第4話 濡れたキヌ①
「あのっ、…大丈夫ですか!?」
肩をユサユサとゆすられる感覚に、ゆっくりと目を開けたセイヤ。ぼやっとする視界。ここが、どこかの部屋だということはなんとなく分かったが、頭にモヤがかかったようでハッキリしない。
「…冷たっ…」
数秒経過すると、頬がフローリングの冷たさでヒンヤリとすることに気が付いた。
「ここは…どこだ… ?」
フローリングにうつ伏せに寝転んでいたセイヤは、慌てて起き上がると、目の前には心配そうな顔でセイヤを見つめる女性がいた。
顔のパーツ1つ1つがハッキリとしており、世間一般的に言われる美人な枠に入るだろう女性で、見たことない知らない顔だった。
女性はセイヤが意識がハッキリしてきたのを感じ取ったのだろうか、髪を耳にかけながら、ゆっくりと話しかけてくる。
「あの…、もしかして、あなたはプロファーン様ですか…?」
「えっ…は…なぜその名前を知っているのですか…?」
「なぜって…!プロファーン様に願いの手紙を出した後、黒い服を着た者が突然目の前に現れた場合、それは、汝すなわち」
女性は口元に笑みを浮かべ、急に立ち上がる。
「プロファーン様が、願いを叶えて下さった証拠!」
目を爛々と輝かせた女性は、両手を天井に向けて伸ばした。
やや興奮状態の女性は腕を下ろすと、座っているセイヤに手を伸ばす。
「でしょう!?」
「…あの…喜ばれているところ、大変言いにくいのですが、僕はプロファーン様ではありません」
「え…?じゃあ、あなたは一体誰なの…?」
「…そうですね、プロファーン様から遣わされた者…といったところでしょうか」
「なんだ、それじゃあ、どっちにしても願いは叶ったってことね!良かったあ。あっ、私は三島紗子こと申します!よろしくお願いいたします」
「僕の名前はセイヤと申します。こちらこそ、よろしくお願いいたします。……あの、それで…すみませんが、…どういった内容の願いだったのでしょうか…?」
「は…い…?内容を確認したから、ここに来たんじゃないんですか?!」
「プロファーン様は確認されていましたが、あいにく僕は何も見ることなく、ここに飛ばされてしまいまして…」
「はぁ……」
三島紗子はイラっとした顔を一瞬見せたが、すぐに立ち上がりセイヤに背を向けると、キッチンへ行き何やら飲み物の用意を始めた。
ここはどうやら、女性の家のようだ。
「どうぞ」
出されたものは香りから察するに紅茶のようで、セイヤがそれを口にすると三島紗子が依頼内容を話し始めた。
要約するとこうだった。三島紗子は、夫と紗子そして娘の3人家族だが、2件隣の家に住んでいる4人家族の家の妻と三島の夫が、最近何やら2人で話していることが多く仲良いそうだ。おそらく2人は不倫関係で、三島紗子は夫の不倫に怒り心頭で、相手の妻に制裁を加えて欲しいというものだった。
「内容は把握いたしました。ではそのように…」
(…で、いいんだよな…?)
プロファーンから対応の仕方を何も聞いていなかったセイヤは、とりあえず引き受ける旨を返答する。
すると、セイヤの首にかかったネックレスのユニコーンが光り、その光が三島紗子の胸に飛び込んでいく。
「あぁあ…!すごい…!私、プロファーン様に認めて貰えたのね——!」
三島紗子は恍惚の表情で胸に手を置き、その後宙を見つめる。
(な…なんだったんだ!?今の光は…!?)
訳がわからないセイヤは1人困惑していると、ドアの方からカチャという音が聞こえた。




