表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ガチ恋プリンセス】SideStory 『Future Visioned Star』~エピソード0~  作者: 夕姫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/34

第14話:5点の主人公

第14話:5点の主人公




 1週間後のスタジオ。防音扉の向こう側に広がる光景は前回と同じはずなのに、私の網膜に映る色彩はどこか違って見えていた。


 コントロールルームに座る霧島栄美さんの、すべてを見透かすような深い眼差し。隣で腕を組む白河ディレクターの、妥協を許さないプロの横顔。そして、ガラス越しのロビーで、自分のことのように拳を握りしめて私を見守る、詩音さん、若菜さん、ひよりちゃん。


 私は、1人きりのブースで、マイクの前に立った。


 手元の台本は、1週間前よりもずっとボロボロになっていた。書き込まれた「正解」のメモを、私は昨夜、すべて消しゴムで消した。


 代わりにそこに残っているのは、何度も何度も指でなぞった跡と、消しきれなかった思考の断片だけだ。


 《如月さん。準備はいいかな?宿題の答えを期待してるからね》


 霧島さんの声が、スピーカーから静かに流れる。


 「……はい。お願いします」


 私は短く答え、目を閉じた。


 この1週間、私は自分の中にある「空っぽな器」と向き合い続けた。3人と食べたもやし山盛りのラーメン。胸が焼けるような脂の匂いと、仲間たちの体温。


 そして、西園寺イブという女の子が、なぜ「もやし」を選び続けるのかという、設定資料の行間にある絶望を、私の身体に流し込んできた。


 彼女は、未来が見えてしまう。


 結末が分かっているからこそ、自分の意志で選べる「今夜の食事」だけが、彼女に残された数少ない、血の通った抵抗なのだと。


 モニターの中で、イブが自嘲気味に口角を上げる。


『……はぁ。また描かれた。最難関の結末。……結局、抗ったところで、この未来日記通りってわけね』


 私の喉が、微かに震える。今までなら完璧に制御していたはずの吐息が、コントロールを離れて漏れ出した。


『はぁ……お腹、空いた。……でも、今の私には、これがお似合いよ』


 私は、前回「0点」を突きつけられた、あの決定的なセリフに辿り着いた。


『ふふ、……もやしね、確定事項』


 その声は、1週間前のような「綺麗な梱包」はされていなかった。


 少しだけ掠れ、語尾には、やり場のない感情の「ゆらぎ」が混じっている。けれど、そこには確かに、私が食べた「もやし」の苦味と、それを分かち合った仲間たちの熱が宿っていた。


 セリフを言い終えた瞬間、スタジオ内を支配したのは、呼吸さえも躊躇われるような沈黙だった。私は、マイクを握りしめたまま、ガラスの向こう側を凝視した。


 ……また、間違えただろうか。技術的には、今のテイクは「掠れ」が入りすぎていたかもしれない。


 不安が、再び私の器を侵食しようとした、その時。


 コントロールルームの霧島さんが、『ふふ』と吹き出すような小さな音をマイクが拾った。


 《…… 如月さん、今のテイクだけど》


 霧島さんは椅子に深く背を預け、意地悪く、けれど最高に楽しそうに目を細めた。


 《……うーん、5点かなw》


 「え……っ」


 予想だにしなかった「低得点」に、私は思わず呆然と立ち尽くした。ロビーの3人も、一瞬で顔をこわばらせるのが見える。けれど、霧島さんの言葉には続きがあった。


 《技術的には、前回よりずっと下手。声も掠れてるし、声量も少ないし、リズムも少し重い。……でもね。前回の100点には何の価値もなかったけど、今日のこの「5点」には、西園寺イブとしての命が宿ってる。 残りの95点は、これから作品を作っていく中で、如月さんがイブちゃんと一緒に見つけていけばいい》


 霧島さんは立ち上がり、ガラス越しに私へ向かって、力強く親指を立てた。


 《合格。……最高の、5点だったよ。でも録りなおしだねw》

 

 「合格」という言葉が脳に届いた瞬間、全身の力が抜け、膝が折れそうになった。白河ディレクターも、いつになく穏やかな顔で深く頷いている。


 ブースの扉を開けると、そこには自分のことのように涙を浮かべたひよりちゃんと、誇らしげに胸を張る詩音さん、そして静かに拍手を送ってくれる若菜さんの姿があった。


「瑞希さん!すごかったです!今の声、本当にもやしの匂いが……あ、いえ!イブちゃんがそこにいるみたいで……!」


「……ふふ、おめでとう瑞希ちゃん。100点の偽物を捨てて、ようやく泥だらけの『主役』になれたわね」


「規律の中にある、真実の響き。……素晴らしいテイクでした、瑞希さん」


 三人の体温が、私の空っぽだった器に、温かい色彩を満たしていく。


 私はもう、ただの「正解を出す機械」ではない。彼女たちと共に、傷つき、迷い、それでも前を向く、一人の表現者としてここに立っているのだ。


 霧島栄美さんが、コントロールルームから出てきて、私の肩をぽんと叩いた。


「如月さん。あなたの器が空っぽなのは、それだけ多くの『命』を受け入れることができる、最大の才能かもしれないね?……これからが楽しみだね、5点の主人公さん」


「……はい! ありがとうございます!」


 私は、深く頭を下げた。


 私の止まっていた秒針は、今、仲間たちとの共鳴という、力強く、瑞々しいリズムで加速し、未来を刻み始めた。

『面白い!』

『続きが気になるな』


そう思ったら広告の下の⭐に評価をお願いします。面白くなければ⭐1つ、普通なら⭐3つ、面白ければ⭐5つ、正直な気持ちでいいのでご協力お願いします。


あとブックマークもよろしければお願いします(。・_・。)ノ


こちらでキャラクターのイメージ画像とイメージSONGがあります。興味があるかたは1度観に来てくださいo(^-^o)(o^-^)o

私のYouTubeのサイト

https://www.youtube.com/channel/UCbKXUo85EenvzaiA5Qbe3pA

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