13話 ヒーローさん攻略ですPart.3
それからしばらく口論をしていた。
どうやら悠里が戦闘中らしい。
──それにしても……オアシスを使う、か。
「そんなことが本当に可能なの?」
僕に背を向けているハピネスに問う。
「あれ?知らなかった?
ポノラちゃんのオアシス注入装置って、私が作ったんだよ?
出来るに決まってんじゃん」
ハピネスは驚いた表情で振り向き、自身を指差した。
知らなかった……。
そりゃあなんでオアシスなんて、百害あって一利なしの代表みたいな劇薬を注入して、生きているのかっていうのは気にはしていたが、まさか、目の前の女性が。
それも、およそ天才にも見えない変態が作ったなんて。
「君、めっちゃ失礼なこと考えてないかい?」
「いいえ、まったく」
じとりと睨むハピネスに首を振る。
「まあいいや。しっかし……。
なんであたしの周りは話を聞かないやつばかり集まるんだろう?」
類は友をとかいうのじゃないの?
そんな言葉を飲み込み、モニターに目を移す。
モニターでは、悠里とロボットが戦っているのが映し出されている。
やっぱり、改めて見ても化け物だな。あいつ。
カメラが動きを捉えきれていない。
「そういえばハピネス……さんはあいつと古い仲なんだよね」
「そうだよ。腐れ縁さぁ」
その事実が嫌なのか、少し嫌悪感を露にする。
「あいつってなんであんなデタラメな力を持ってんのに警察になったの?
あれだけの力、すぐにトップヒーローとして活躍出来るだろ」
ハピネスは肩をすくめ、ため息を吐きながら答える。
「あいつは狂ってるからね。
権力とか名声とか。そういのに興味無いのさ。
だいたい、能力を隠して生きてるやつになんてロクなやつがいないしね。
それにあいつの目的は──」
ハピネスはモニターを汚物を見るような目で見つめる。
モニターには、悠里が立っているのが映っている。
ヨダレが無造作に垂れ、目が完全にキマっていて明らかに異常だ。
「エゴに塗れたおぞましいモノよ」
「なんなんだよ……一体」
******
あまり使いたくなかったんだけどな。
こんなところで時間を使うわけにもいかないし。
今から行うのは限界へ挑むための技。
その技の名は。
「『生命解放』」
そう言うと、全身から強烈な虚脱感が湧き上がり、膝がガクガクと震え始めた。
ここに立つことも、唾を飲むことも、呼吸することも。
何もかも面倒くさい感覚に襲われ、次第に呼吸も浅くなってくる。
さらには、瞬きもしたくなくなり目がシパシパと乾く。
だが、しばらくすると、それらはすべて治まった。
「──よし」
ヨダレを拭い、深呼吸して、呟いた。
先程からは考えられないほど、とてつもなくやる気や力が溢れてくるのを感じる。
その間、ロボットはこちらに近づこうとはせず、少し後ずさりしていた。
状況が把握できるまでの時間稼ぎのためか、もしくは野生の本能か。
なんにせよ、勝利は確定した。
踏み出し、ロボットへ接近する。
一歩だけで2メートルは進んだと思う。
その勢いでロボットの人間で言うと腹部の位置にドロップキックをかます。
ロボットはそのまま壁まで吹き飛び、勢いよく壁に衝突した。
『内部の破損箇所を検出。パイロットに警告。本機体からの脱出』
『かまわない。続ける』
『パイロットの続行を承認。オーガを起動します』
ロボットは立ち上がり、自分の装甲をすべて剥がすと、剥がした装甲をそこらに投げ捨てた。
そして、頭部から2本の角ようなものが生え、その2本の先端に黒く丸い球体が取り付けられている。
その姿はまさしくオーガ──鬼だ。
まあそんなのはなんの障害にもならないけど。
でも、一応どういうモノか見てみようかな。
俺はロボットの背面に回り、2本の角に飛びつく。
2本の角には電流が流れているらしく、少しビリビリする。
『──っ!?3000アンペアの電流だぞ!?なぜ生きている!』
「強いから」
我ながらキモい返答だなと、思う。
俺は2本の角をへし折り、ロボットから降りる。
『だとしてもだっ!なぜ触ろうと思える!?』
パイロットの声には怒気が含まれていた。
だがしかし、その問いに対しても俺が強いからと返答した。
答えはそれ以上でもそれ以下でもないのだ。
傲慢だと言われても、それが真実なのだからどうすることも出来ない。
「ちょっと手荒だけど許してくれよ」
ロボットの腕を掴み、少し振り回して壁に叩きつけた。
壁に打ち付けられたロボットからは火花が散り始める。
どうやら完全に壊れたようで、動く気配はない。
中の人は無事だろうか。
あれだけ激しく動いていたので、衝撃などの対策はされていると踏んでいるんだけど。
生きているかを確認するために近寄る。
見ればコックピットに隙間が出来ている。
中を覗くと中年ほどの男性が泡を吹いて白目を剥いていた。
「お、おーい大丈夫……なわけないか」
念の為、聞いてはみたが返答はない。
とりあず外に運び出そうと、隙間に手を入れ、最後の装甲を剥ぎ取った。
「えっ?」
急いで脈をとり、生きていることを確認して一安心したのもつかの間。
彼の体が熱いことに気づいた。
高熱、それに加え、首の血管がパンパンに腫れ上がっている。
どうしようかと、考えていたところを後ろから声をかけられた。
「どいてください」
振り向くと、包帯を顔にぐるぐる巻きした白い防護服姿の二人組がいた。
手には担架をもっている。
声色的に片方は女性だろうか。
「あ、ああ。この人をお願いします。
それと、ハピネスにいい加減通してくれ、と伝言を。
この人のような方をあまり増やしたくないので」
二人は無言で担架に彼を乗せ、階段を駆け上ってしまった。
「いや、普通に話しかけてきたけど誰なのあれ?」
まあ助けようとしてるのであれば別にいいか。
彼の治療は彼らに任せよう。
治療……するんだよな?
ちょうどいいから何かの実験に、とかじゃないよな?
首を振り、怖い考えを飛ばしてから階段を登った。
考えていてもしょうがない。
今は上に向かうことを優先しよう。




