ。あいつら普通にピンピンしてるし。」俺と咲良はそのシュールな光景をじっと見ていた。無駄な休みを取り、ポップコーンを食い終わったあとに俺達は歩き出した。
第24章「水の騎士」
俺達は更に瘴気の中を歩いていく。その時、「なんか瘴気晴れたね。」たしかに。曇っていた空気中が透き通ってきた。「じゃあもういいか。」その時、眼の前の霧の中から何かが歩いて来ているのに気がついた。何だ?[ガシャンッ]という音がする。しかし同時に[バシャッ]という音も聞こえた。鎧系統だろうか。霧の向こうからその音の正体が姿を表す。そいつは、鎧の騎士だった。ただの鎧ではない。水でできているのだ。「なんだ?こいつ。」俺がそういった直後、その騎士は剣を構え、水の斬撃を飛ばしてくる。すかさず黒霧が俺の前に出て斬撃を弾く。[キィィン!]水なのに金属と金属が擦れあったような音が鳴る。やばくね?俺はすかさず鎧に天津風を振り下ろす。傷はついたが水だからすぐに再生してしまう。「ティル・・・!」アクリアが違う方向を指して怯えた様子で言う。俺がその方を見ると・・・その方向にも水の鎧の騎士がいたのだ。挟み撃ちかよ。その時「キャア!」梨花の悲鳴が聞こえる。「梨花!」反対側を向くと梨花が水の騎士に取り込まれかけていた。体が水だから人を引きずり込むのも簡単だろう。俺は必死に走ってその方向へと手を伸ばす。「おにいちゃ・・・!」が、遅かった。梨花はもう取り込まれ、水の騎士は去っていく。梨花が・・・梨花が連れ去られる。駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!俺は無我夢中に手を伸ばした。けれど梨花には届かなかった。いつも鬱陶しいが・・・誰よりも愛すべき、大切な存在なのだ。また失うのは・・・いやだ。絶対に絶対に絶対に・・・俺の目が一瞬赤く光る。しかしそこで正気に戻る。だめだ。このままだとまた暴走する。あの時のようになっては逆に梨花を傷つけてしまう。「まだ追いかければ間に合う。」俺はそう言って追いかけた。「ティル様!お待ちください!お一人は危険です!今は自分自身のお命が大事です!」そんなのわかってる。だけど・・・だけど俺にとっては妹の命のほうが大事だ!俺は走り、水の騎士に近づく。片方の水の騎士が斬撃を放つ。俺は走りながらギリギリで回避し、さらに梨花を取り込んだ水の騎士へと近づく。そして、「アドラフレイム。」これは昔ロンが使っていた魔法だ。(ロンについては読んでない人は1巻を読んでね☆)熱線で相手の頭を貫く。水の騎士の水を蒸発させ、跡形もなく消す。最初からこうすればよかったんだ。俺は倒れてきた梨花を抱きかかえ、もと来た道を引き返す。と、もう一体の水の騎士が切りかかってくる。俺はすかさずアドラフレイムを放ち、きれいさっぱり無き者にする。「さて、もう大丈夫だ。梨花。」俺は歩いてみんなのもとへと戻った。
第25章「醜き王」
俺はみんなと合流した。梨花はすでに目を覚ましていて、何もなかったかのように歩いている。よかった。「ちょっと!ティル君さ!危なっかしいな。」稲荷には言われたくないな。「ところで、どうしたその頭についてる半透明なのは。」稲荷がえ?という顔をする。自分の頭に手をやり、そのぷるんとした物を触ってすぐに手を引っ込めた。「な、何が乗ってる???」少し焦って聞いてくる。「スライムっぽいやつ。」稲荷が恐る恐るその半透明なやつを眼の前におろす。それは可愛らしいスライムだった。「わ!僕は悪いスライムじゃないよ!」なんか聞き覚えがあるセリフだな。「なんだコイツ。」雷牙が不思議そうにつまみ上げる。「わぁ!やめろ!ボクは強いんだぞ!敵に回したらやばいんだぞ!」なんかすっごいガキだな。しかも色々意味不明。「お前に構ってる時間はない。じゃあな。」俺は先に進みだした。「ちょっっと待てー?!」本当にやかましいスライムだな。