第3話 プロファーンの仕事
セイヤは与えられた自室で、黒い服に着替えていた。
部屋はサンタクロース邸のときの部屋の2、3倍は広くベッドにクローゼットに、生活するうえでの最低限、いやそれ以上のものが部屋に完備されていた。部屋だけでいうならば、不満などは全くなく、むしろ満足で快適にさえ思えた。
また、家具の1つ1つがアンティーク調で、こだわって選び抜かれたもののようだった。
セイヤは着替え終えたあと、先ほどのプロファーンのいる部屋へと向かった。
するとそこには、最初に会ったときと変わらず、暖炉の前で椅子に座り、頬杖をつきながら火をじっと見つめるプロファーンがいた。
「あの…言われた通り着替えてきました」
「そう」
プロファーンは、セイヤを見ることなく、まるで興味がなさそうに呟く。
「…あの…僕はここで何をすればいいのでしょうか」
「やることは、サンタクロースの所と同じよ。届いた手紙を読んで、願いを叶えてあげるだけ」
「同じ…ですか…ですが、先ほどプロファーン様は、サンタクロース様からの預かりの手紙を…」
セイヤは、プロファーンが手紙を暖炉に放り投げた姿を思い出す。手紙は宝だ、とサンタクロースから教育を受けてきたセイヤは、胸の中がモヤっとする。
そんなセイヤを、大きな猫のような瞳でじっと見つめたプロファーンは、椅子の足元に置いてある箱の中から3通の手紙を取り出す。
「これを読んでみなさい」
セイヤはプロファーンの元へと行くと、その白く細い指から手紙をゆっくりと抜き取る。
「1通目は…彼氏の浮気に悩んでいます。どうにかして、彼氏に制裁を与えられないでしょうか…。2通目は…夫との喧嘩に辟易しております。夫と離婚したいので、どうか私にお力添えください…。3通目は…親友に裏切られたので、親友を…殺してください…!?な、なんですか、この手紙らは——!?」
「これが、いつも私のところに届く手紙よ。私のところには、大人の願いごとの手紙が届くのよ」
「それじゃあ、さっき暖炉に入れた手紙も…」
「隣人トラブルで困っているから、隣人を病気にして欲しいといった内容の手紙だったわね」
「めちゃくちゃだ…こんな…願う内容が酷すぎる…これは本当に、人間が書いている手紙なんですか?!」
「これは現実よ。サンタクロースの所で、純粋な子ども達からの手紙を処理していたあなたには、信じられないでしょうね。でもそんな純粋な子どもたちの裏で、大人はこういった手紙を私に送ってくるのも現実。貸してちょうだい、その渡した手紙らを」
セイヤは3通の手紙をプロファーンに返すと、プロファーンは手紙を暖炉に放り投げる。すると、暖炉の火がボウッという音と共に一段と赤々と燃え火力を増し、その後またすぐに元の火力に戻った。
「残念ながら、私は届く手紙の全部を叶えることはできない。だから、叶えられない手紙はこうやって暖炉にくべるのよ」
プロファーンはまた箱に手を入れ手紙を取り出すと、表情を一切変えずに目だけを動かし読んでいく。
「あなた、これ行ってきてちょうだい」
「は…行ってきて…とは…?」
状況が掴めずにポカンとするセイヤに、プロファーンは指でつまんだ何かを差し出す。
「これを首から下げて」
渡されたのは、ユニコーンのチャームがついたネックレスだった。
「分かりました。これでいいですか?」
「じゃぁ、いってらっしゃい」
「は…いってらっしゃいって、何が…ああっーうわああーーっ!!!」
急に目の前の景色が回転し出し、椅子に座るプロファーンが微かに手を振っているのが見えた…と思ったら、あっという間に視界はグルグルと激しく捻れるように回り始め、セイヤはすぐに意識を失った。




