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ヒーローになりたくて頑張った結果警察から国の敵になりました〜丁度いいので復讐します〜  作者: ねぎマイト
旧友に会いに行くだけのごくごく普通のお話
13/31

12話 ヒーローさん攻略ですPart.2

 ……コード007。

 奥の手なのか、顔や姿は見えないが。

 パイロットから並々ならない覚悟を感じる。


『ストップ、ストップ!何やってんの!?それは非常用だって言ったじゃん!ダメ。停止して!』


 ハピネスがアナウンスをかけ、焦るように命じる。

 しかし、ロボット、パイロットからは一向に返事がない。

 ハピネスが一度命じたことを、たとえ自分が犠牲になろうとも忠実に実行するこれは、一種の狂信からだろう。

 乗っているのはハピネスを信仰する信者のようだ。


「──これも昔は無かったな……」


 思えば、ハピネスが信者を気遣うことも、信者が自分の身を犠牲にして、命令に従うことも昔は無かった。

 ハピネスは信者を適当にあしらい、信者は俺が暴れまわったら一目散に逃げて、部屋の隅で震えていた。

 あの頃が嘘だったように思える。


『聞いてるのか?これは命令だ!て・い・し!』

『ハピネス様……申し訳ありません。ですが、相手は化け物、今持っている全てで対応しなければならないと判断しました』

『そんなことはどうでもいいんだ!とにかくオアシスを使うのはやめ──』


 スピーカーに斧が投げつけられ、ハピネスの声がフロア内から消えた。

 それにしても、聞き捨てならない単語が聞こえたな。


「──オアシスを使う、だと?」


 使った人間は廃人になるんじゃなかったのか?

 まさか瞬のやつ。

 嘘をついたのか?

 ロボットが機械音声で告げる。


『オアシスを注入します』


 コポコポと液体の流れる音が聞こえる。

 コックピット内のパイロットは悶ているのか。

 ロボット全体がゆらゆら揺れていたが、じきにぴたりと止まった。

 様子がおかしいのはすぐに見て取れた。

 先刻までの人間らしく二足歩行をしていたロボットが。

 今は手を前に出し、ゴリラのような体勢をとっている。

 そこはかとなく野生、それも獰猛な獣と対面しているかのような圧迫感を感じる。


「あっぶね!?」


 なんの予備動作もなく、右腕を上から叩きつけてきた。

 振りかぶることもなく、ただ近づいてきて、叩く。

 虫を押し潰すように淡々と。

 だが、それで十分。

 人を殺す方法はなにも武器を使うだけではないのだから。


「っ!?」


 続けざまに、俺の逃げた先を叩く。

 しかし、それはブラフだった。

 そこから、また俺の逃げた先に動きだす。

 まるで分かっていたかのように。


 野生的な雰囲気とは裏腹に。

 冷静で合理的な判断を即座に下し、行動する。

 先程までのロボットの動きではない。

 たぶん、中のパイロットに何かあったのだろう。


「ほぼ()()()()じゃねーか──っ!?」


 もはや、人間の反応できるスピードを超えたというのに。

 なおも俺の動く先を読み、叩く。

 人間を超えた存在になりつつあるのは明白だろう。

 人間を超えた存在、つまりはヒーロー。


 反撃をする暇のない猛撃。

 叩き、先回りして、叩き、またさらに先回りをして、叩く。

 モグラ叩きじゃねーんだぞ!