「お前は本当になんなんだよ。構ってるひまはな・・・」そう言いかけて振り返ると・・・あ、そういう意味の待てか。「何このスライム。かわいい〜」梨花がそう言って抱きしめている。「ちょ、見てないで助けて!」なんか俺と同じようなことになってるな。意外と面白いかも。俺は反対方向を向いて「早く行くぞー」と一声かける。みんなはそれについていく。「んで、この城どこまで続いてるんだ?」かれこれ何時間も歩いている。「あれじゃないですか?」咲良が指差す方向を見ると、なんだか巨大な扉がある。「・・・っぽそうだな。行ってみるか。」俺達は方向を変え、巨大な扉へと進んだ。「これ・・・普通に開くんだ。なんかバリアとかあるんだと思った。」固定概念というやつか。その扉の向こうには・・・一匹の野獣が寝ていた。「あれが・・・サタン。」言い伝え通りではないが、汚らわしい姿だ。「グルル・・・」サタンの目が少し開く。「あ、気づかれた?」そうナルガが言うと、サタンが起き上がる。今まで戦った中でも一番威圧感が強い「ナルガのせいで起きたではないか。」ハナが皮肉交じりに言う。「え?俺のせい??」ナルガは一瞬困惑した。その時、「グルアァァァァァ!」サタンが吠える。その瞬間・・・サタンの鉤爪はもう目の前まで迫っていた。咄嗟にガードし、体制を立て直す。「・・・っぶねぇ」「ティル様!」刹那が叫び、すぐさま太刀を抜いてサタンの側面へと回り込む。咲良も遅れじと「防壁展開!」を唱え、サタンの追撃を阻むために魔力の壁を張り巡らせた。 しかし、サタンの巨体から放たれる圧倒的な一撃は、咲良のシールドを一瞬で粉砕する。 「きゃっ!?」 「咲良! 下がっていろ!」黒霧が影のように滑り込み、サタンの腕を刀で弾き飛ばした。金属が激しくぶつかり合うような不快な音が部屋中に響き渡る。 「おいおい、こいつ今までの奴らとは桁外れに硬ぇぞ!」ベリムが金槌を握り直し、冷や汗を流しながら愚痴る。「神刀・天津風」と「羅生門」を構えた俺は、みんなに指示を飛ばした。 「ハナ、ナルガ! いつものように上空から奴の目を眩ませてくれ!」 「任せるのじゃ! 光の加護よ!」ハナが神聖な光をまといながら天高く舞い上がり、まばゆい閃光を放つ。「へっ、神様の天罰とやらをもう一回思い出させてやるよ! サンライズ!」ナルガが銃口を向け、真っ赤に燃える弾丸をサタンの顔面へと叩き込んだ。 激しい爆音。しかし、サタンは顔を上げた。その醜い皮膚は少し焦げた程度で、ほとんどダメージを負っていない。 「嘘、ナルガさんの攻撃があんまり効いてない……!?」梨花がホウキの上で顔を青くする。アクリアも俺の後ろで「ティル、気をつけて! あいつ、みんなの魔力を力ずくでねじ伏せてる!」と声を張り上げた。 「グルルル……!」サタンの口からどす黒い衝撃波が放たれる。 「うわぁぁぁ!」前線にいた雷牙が巨大な斧で受け止めようとするが、その圧倒的な力に押されて吹き飛ばされた。「臨界穿刺!」リゲルが鋭い突きでサタンの隙を突こうとするも、強靭な鉤爪によって虚しく弾き返される。 「ベリム、稲荷! 動きを止めろ!」俺の叫びに応え、二人が息を合わせる。 「これでも喰らいやがれ!」ベリムが雷と火の衝撃波を放ち、稲荷が「そこだぁ!」と巨大な竜巻を巻き起こしてそれらを融合させた。さらに梨花が「エーテルキャノン!」と最大出力の光線を撃ち込む。 大爆発がサタンを包み込む。しかし、奴は煙を切り裂いて突進してきた。 「個々の攻撃じゃ突破できない……なら、これしかない!」 俺は腰の天津風と羅生門に全ての魔力を一気に引き出す。 「開門、ウルフバースト!!」 羅生門が禍々しい黒炎を宿し、天津風からは絶対零度の冷気と熱気が同時に渦巻く。 「刹那、黒霧、バフとデバフを頼む!」 「はっ! ティル様、全てを我が呪詛に!」刹那が神速でサタンの足元を駆け抜けながらデバフの呪いを叩き込む。一瞬だけサタンの防御力が低下した。咲良がすかさず「ティル様、いけます!」と俺に極大のバフをかける。 「おおおおおっ!!」 俺は地面を爆破するように蹴り上げ、サタンの胸元へと一直線に跳び上がった。 サタンがその醜い大きな口を開け、俺を噛み砕こうと迫り来る。だが、それよりも速く! 「冷気と黒炎……押し通すッ! ブレイブ・・・バースト!!」 天津風と羅生門の二刀が、サタンの胸の肉へと深く、深く突き刺さった。相反する属性がサタンの体内で激しく炸裂し、黒炎が奴の魔力を根こそぎ焼き尽くしていく。 「ガァ、ァァァァァッ!?」 サタンは悲鳴を上げながら内側から崩壊し、やがて光の粒子となって霧散していった。 その場にドサリと着地した俺の前に、きらりと輝く一本の刀が落ちてくる。 「これが、最後の一つ……“神刀:五十嵐”か。」だけどこれだと不完全だ。「折れ・・・てる・・・」そう。神刀:五十嵐は折れていた。刃が真っ二つに・・・
第26章「折れた刃」
「折れてるなんて・・嘘でしょ?」アクリアが絶望する。「これじゃ、この大陸を救えない。」もうこれは・・・諦めるしかないのか?「まだ、手立てはあるぜ。」べリムが言う。「まさかお前・・・」俺が言い終わる前にべリムは頷く。「俺が修復してやる。なんてったって俺は鍛冶師だからな。」得意げに鼻を鳴らす。しかしその後「ただ・・・」と困った表情を浮かべる。「どうした?」「実はこの五十嵐に使われてる素材が希少なんだ。見た感じベリハルコンで作られている。」ベリハルコン・・・「オリハルコンとは違うのか?」その言葉にべリムは「ああ。オリハルコンなんて比にならねぇほど硬い。」じゃあ形つくるのムズくね?「そいつは未だどこにあるのか分かんねぇんだよなぁ。」なんかどっかで見たことあるような・・・俺はポケットを探る。「それ、こいつじゃね?」べリムの眼の前に差し出す。「え、アアアアアアアアアアアア!それだ!」うっるさ?!「どこで手に入れたんだよ!」え〜?なんかなぁ「普通に落ちてた」べリムの顔がギャグ漫画なみに驚いた表情と鳴る。「でもこれじゃたりな・・・」「まだあるよ?」それを聞いてべリムは、「そうか。」と答えたあと、「まだある?!」と驚く。マジでこれたくさん落ちてるんだよねぇ。もしかするとこっちの世界では全然価値がない感じかな。「ま、まあこれだけ素材があるなら修復可能だぜ。」お、頼もしい〜俺達はべリムが集中できるように部屋から出た。カンッカンッという金づちの音だけが聞こえる。10分後・・・まだ終わらない。アクリアや梨花は寝ている。1時間後。一回金づちの音がやんだがまた再開。こんどは稲荷と刹那が寝始めた。2時間後・・・まだ続く。黒霧と咲良当たりが寝始めた。みんな退屈して寝始めちゃったじゃないか。べリム、早くしてくれ。俺も眠い。3時間後、お例外が全員寝たところで完成した。「完成だ!」べリムが扉をバーンと開けて出てくる。みんなはびっくりして起きる。「ぴゃい?!」梨花は謎な声を上げる。「おう、やっと出来たか。」俺はあくびをしながらも五十嵐を受け取る。軽い。思った以上に軽く丈夫だ。「さて、あの祭壇まで急ぐか。」俺達は城を出て、祭壇まで行った。「なあ俺達今さっきまで城にいたよな?なんでもう裁断前なんだ?」黒霧が疑問を抱く。俺は「なぁに。これは物語。どうにでもなる。」と答える。そして俺達は武器を融合させる。二本の剣が中をまい、一つとなる。光が収まると、そこには一本の刀があった。装飾も豪華だ。「すげぇ。」これならあいつに勝てる!それにしても、最初に言ってみるとかいう軽い気持ちで来たのにまさかこんなにも大事になるとはな。「さて、もう少しで終わりだ。」あとはディアボロを探して倒すだけ。「んで、そのディアボロは・・・」俺が言いかけると、「あっちの岩場に居そうだよ!」とアクリアが言う。〝ヨッシャ!〟待ってろよ・・・ディアボロ!