「どっちが化け物だよ……」


 よもや、こんなところで能力を使うハメになるとは……。

 俺は避けるのを止め、立ち止まった。

 ロボットもこちらの動きを訝しむように止まる。


「いっそのこと、突っ込んでくれたほうが楽なのにな……」


 ***

 ハピネスが密かに泣いた後。


「やあ!アンダードッグくん……でいいよね?」


 さっきまで階段にいたのに、気づけば見知らぬ部屋の中。

 どうやら気を失っていたらしい。

 部屋は全面ガラス張りで、キッチンや冷蔵庫など生活感あふれる内装。

 ただ、床には何かが書き殴られた紙が散乱しており、足の踏む場もない。

 まあ、僕は椅子に拘束されているから踏もうにも踏めないけど。

 この部屋は目の前にいる女の部屋だろうか。


「あなたは……?」

「おっとこれは失礼」


「おほん」と咳払いして、女は声高らかに言う。


「私の名前はハピネス!!神が作り出した最高傑作、天才ハピネス様だ!いいや……神すらも私を超えることは出来ない!私こそがこの世のすべてを知り尽くした真の神だ!」


 空いた口が塞がらない。

 天才は往々にして変人が多いが、これはなんというか。


「──中二病?」

「ちっがう!私は天才なの!そんなのと一緒にしないでくれる!?あんたも知ってるでしょ?下のロボットの数々を。あれ作ったの私なんだからね?」


 自慢げに言うハピネス。

 確かに、あんなロボット。

 見たことも聞いたこともない。

 しかし、にわかに信じがたいのも事実。

 目の前のこんなどこにでもいそうな女性が、あんなものを開発したなんて。

 信じろという方が無理な話だ。


「それで?僕をここに連れてきた理由は?人質のつもりならゴメンだけど、僕に人質の価値は無いよ。かと言って殺す価値も今はない」

「殺すなんてとんでもない!」


 ハピネスは手をブンブンと振り、即答した。


「私はただ君のようなショ……小さい男の子がどういう生活をしているのか聞きたい。いわば取材かな」


 僕の二メートルほど前の机まで歩いていく。

 机の上に置かれたペンと手帳を手にとると、近くの椅子を足で引っ掛け、僕の前まで運んだ。

 運動を普段してないのか、その一連の動作で少し息があがっている。


「……それでね。私は君の私生活について聞きたいんだ。例えば、『朝はパン派か米派か』みたいな」

「聞いてどうする?」

「君みたいな子がどういった生活をしているのかを直に聞きたくてね。君は()()()()()だからね。そんな環境で育った子がどういった生活をするのか。とても興味があるんだ」


 まあそれくらいならいいか。

 悠里が僕がアンダードッグとバレたらいけない、みたいなことを言っていたからどうなるかと思ったら。

 なんだ案外大したことないじゃないか。


「朝はパンも米も食べない。効率的に栄養を補給できるサプリとか、バーを食べているからな。それに時間の無駄だろ?」

「なるほどなるほど……。それじゃ、次の質問ね?おねしょはしたことある?」

「ああ、おねしょか。そうだな──っ!?待て待て!それ必要か!?なんで急におねしょの話になるんだよ!」


 笑顔で自然に聞いてくるものだからうっかり答えそうになった。

 絶対なんの関係もないだろ!


「いやいや!気になるでしょ?」

「気になっても普通は聞かないよ!」

「いいじゃないか。君の質問に私は懇切丁寧に説明したんだからさぁ。」


 それとこれとは話が別だろう。

 ハアハアと息を荒立てながらにじり寄ってくるハピネス。

 息が荒いのは息切れしているからではないのはなんとなく分かる。

 怖い。ちょー怖い。

 こういうことか悠里。こういうことだったのか。


「やめろ……来るな、来るなぁぁぁ!」

「滅多にショタなんて来ないからさ!こういうのは聞けるうちに聞かないとねぇ。大丈夫、絶対何も危害は加えないからさぁ。エヘ、エヘへへへ」


 気持ちの悪い笑みを浮かべて、僕の後ろの方に手を伸ばす。

 後ろで何をやっているのかは分からない。

 けど、何かをいじっているのは分かる。

 ガチャガチャと後ろで何かをいじっている。


「な、なにやって……」

「自白剤」

「はっ?」

「自白剤」


 何が何でも喋らせるつもりらしい。

 いじり終えたハピネスは改めて、僕の前に座り直す。

 手にはしっかりと錠剤の入った袋と、水の入ったペットボトルを握りしめていた。


「飲もっか」


 にこりと笑い、錠剤を取り出し、僕の口にねじ込もうとした時。

 モニターをチラリとみたハピネスの顔が真っ青になった。


「ダメ……ダメダメダメ!!」


 なんでか知らないが助かった……。


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