第27章「激戦」
俺達は岩場に向かって歩き出した。新しく手に入れた大神刀:破界滅天牙は普通の刀とは違う、紫色の光を放っている。岩場について、ディアボロの姿を確認する。「なんか・・・デカくなってない?」デカくなっている。初め戦った時よりも二周り以上大きい。それに二足歩行となっている。あの時の獣感は薄れている。「このままだと止められなくなるぞ・・・」ナルガが焦った表情で言う。「ああ。あの魔力量は異常だ。早く止めないと。」俺がそう言った瞬間、ディアボロの姿が目の前から掻き消えた。 「――っ!?」 「ティル殿、上です!」黒霧の鋭い警告の声。 見上げると、巨大化したディアボロがその鋭い爪を振り下ろしながら、ものすごい速度で落下してきていた。 「防壁展開!!」 咲良が瞬時に展開した最大出力の魔力壁が俺たちを覆う。しかし、ディアボロの質量と暴力的な魔力を乗せた一撃は、その頑丈なシールドを一撃で粉砕した。 「きゃぁぁっ!?」 「咲良!!」 衝撃の余波で咲良が吹き飛ばされる。すかさずアクリアが滑り込み、彼女をがっちりと受け止めた。 「咲良ちゃん、しっかり! すぐに回復させるから!」 「グルルルァァァァァッ!!」 咆哮をあげるディアボロの全身から、どす黒い魔力の波動が全方位へと放たれる。その圧倒的な圧に、雷牙やリゲル、ベリムでさえも足止めを食らい、前線へ踏み込むことができない。 「くそっ、近づくことすらできねぇのかよ!」ベリムが金槌を強く握りしめ、悔しげに歯噛みする。 「ハナ、ナルガ! 奴の注意を引いてくれ! 稲荷は俺に合わせろ!」 梨花がホウキの上から叫び、「エーテルキャノン!」を最大出力で照射した。 「任せるのじゃ! 光の加護よ!」ハナが神聖な光をまといながら天高く舞い上がり、まばゆい閃光でディアボロの目を眩ませる。「へっ、いくらデカくなろうが、俺のスピードにはついてこれまい! サンライズ!」ナルガが全速力で周囲を駆け抜けながら、真っ赤に燃える一弾をディアボロの顔面に叩き込んだ。さらに稲荷が「そこだぁぁ!」と巨大な炎の竜巻を巻き起こし、すべての攻撃を一点へと集中させる。 大爆風が巻き起こり、岩場が激しく揺れ動く。 しかし、ディアボロは煙を力ずくで引き裂き、全く怯むことなく突進してきた。その巨大な触手が、ホウキの上の梨花へと迫る。 「・・・!」俺は走り出す。 「梨花には指一本触れさせねぇ!!」 俺は地面を爆破するように蹴り上げ、空間を跳んだ。 背中に背負った、三つの神器が融合して生まれた大神刀:破界滅天牙を引き抜く。禍々しくも神聖な紫色の光が、薄暗い岩場を鮮烈に照らし出した。 「開門、ウルフバースト!!」 羅生門の黒炎を破界滅天牙へと纏わせる。そして 「ウルフブースト!!」 己の身体能力と魔力を極限まで引き上げる。天津風の熱気と冷気、五十嵐の聖なる力、そしてシチノゴゼンとスサノオの全ての力が、黒炎と混ざり合って巨大な紫黒の刃と化した。 「刹那、黒霧! 奴の動きを止めてくれ!」 「はい! ティル様!」刹那が神速の踏み込みでディアボロの死角へ回り込み、太刀を振るって呪いを叩き込む。一瞬だけディアボロの動きが鈍ったその隙を突き、黒霧が影から音もなく接近して渾身の一閃を放ち、奴の巨体を完全に釘付けにした。 「これで……最後だぁぁぁぁッ!!」 俺は重力に従い、真っ逆さまにディアボロの脳天へと突撃した。 「ブレイブ……バーストォォォォッ!!」 破界滅天牙が、ディアボロの強靭な肉体を真っ二つに切り裂くように深く突き刺さる。すべての属性と聖なる魔力が奴の体内で一気に炸裂し、どす黒い魔力を根こそぎ焼き尽くしていく。しかし煙の中で巨大な影が疼く。ディアボロはまだ倒れていない。「クソ・・・まだなのか。」「グギャァァァ!」ディアボロがそう叫び、一瞬にして移動する。「うわ!」「キャァ!」横から悲鳴が立て続けに聞こえる。「みんな・・・」横を向いた。みんな倒れている。いつのまに・・・!「そうか。なら1対1のタイマンだ。」俺の顔は全く笑っていなかった。笑えなかった。俺は静かに歩き出す。ディアボロは激しく暴れている。俺は破界滅天牙を横に構える。「いくぞ。」そう言って一気に踏み込み、一瞬で音速へと達する。爪と刀がぶつかり合い、火花が散る。「うおりゃぁぁ!」俺は思いっきり力を入れて押し返そうとする。が、逆に押し返される。飛ばされたあと体勢を立て直し、もう一度向かってゆく。「シャープスピン!」俺は回転しながら青い光とともに突進する。弾かれてもまた向かってゆく。「バーニングスラッシュ!」赤い炎をまとい切り裂く。少し傷は付くがすぐ再生される。「フレアバースト!」赤い熱戦がディアボロの体を撃ち抜く。しかし全く気にしてない様子で俺を叩き落とす。「くそ・・・どうしたら・・・」なにかあるはず・・・ディアボロが口を開ける。そこになにやら宝石のようなものが見える。「・・・あれか!」俺はすかさず「アドラフレイム!」その宝石に向けて熱戦を放つ。予想は的中だ。ディアボロはもがき苦しみ、手足をドタドタと激しく動かした。「さぁて、反撃の時間だ。」俺はまた踏み込み、口の中に剣を突き刺す。ディアボロが苦しそうにもがく。「これで・・・決める・・・!」このまま・・・「右に雷、左に豪火、上に水源 下には大地。大自然よ、俺に力を与えてくれ!」全方向から俺に向かい粒子が集まってくる。全ての自然の力を借りる技、その名も・・・「グランド・ディ・フィナーレ!」あたりが白い光に包まれる。「おおおおおお!」俺は思いっきり宝石に刀を押し付ける。その時、破界滅天牙が真っ二つに割れた。そこから強い衝撃波が発生する。「グギャァァァ!」ディアボロは大きなうめき声をあげて光に呑まれてゆく。。光が収まると、ディアボロは倒れていた。「やった・・・」ティルがそういった瞬間、ディアボロが最後の力を振り絞り、爪を振りかざす。[ズシャッ]鈍い音がして、血が垂れる。「うぐっ・・・」ディアボロはその後力なく腕をおろした。ディアボロ、討伐完了だ。それと同時に俺の意識が遠のく。「ティル!」向こうから意識が回復したのであろうアクリアが駆け寄ってくる。「ティル!しっかりして!」声が次第に遠のいてゆく。「ティル・・・」俺は完全に意識を失った。
第28章「激戦後の静けさ」
<アクリアパート>ティルの周りにみんなあつまっていた。「ティル・・・」稲荷が脈拍を確認する。「まだ生きてる。でもかなり脈拍が弱い。このままだと死ぬよ。」焦った表情だ。ここに居る者たちはみな、ティルに恩があるが、まだその恩を誰も返せていないのだ。「いやだ、お兄ちゃん!またいなくならないで!」梨花はまた兄を失うのが怖くて今にも泣きそうだ。「ティル様・・・」珍しく咲良と刹那が寄り添っている。刹那は咲良を慰め、自分も上を向いて泣いていた。「大丈夫ですよきっと。ティル様なら・・・」そう言うと刹那はもっと泣けたのか下を向いた。「一旦安全な場所に移動させよう・・・」みんなでティルを木陰に移動させる。そしてもう一度脈を測る。信じたくなかった。脈が感じられないのだ。私はもう一度脈を測った。振動がない。それに冷たくなってきている。こんなところで・・・大切な人を失いたくない。私が愛した人は・・・〝かならず私よりも先に死んでしまうんだ〟。過去に遡る。昔好きだった同族のスライムが居た。優しくて、仲間思いだった。でも・・・あの魔法使いが来て、その時に私をかばって死んでしまった。そして今目の前のティルも・・・私たちが気絶している間一人で・・・涙がほろりと流れる。「自分を責めないで。」稲荷の言葉にハッとする。「いま自分のこと攻めてたでしょ。そんな事してたらティルくんのためにならない。私たちは人じゃなくて魔物だからまだ生き返るかもしれない。魔物だけの楽園、ユートピアがある。」魔物だけの楽園・・・それは死んだ魔物が行くという生と死の間。「そこで生きる道を選んだなら生き返れる。それを願うしかない。」そう言ってティルを見つめた。<ティルパート>ここは・・・どこだ?浮いている感じがする。雲の上だろうか。「あぁ・・・俺、死んだのか。」これで2度目だな。現実で刺されて・・・こっちでも。しかしなんで意識があるんだ?「ようこそ。魔物だけの楽園、ユートピアへ。」裏から声がする。俺が振り向くと・・・「おまえ・・・」そこに立ってたのはロンだった。「久しぶりだね。」なぜ?魔物だけならロンは入れないはずだ。「何を驚いてるんだい?ボクは亜人と人間のハーフ。魔物でもあるんだ。それに魔物に優しくしていたから特別に入れたわけだ。」あぁ。また会えるんて・・・俺は何も考えずにロンの方へと進む。しかし、「君はまだこっち側に来ちゃいけないんだ。」どうして・・・「君はまだ死んじゃいない。この橋を渡るともう生き返れないよ。」でも・・・「どうする?こっちに来るか、大切な仲間の元へ戻るか・・・」何だよその言い方・・・「ロンだって大切な仲間だよ。」それを聞くと嬉しそうに、「それはうれしいけど、仲間だったという方が正しいね。」そんな事言うな。「ボクはもう生き返れない。じゃあ言い方を変えるよ。ボクのもとへ来て、また前のように暮らすか、それともまだ行きてる仲間たちの方へと戻るか。」どちらも・・・選べない。「さあ・・・」ロンは少し涙目だ。「ボクは戻ることをすすめるよ。なにせ、そっちのほうが仲間が多いだろ?」でもそれだとロンが孤独に・・・「ボクは良いんだ。さあ、戻りなさい。仲間の元へ。もう選択肢なんて必要ない。」俺が涙目になるとロンは、「大丈夫。心配いらないよ。君の名付け親はボク。その名前とともに、ボクはすぐ近くにいるよ・・・」視界が白い光に包まれていく。帰ろう。帰らなきゃ。みんなが待ってる。俺は目を開ける。ベッドで寝ていた。周りには見慣れた仲間たちが居る。「ティ、ティル君が起きた!」半泣きで稲荷が言う。それと同時にアクリアと梨花が飛び込んできて咲良と刹那も横でないていた。黒霧と雷牙は部屋の奥の方で安心している。涙目なところからついさっきまでないていたのだろう。ナルガも泣いていたのであろう潤んだ目をこすり、「おせぇよ、相棒。」と呟く。ハナも泣いていた。「みんな、待たせたね。」俺がかけれる言葉はそれぐらいだった。
第29章「生還」
俺達は一段落ついてから村へと出発した。みんなの涙も引っ込んで、いつも通りに戻った。梨花はまだ泣いていて、俺におぶられている。「さて、ワープで帰るか。」俺はいまこの場所に居るみんなにワープ魔法をかけ、初めの村まで飛んだ。村では長やその他の村人たちが帰りを待っていた。「とうとう倒してくれたんですね!」町の住民からは歓声がやまない。「まあ、なんとなくで。」俺はこういう人の多い場所は苦手だ。「それと、剣はなんか倒したときに消し飛んじゃって今ないんだけど・・・」それを聞いた長は、「大丈夫です。あの融合シ剣はディアボロと連動しており、倒した暁に消えるというようになっておったのじゃ。」なるほど。だからか。「というわけで、わしの城の中の鏡から現世へお戻りください。」俺達は静かに頷き、長について行った。城に入り、鏡の前まで来る。鏡に入ろうとした時、「これをお持ちください。」また別の鏡を渡される。なんでだ?「これはこの国へといつでも行けるようになるいわゆるワープ装置です。これでいつでもお越しください。」便利なもんだ。「分かった。また来るよ。」俺はそう言って鏡に飛び込んだ。続いてみんな飛び込む。また来たときと同じ風景だ。「わぁぁぁ?!」やっぱりいつまで経ってもこのスピードには慣れない。しかし来たときよりは早く出た。草原の上に。「へ?・・・うわぁぁぁぁぁぁ?!」俺達は落ちた。下に街が見え始める。俺達の町だ。「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」思いっきり石造りの道へと激突する。街中がどよめく。「ティル様?!」「それに黒霧さんたちも!」急いで周りの魔物は救出に向かった。しかしその瞬間、俺達は笑い出した。なぜ笑えるのか自分でも分からないが、俺達は一つすごい偉業を成し遂げたのだ。龍に変身したナルガとハナは中で回りながら笑っていた。こうやって笑い合える日々・・・最高だ。
第30章「冒険のその後」
いっぽうあのスライムは・・・「よいしょっと・・・もう・・・ボクの住処を荒らしてくれちゃって・・・ボクの分身も倒されちゃったじゃないか。」あれはボクの分身。ボクは普通のスライムじゃない。転生者だ。最弱だと言われるスライムに転生して、ここまで力をつけた。この城もちょうどよかったし、でも魔物や人を遠ざけるために作った分身はたいされちゃったけどね。現実世界では友と話してるときに殺された。ボクの元の名前は陽菜ボクっ娘だった。「あの魔王・・・壱だったんだよね?」そう気づいても、もう会えることはないのだ。
エピローグ
俺はいつもの生活に戻り、何気ない生活を過ごした。一つ気がかりなのがあのスライムだ。「あの喋り方・・・何処かで聞いたような気もするんだよなぁ・・・まあ気のせいか。」俺はそう言って朝食のパンを口に入れた。そして空を見て、「父さん母さん、それに唯一つ仲良くしてくれた陽菜・・・元気かな。」
あとがき
ことたびは魔王転生〜永遠の大陸〜を最後まで読んでいただきありがとうございます。一言一言よく考えて書きましたので、よければもう二度くらい読んでほしいです(強欲)。4巻も作成中ですのでできたらそちらもよろしくお願いします。




